マイ・ブラザー

人気と実力を誇るハリウッドの若手3人が共演
心に深い闇を抱えた男を、家族はどう受け止めるのか
厳しくもぬくもりのある、真摯なヒューマンドラマ

  • 2010/05/21
  • イベント
  • シネマ
マイ・ブラザー© 2009 Brothers Production, LLC. All Rights Reserved.

ハリウッドの人気若手俳優の共演で、スサンネ・ビア監督による2004年のデンマーク映画『ある愛の風景』をリメイク。出演は『スパイダーマン』シリーズのトビー・マグワイア、『ブロークバック・マウンテン』のジェイク・ギレンホール、近年のスター・ウォーズシリーズなどで活躍するナタリー・ポートマンほか。監督は1989年に初の長編映画『マイ・レフトフット』がアカデミー賞にノミネートされ、’93年の『父の祈りを』、’97年の『ボクサー』、’02年の『イン・アメリカ/三つの小さな願いごと』など魅力的な佳作を発表し続けているアイルランド出身のジム・シェリダン。アフガニスタンへの派兵を経て、別人のように変わってしまった軍人サムと、彼を支えようとする弟トミー、サムの妻グレースとの関係を描く。人の心の危うさや確かなこと、現実を生きるために支えとなる家族の絆を描く、真摯なヒューマンドラマである。

トビー・マグワイア、ジェイク・ギレンホール

温厚で優秀な軍人のサムは、美しい妻グレースと2人のかわいい娘と幸福な家庭生活を送っている。両親にとっても自慢の息子であるサムには、定職に就かずに問題を起こしてばかりの弟トミーがおり、弟は家族から疎まれているが、兄弟は仲がいい。その弟トミーが刑務所から出所して少したった時、サムはアフガニスタンに派遣。そして後日、グレースのもとへ夫の訃報が届く。トミーは自分も大きなショックを受けながらも、絶望するグレースと家族たちを不器用ながらも支えようとし、自らが更正。家族が新しい生活に慣れ始めた頃、苛酷な経験をくぐり抜けたサムが奇跡的に生還する。

ナタリー・ポートマン

暗く重いトーンだが、ぬくもりのある作品。正解のない不確かな現実を生きる上で、起きてしまった出来事を乗り越えていくための家族の覚悟が静かに綴られている。明確な回答や解決策、大げさな感動を描くのではなく、サムの心の闇に思いやりをもって接するトミーとグレース、深く惹かれ合うことを避けようとする2人の姿がせつない。

優等生の軍人から被害妄想の廃人のように変わってしまうサム役は、マグワイアが渾身の演技で表現。帰還後の役作りでは体重を9キロ減量し、痩せこけて追い詰められてゆく姿が真に迫る。優秀な兄に引け目を感じながらも慕い、帰還後に変わってしまった兄を支えようとする弟トミー役は、ギレンホールがデリケートに演じている。またギレンホールはマグワイアの演技を絶賛し、「今回、僕が最も衝撃を受けたのは、トビーの演技だよ! まさに劇的なトランスフォームだった。俳優仲間としてだけではなく、人として尊敬する。感銘を受けたよ」と熱くコメントしている。サムの妻グレース役は、自ら監督に申し出てこの役を獲得したというポートマン。思いがけない状況に戸惑いながらも、前向きに生きようとする現代的な女性を丁寧に表している。実はマグワイアとギレンホールとポートマンの3人は昔から付き合いがあるそうで、ポートマンは「今回は3人でリハーサルもやったのよ。お互いの家に行って映画について話したり、演じてみたり。だから私たちは、初日からとても馴染んだ雰囲気で撮影に臨むことができたの」と語り、もともと“マグワイアと似ている”と言われていたというギレンホールは、「今回のキャスティングはパーフェクト。僕とトビーの間には下地が存在していたんだ。だから誰よりも深い意味のある“兄弟”を演じきることができたと思う」と語っている。物語では3人の特別な関係、思い合うからこその衝突や身内としての絆がよく伝わってくる。また兄弟の父親役はサム・シェパード、サムの軍人仲間の妻キャシー役は『17歳の肖像』のキャリー・マリガンが演じ、脇もしっかり固められている。

ジェイク・ギレンホール、ナタリー・ポートマン

「結果的に、スサンネ・ビアのオリジナル作品が男女の恋愛を描いてロマンティックに仕上がっていることに対し、私の方は家族の絆についての物語になった」と語るシェリダン監督。今回はリメイクでありながら、「新たなオリジナル作品を作る気持ちで」脚本を書き直すことから始めたとのこと。また“戦争映画”と言われることについては、「戦争が正しいことであれ間違ったことであれ、僕が本作に求めたのは、実際に戦地に行って傷ついている人や家族がいるという事実を見つめ、観客が彼らに対して共感し、同情を感じてもらうことだ。この物語は家族の話であり愛の話だから、究極のところ、“戦争”を別のものに置き換えてもらってもかまわない。家族が何かしらとても困難な状況に置かれた時、人間は愛をもってどう立ち向かっていくのか。僕は、そういうドラマを描きたかったんだ」と説明している。ひとりの人間が難局に立たされた時、その弟は、妻は、両親は、娘たちはー―? ある家族の物語に、あなたは何を思うだろうか。

作品データ

マイ・ブラザー
公開 2010年6月4日公開
TOHOシネマズみゆき座ほか全国ロードショー
制作年/制作国 2009年 アメリカ
上映時間 1:45
配給 ギャガ
監督 ジム・シェリダン
原案 スサンネ・ビア
アナス・トーマス・イェンセン
脚本 デヴィッド・ベニオフ
出演 トビー・マグワイア
ジェイク・ギレンホール
ナタリー・ポートマン
サム・シェパード
キャリー・マリガン
:あつた美希
ライター:あつた美希/Miki Atsuta フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。
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