ジュード・ロウ×フォレスト・ウィテカー
非情な医療ビジネスで暗躍する人工臓器回収人とは?
近未来を舞台にしたアクション・サスペンス
人気のイギリス人俳優ジュード・ロウと、2006年の映画『ラストキング・オブ・スコットランド』で第79回アカデミー賞の主演男優賞を受賞したフォレスト・ウィテカーが、近未来を舞台にしたアクション・サスペンスで共演。原作は’03年のリドリー・スコット監督作品『マッチスティック・メン』の原作者であるアメリカの若手作家エリック・ガルシア、監督はミュージックビデオの監督として活躍し、今回初めて長編映画を手がける新鋭ミゲル・サポチニク。医療が発達した近未来にて、人工臓器をめぐり利潤最優先の企業と利用する権利を主張する人々の対立を描く。建物やマシンなど近未来のヴィジュアルや、肉体同士が激しくぶつかり合うバトルで引き付ける、ハリウッドらしいSFアクションである。
今から20年後、北米の都市。医療ビジネスの企業、ユニオン社の高性能な人工臓器が普及し、人々は長寿を満喫できるように。しかしその裏には高額ローンの支払いがあり、ユニオン社の人工臓器回収人(レポゼッション・メン)が暗躍。ローン未納者が支払い期限を守らなかった場合、生きた体を切り裂いて人工臓器を回収する、という冷酷な取り立てが合法で行われていた。腕利きのレポメンとして親友のジェイクとともに勤務しているレミーは、幼い息子との穏やかな生活を望む妻から事務職へ異動するように繰り返し言われ続け、迷いながらもレポメン引退を決意。レミーは最後の仕事として現場へ向かうが作業中に事故に遭い、自らが人工心臓を埋め込まれることになる。
スタイリッシュな映像やアクション、凝ったディテールで見せるエンタテインメント作品。個人的にわりと期待していたこともあり、読めてしまう展開や心理描写の浅薄さは少し気になる。モラルハザードをはじめ、友情や恋愛、家族との絆などを描いているものの、気分の晴れる明るい物語では決してないので、ちょっとした頭の体操や気分転換くらいの感覚で観に行くといいだろう。
レミー役のロウは『シャーロック・ホームズ』に続いてアクションを披露。今回はよりハードな鍛錬を積んだそうで、ロウは撮影に入る前の約1ヶ月間、トレーナーの指導のもとでフィリピン・スタイルの格闘技からナイフ・ファイト、空手、キックボクシングの混合技などに挑戦。出演者たちはそれぞれの役にあわせて格闘技コーディネーターとともに独自の格闘スタイルを身につけたとのこと。アクロバティックな動きのあるバトルシーンでも健闘している。レミーの親友ジェイク役はハリウッドで監督やプロデューサーとしても活動しているウィテカーが人間臭く演じ、ユニオン社のマネージャー、フランク役は’05年の舞台『Glengarry Glen Ross』でトニー賞を受賞したリーヴ・シュレイバーが人当たりよく裏の顔をもつやり手ビジネスマンをサラリと演じ、ワケありのクラブ歌手ベス役はブラジル出身のアリシー・ブラガがタフに演じている。
そもそもこの映画の始まりは、原作者のエリック・ガルシアが思いつきから原稿を書き上げ、仲間の脚本家ガレット・ラーナーに見せたことを機に製作スタッフに認められ、製作サイドから指名されたサポチニク監督もガルシアとラーナーとともに脚本を練り上げ、完成に至ったとのこと。順番としてはまず映画の原案が作られ、映画化と同時進行でガルシアは脚本を執筆しながら、長編小説『REPO MEN』も執筆して発表している。作家としてのガルシアは1999年に発表した小説『さらば、愛しき鉤爪』がTV映画『REX/レックス』となり、小説も『鉤爪プレイバック』『鉤爪の収穫』とシリーズ化。そして’03年の映画『マッチスティック・メン』の原作を手がけ、本作で本格的に映画界に進出。現在は、’11年に全米公開予定のミステリー映画『Strange But True』の脚本を執筆しているそうだ。
本作の監督サポチニクは、映画界でストーリーボードの仕事をした後、ザ・シャーラタンズやザ・ブラン・ニュー・ヘヴィーズなどイギリスのミュージシャンたちのビデオ制作で活躍。’00年に製作した短編映画『The Dreamer』がパームスプリング映画祭で受賞して注目され、本作で長編映画の監督としてデビューしたそう。ロウやウィテカーと会う前まで、サポチニク監督は一流の俳優と仕事できることをとても意識していたそうで、「行儀よく、馬鹿な質問をしないようにと自分に言い聞かせていたよ(笑)」とのこと。実際にロウとウィテカーとの初めてのミーティングでは男同士のフランクな雰囲気のなか、格闘場面を実演しながら楽しく話ができたそうだ。そしてサポチニク監督の次回作は、クレイグ・クレヴェンジャーの小説『The Contortionist’s Handbook(邦題:曲芸師のハンドブック)』の映画化とのこと。ミュージックビデオのような歯切れのいいヴィジュアルは魅力なので、より物語性に深みや説得力をもたせる演出に期待したい。
派手なアクションやブラックジョーク、近未来ワールドのヴィジュアルなどが見どころの本作。ロウやウィテカーら有名俳優が出演するハリウッドのアクション・サスペンスということだけでなく、注目の原作者による脚本、新進の監督による初の長編ということもふまえて観ると、面白いだろう。
公開 | 2010年7月2日公開 TOHOシネマズ みゆき座ほか 全国ロードショー |
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制作年/制作国 | 2009年 アメリカ |
上映時間 | 1:51 |
配給 | 東宝東和 |
監督・製作総指揮 | ミゲル・サポチニク |
原作・脚本 | エリック・ガルシア |
脚本 | ガレット・ラーナー |
出演 | ジュード・ロウ フォレスト・ウィテカー リーヴ・シュレイバー アリシー・ブラガ カリス・ファン・ハウテン |
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