エアベンダー

12歳の武術家が主役に抜擢され、俳優デビュー!
M・ナイト・シャマランが本格アクションと
長編ファンタジーを描く一大スペクタクル

  • 2010/07/16
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  • シネマ
エアベンダー© 2010 by PARAMOUNT PICTURES. All Rights Reserved.

『シックス・センス』のM・ナイト・シャマラン監督によるアクション・ファンタジー。出演は撮影当時12歳にして全米テコンドー協会(ATA)のブラックベルト(黒帯)第一級保持者であり、本作が俳優デビューとなるノア・リンガー、俳優になる前はプロのホッケー選手も考えていたという新人女優のニコラ・ペルツ、『スラムドッグ$ミリオネア』で注目されたインド系イギリス人のデヴ・パテル、『トワイライト/初恋』シリーズの美形俳優ジャクソン・ラスボーンなど注目の若手が多数。強大な力を秘めた少年が仲間とともに、戦乱の世を平和に導くべく旅をする冒険ストーリー。大掛かりな美術や装置、最新技術を駆使し、3Dと2Dの両方で上映されるハリウッドのアクション・スペクタクルである。

有史以前、世界は氣・水・土・火の4つの王国によって調和が保たれていた。が、あるときに火の国が反乱を起こし、各国のエレメントを操ることのできる特殊能力者“ベンダー”たちを隔離。圧倒的な兵器と武力で氣の国を全滅させ、水の国の一部と土の国を支配。戦乱の世で、4つすべてのエレメントを操ることのできる最大の能力者“アバター”の少年アンが100年の眠りから目覚める。

エアベンダー

インダストリアル・ライト&マジック(I.L.M.)の最新技術による3D映像が楽しめる、わかりやすいアクション大作。原作はアメリカの子供向けチャンネル、ニコロデオンで’05年から放送が始まった人気アニメ番組『Avatar: The Last Airbender(邦題:アバター 伝説の少年アン)』。原案を手がけたマイケル・ダンテ・ディマーティノとブライアン・コニーツコは、シリーズ・クリエイターと製作総指揮として本作のスタッフリストに表記されている。この映画が子供向けアニメの実写映画化であることはアメリカでは周知のことだが、日本の資料では明記を避けているようだ。ファミリー向けに限定されず、シャラマン監督の名前で大人の映画ファンを呼び込みたい、という意図が感じられる。

4つのエレメントを操る力を秘めた“アバター”のアン役はリンガーが好演。もともとトレーニング時の暑さ対策のために頭を剃っていたリンガーは、原作アニメのヒーローに似ていると周囲から言われていたとのこと。リンガーはテコンドーのインストラクターに薦められ、自身のパフォーマンスをまとめたDVDを送付して本作のオーディションに応募。武術のスキルや、12歳にして自制心のある“禅”の精神性をスタッフに見いだされ、アン役に抜擢されたのだそう。全米テコンドー協会の年齢別グループでテキサス州のチャンピオンとして4部門のエアベンダーを保持しているリンガーは、本作でも美しい型やキレのある動きを存分に披露している。火の国から追放され、父に愛憎を抱いているズーコ王子役はパテルが演じ、実はテコンドーの黒帯保持者で2004年のテコンドー世界大会で銅メダルを獲得した、という意外とたくましい一面を見せてくれる。水のベンダー、カタラ役はペルツが溌剌と演じ、ベンダーでなくとも戦士として戦うカタラの兄サカ役はラスボーンが演じ、イケメンらしく劇中のロマンス面も担っている。またアンをのせて空を飛ぶアッパ、アンになついているキツネザル・コウモリのモモなど、シャラマン監督が影響を受けたという宮崎 駿監督のアニメーションを彷彿とさせるクリーチャーがかわいらしい。

借りぐらしのアリエッティ

シャラマン監督はもともとマーシャルアーツが大好きで、「オフィスにブルース・リーのフィギュアを飾って、『燃えよドラゴン』を何十回も観ている1人です」とのこと。映画ではオリジナルのアニメに準じてアクションのスタイルを作り上げ、エアベンダーは八卦掌、ウォーターベンダーは太極拳、アースベンダーは洪家拳、ファイヤーベンダーは北部少林寺拳法をベースに構成。アンが行く先々で展開する派手なファイト・シークエンスは見どころのひとつだ。またカタラとサカの故郷である南の水の国をはじめ、撮影の一部はグリーンランドでロケが行われ、氷に閉ざされた厳しい自然環境をリアルに描写。本物の自然がもつ迫力がさりげなく映し出されていることも、映画の魅力となっている。

エアベンダー

1999年の『シックス・センス』で大ブレイクを果たしたシャラマン監督は、’00年の『アンブレイカブル』、’02年の『サイン』でそれなりの成功を収めたものの、その後は低迷。毎年“最低”映画を表彰するゴールデンラズベリー賞で’06年の『レディ・イン・ザ・ウォーター』が最悪助演男優賞と最悪監督賞を受賞し、’08年の『ハプニング』で最悪監督賞と最悪脚本賞にノミネート。’10年に第30回を記念して発表されたこれまでのラジー賞ノミネートランキングでは、シャラマン監督が11位という微妙な順位にランクインしたことも記憶に新しい。そういう背景からか、今回は原案ありき、それも人気アニメでファミリー層の獲得は確実、というかなりの堅実路線。シャラマン監督は語る。「『エアベンダー』は楽しくてアクション満載の夏の娯楽大作を目指したものですが、根底にはひとつの人種による支配や、世界の均衡やつながりといった真面目な主題があり、私がこれまでの映画で扱ってきた関心事も含まれています」。予定では全3部作となるそうで、このシリーズがシャラマン監督の巻き返しのきっかけとなるかどうか。また監督の次回作として、ブルース・ウィリス、グウィネス・パルトロウ、ブラッドリー・クーパーを起用して『アンブレイカブル』の続編を製作、という噂も。いずれにしても、シャラマン監督の今後はちょっと気になるところだ。

作品データ

エアベンダー
公開 2010年7月17日公開
丸の内ルーブルほかにて全国ロードショー
制作年/制作国 2010年 アメリカ
上映時間 1:43
配給 パラマウント ピクチャーズ ジャパン
脚本・製作・監督 M・ナイト・シャマラン
視覚効果とアニメーション インダストリアル・ライト&マジック(I.L.M.)
出演 ノア・リンガー
デヴ・パテル
ニコラ・ペルツ
ジャクソン・ラスボーン
ショーン・トーブ
アーシフ・マンドヴィ
クリフ・カーティス
:あつた美希
ライター:あつた美希/Miki Atsuta フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。
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