のぼうの城 試写会日記 毎週、熱田美希から映画ファンの皆さんへ熱いメッセージ!傑作でも愚作でも、映画ってやっぱり素敵!!
のぼうの城

© 2011『のぼうの城』フィルムパートナーズ

累計165万部を突破した和田竜のベストセラーを映画化
迫力のスペクタクルで惹きつけ、家族の絆や同胞愛を伝える
戦国時代の末期に実際にあった籠城戦をもとに描く一大活劇

 地方の城を守る500人の軍勢が、豊臣方の放つ2万の精鋭軍に宣戦布告! 新人作家の処女作でありながら、2008年の第139回直木賞にノミネートされ、’09年の本屋大賞にて2位を受賞。累計165万部を突破した和田竜のベストセラーを映画化。出演は傑出した狂言師であり『陰陽師』以来9年ぶりの映画主演となる野村萬斎をはじめ、榮倉奈々、佐藤浩市、成宮寛貴、山口智充、上地雄輔、山田孝之、平岳大、市村正親、鈴木保奈美、西村雅彦、平泉成、芦田愛菜ほか豪華な顔合わせが実現。監督は邦画では異例の“ダブル監督”で、『ゼロの焦点』の犬童一心と、『日本沈没』の樋口真嗣がタッグを組む。脚本はそもそも本作のオリジナル脚本で’03年に城戸賞を受賞した和田竜が手がける。大がかりな戦乱のスペクタクルで惹きつけ、家族の絆や友情、同胞愛などを丁寧に映す。戦国時代の末期に実際にあった、知られざる籠城戦をもとに描く一大活劇である。

 天正18年(1590年)、天下統一まで東国を残すのみとなった豊臣秀吉は、小田原攻めによって北条方への侵攻を開始。北条氏の支城のひとつとして、周囲を湖で囲まれ“浮き城”の異名をもち、関東七名城のひとつである忍城(おしじょう)も標的となり、秀吉の信頼する家臣・石田三成が2万の軍勢を率いて進軍。忍城の城主・成田氏長は「秀吉軍とは一戦も交えずに速やかに開城せよ」と明言し、城代を従弟の長親に任せて急きょ小田原へ。長親は武将に求められる智も仁も勇もないが、領民からも“のぼう様”(「でくのぼう」の意)と慕われ、身分を問わず誰からも愛される不思議な男だ。豊臣の軍勢を前に成田方は「開城やむなし」と一度は決意するも、天下軍を笠に着て横柄な態度を取る武将・長束正家と対面した長親は、無謀にも宣戦を布告。が、激しい水攻めで追い込まれ、成田軍500名に同意する領民たちも忍城に集まり3000名が籠城。長親はある奇策を決行する。

 手勢が格段に少なかろうが自身が経験の乏しい若輩の侍で敵が精鋭軍であろうが、尊大な態度で見下され、誇りを踏みにじられたならば断固として「戦いまする」。湿地帯を舞台に繰り広げられる“泥沼の”戦いながら、誇り高く強大な敵に挑む長親らの果敢な姿は、観ていてとても胸がすく。

山口智充、成宮寛貴、野村萬斎、佐藤浩市

 脚本家の登竜門として知られる城戸賞を’03年に受賞した和田氏のオリジナル脚本『忍ぶの城』が7年かけて映画化され、’12年に遂に公開へ。そもそも’04年に久保田修プロデューサーが映画化を申し出て、和田氏が快諾し、犬童監督が依頼を受けて樋口監督も参画することに。が、大がかりな仕掛けやVFXなど製作費がかさむうえに、内容が良くとも無名の新人脚本家の作品に社内外の支持や資本が集まりにくかったようで、この時点での製作委員会の組成に行き詰まったそう。ならば、と映画化の前に脚本の小説化を和田氏にもちかけ、タイトルを『のぼうの城』に変更して和田氏の執筆による処女小説として’07年に発表。’08年に直木賞にノミネートされ、’09年に「ベストセラーの映画化」として映画製作が正式に決定。’11年秋に完成したものの劇中に大規模な水攻めのシーンがあることから、東日本大震災による被害に配意して公開を延期し、’12年11月の公開に、と製作と公開に至るまでの紆余曲折があったそうだ。本作の魅力について犬童監督は「僕がシナリオを最初に読んだときから惹かれているのは、のぼう様は“正直”だということ。自分をよく見せるためとか、人の心をつかむためにうそをつかない。そういう人がリーダーになっていくというのが魅力的な話だなと思います」とコメント。映画の見どころについて和田氏は、「合戦中、本丸にいる主人公の成田長親のもとに、戦況を伝える家臣たちが次々に飛び込んでくるシーンがあります。このシーンはもともとの脚本にも、小説にもありません。『合戦中の長親を見せたい』という意見を容れ加えたものですが、予想をはるかに超すチャーミングなシーンに仕上げてもらいました。観客の皆さんと一緒に観たいシーンの一つです」と語っている。

 のぼう様こと成田長親役は野村萬斎が好演。つかみどころのないトボけた様子から、いざというときに真剣な表情がスッと一瞬あらわれるなど、芝居の緩急が小気味いい。長親のあえての滑稽さも自然な威厳も人望も、野村の表現力と人間力が相まってとても説得力がある。長親に想いを寄せる城主の娘・甲斐姫役に時代劇は初となる榮倉奈々、長親の幼馴染で歴戦の強者・丹波役に佐藤浩市、丹波をライバル視する豪傑の和泉役に山口智充、戦は未経験ながら“軍略の天才”を自称する靭負役に成宮寛貴、忍城の城主・成田氏長役に西村雅彦、甲斐姫の継母・球役に映画出演は12年ぶりとなる鈴木保奈美、そして豊臣軍を率いる知将・石田三成役に上地雄輔、三成の盟友・大谷吉継役に山田孝之、石田軍の傲慢な武将・長束正家役に平岳大、豊臣秀吉役に市村正親、そして平泉成、芦田愛菜、夏八木勲、中原丈雄、前田吟、尾野真千子ほか充実のメンバーが脇を支えている。

野村萬斎、榮倉奈々

 スペクタクルの見どころとしては、北海道の苫小牧に製作された東京ドーム約20個分の巨大オープンセットで、総計3000トンの水が使用されたという水攻めのシーン。ただ個人的に何よりも感動したのは、湖上に浮かぶ不安定な小舟で長親が1曲まるまる歌い踊るシーンだ。両監督からの依頼をうけた野村萬斎は、劇中のすべての踊りの振り付けを快諾。脚本の「豊作を祈願するその踊りはとても卑猥である」というたった一行から、見事な田楽踊りを創作。歌詞を周囲と一緒に作成し、唄のレコーディング、振り付け、エキストラへの振り付け指導まで行ったとのこと。“下ネタ満載の唄”という面白さにとどまらない、確立された所作と唄と舞による豊かな身体表現、人気スターのコンサートさながらに周囲を熱狂に巻き込んでゆくさまに、狂言師・野村萬斎の才気を大画面でたっぷりと堪能できる。

 深みとぬくもりのある人間ドラマの犬童監督、スペクタクルや漢気の樋口監督、曰く「演出も当社比2倍のツインターボ効果(樋口監督)」という本作。2人で監督をすることになった経緯について、犬童監督は「樋口さんに共同監督をお願いしたのは、アクションシーンなどビジュアル的に作り込んでいくのが大変な部分が多数あったことと、そのほかにも助けていただきたいことがたくさんあったから。樋口さんがむかし特撮監督をされた『ガメラ 大怪獣空中決戦』の特撮シーンがあまりにもすばらしくて、ある講演の対談相手としてきてもらったことが始まりです。それ以来、一緒に面白いことをやりたいと思っていたので、やっと念願が叶いました」と語り、樋口監督は「犬童さんの作品に参加できるのはそれだけでとても光栄なことです。海外には兄弟で監督をやっている人はけっこういますよね。僕たちもそんな感じかな。あとはテニスのダブルスのような感覚もありましたね」と語っている。エンディングにゆったりと流れるエレファントカシマシの新曲「ズレてる方がいい」(シングルが10月31日発売)も気持ちよく、余韻には“やりきった感”をたたえる。最後に野村萬斎のメッセージをどうぞ。「“乗り越える力”を信じられる作品、だと思います。忍城方の人々は、みんな決してあきらめることなく希望に満ちており、明るいです。迫力の合戦シーンはもちろん、親子愛、友情、ロマンス、様々な要素がぎっしりと詰まっており、人の死や生きるということも描かれています。本当に盛りだくさんで、老若男女みなが楽しめる、3世代で手をつないで観に来ていただきたい作品です。“日本には今、リーダーがいない”と言われる中、“ズレてる”やつがリーダーとなって立ち上がり、困難に立ち向かうこの映画から、何か希望を見いだせるのではないかと思います」。

『のぼうの城』
2012年 日本映画
データ
2012年9月28日更新
上地雄輔、山田孝之
オフィシャルサイト
『のぼうの城』

2012年11月2日公開
TOHOシネマズ 六本木ヒルズほかにて全国超拡大ロードショー

■2012年 日本映画
■上映時間2:25
■東宝、アスミック・エース配給
■監督/犬童一心
樋口真嗣
■原作・脚本/和田竜
■音楽/上野耕路
■出演/野村萬斎
榮倉奈々
成宮寛貴
山口智充
上地雄輔
山田孝之
平岳大
西村雅彦
平泉成
夏八木勲
中原丈雄
鈴木保奈美
前田吟
中尾明慶
尾野真千子
芦田愛菜
市村正親
佐藤浩市



プロフィール
 
あつた美希 あつた美希
あつた美希
フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。