ウォリスとエドワード 英国王冠をかけた恋 試写会日記 毎週、熱田美希から映画ファンの皆さんへ熱いメッセージ!傑作でも愚作でも、映画ってやっぱり素敵!!
ウォリスとエドワード 英国王冠をかけた恋

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“王冠を賭けた恋”に魅せられたマドンナが
長年の構想から脚本執筆に2年をかけて映画化
美しいドレスやジュエリーなどビジュアルが目を引く

 イギリス国王の座を退位して人妻との結婚を選んだ、“王冠を賭けた恋”として知られるウォリス&エドワードの実話をもとに、マドンナが監督・脚本を手がけて映画化。出演は『エリザベス:ゴールデン・エイジ』のアビー・コーニッシュ、『わたしを離さないで』のアンドレア・ライズブロー、テレビや映画で活躍するイギリス人俳優ジェームズ・ダーシー、『ロビン・フッド』のオスカー・アイザックほか。監督・脚本はウィンザー公爵夫妻にずっと魅了されてきたというマドンナが長年の構想を経て、脚本執筆に2年をかけて完成。結婚生活や人生に悩む現代の女性ウォリーの視点から、世紀の恋を生きたウォリスの人生を映す。1930年代当時をイメージしてアール・デコ様式を強調した美術セットや、当時のデザインを複製したドレスやジュエリーなど、作り込んだビジュアルが目を引く作品である。

 1998年のニューヨーク、マンハッタン。富と名声をもつ一流分析医の夫と裕福に暮らすウォリーは、子供ができないことを悩んでいた。ウォリーは不妊治療を望むも、夫は取りあわず、仕事を理由に家を空けてばかりいる。やり場のない気持ちをかかえたウォリーはある日、ウィンザー公爵夫妻の遺品がオークションにかけられることを知り、サザビーズの主催するオークションのプレビュー会場へ。展示品をながめるうちに、ウォリーは王位を辞してまで愛されたアメリカ人女性ウォリスへの憧れが高まってゆく。

 映画『英国王のスピーチ』で国王となったジョージ6世の兄であり、さまざまな女性遍歴で知られるハンサムなイギリスの皇太子エドワードと、離婚歴があり既婚のアメリカ人女性ウォリスとの恋を、現代を生きる女性ウォリーの視点からとらえる。劇中のオークションは実際にサザビーズで’98年に行われた内容をもとに、物語の見どころのひとつに。このオークションには50か国以上の国々から1000人を超えるバイヤーが参加し、売上の合計はサザビーズの予想額700万ドルの3倍を超えたとのこと。ウィンザー公爵夫妻の根強い人気が話題となったそうだ。

ジェームズ・ダーシー 、アンドレア・ライズブロー

 マドンナがダンスミュージックで魅せ続け、54歳にしてアメリカの音楽界の一線で認められていることは周知のとおり。映画への出演もしばしばで、出演し主題歌を担当した2002年の『007/ダイ・アナザー・デイ』ほかゴールデン・ラズベリー賞(最悪の映画や俳優を選ぶ)の常連でもあるものの、’97年の主演映画『エビータ』では同年の第54回ゴールデン・グローブ賞のミュージカル・コメディ部門にて主演女優賞を受賞。『イン・ベッド・ウィズ・マドンナ』『I’m Going to Tell You a Secret(劇場未公開)』『I Am Because We Are(未)』とドキュメンタリー映画3本の製作に携わり、’08年に『ワンダーラスト』で映画監督デビュー。本作のために自ら書き下ろした主題歌「マスターピース」は、’12年の第69回ゴールデン・グローブ賞にて主題歌賞を受賞している。

結婚生活に悩む現代女性ウォリー役はコーニッシュが率直な雰囲気で演じ、夫がいながらイギリス皇太子と恋愛関係となるウォリス役はライズブローが熱演。皇太子エドワード役はダーシーが遊び好きな英国紳士らしく、ウォリーに好意を寄せる警備員エブゲニ役はアイザックが素朴なトーンで、それぞれのキャラクターを演じている。

 劇中では1910〜30年代と現代が交錯する展開や、ウォリーの言動の動機づけがややわかりにくく、ストーリーに入りにくい面も。いちばんの見どころは、’30年代をイメージしたインテリアや調度品の数々、復元された有名なドレスやジュエリーなどの綺麗なビジュアルだ。衣装デザインは映画『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』『ナイト&デイ』を手がけ、マドンナと14年にわたり仕事をしてきたアリアンヌ・フィリップスが担当。ウォリス本人が実際に着ていた一流ブランドのひとつ、ヴィオネが本作のためにドレス4着を複製。ベンゼドリン入りカクテルを飲んでウォリスが派手に踊るシーンで着ている、ビーズをあしらったシフォンのドレス、エドワードと最初に踊るシーンでウォリスが着用している、縫い目がひとつしかない金銀のラメがきらめくドレスなどが美しい。

ジェームズ・ダーシー 、アンドレア・ライズブロー

 またウィンザー公爵夫妻が長年の付き合いだったラグジュアリーなジュエリーブランド、カルティエとヴァン・クリーフ&アーペルの協力により、貴重な宝飾品の数々を複製。とくにカルティエは本作のために、ウォリスが公式にウィンザー公爵夫人となった証のひとつであるエメラルドの婚約指輪、’37年と’50年代に作られたというシャトレーヌブローチ2個、’57年の真珠の2連ネックレスとイヤリング、’47年の珊瑚のリング、’49年の有名なパンサーブローチを複製したとのこと。そして’33年から’44年にかけて、ウィンザー公爵が2人にとって大切な出来事があるたびにクロスのモチーフを夫人に贈り、夫人はそれをブレスレットにつけていった、という9つのクロスが美しいブレスレットも再現され、劇中でウォリスが身につけて、誇らしげに街を歩くシーンなどに登場している。

 映画の内容はウォリスに惹かれるマドンナの視点も強いようで、だいぶウォリスよりに描かれている印象も。“世界一の悪女”というイメージは誤解で、恋にすべてを捧げ、愛こそすべての波乱万丈な生涯を送った女性、という描き方がなされている。マドンナは本作について、「一般に知られているよりもっと多面的にウォリスを描きたいと思った」とコメント。エピソードのとらえ方が事実に近いかどうかというよりも、これもまたひとつの視点、として観るとたのしめるだろう。

 昔から世界的に注目され続けている、イギリスのロイヤル・ファミリー。本作のウォリスとエドワード、兄から突然継いだイギリス国王の役目を立派に果たしたジョージ6世、そしてマーガレット・ローズ王女、ダイアナ妃、チャールズ皇太子とカミラ夫人、ヘンリー王子、ウィリアム王子も結婚前はいろいろ……と。イギリス王室の方々は慈善事業や社会活動のみならず、不倫や離婚などの恋愛問題や奔放な私生活など人間臭いところが満載で、しかもそのマスコミ報道がゆるされているところがとてもユニーク。特別な地位にありながら、市井のわたしたちにどこか親しみを感じさせるところも人気や注目のゆえんだ。現代女性ウォリーの人生ドラマと並行して描かれる、ウォリスとエドワードの物語。マドンナ最新監督作品の評価やいかに。

『ウォリスとエドワード 英国王冠をかけた恋』
2011年 イギリス映画
データ
2012年10月26日更新
オスカー・アイザック 、アビー・コーニッシュ
2012年11月3日公開
新宿バルト9ほかにて
全国ロードショー

■2011年 イギリス映画
■上映時間1:59
■クロックワークス配給
■原題/『W.E.』
■監督・脚本/マドンナ
■脚本/アレック・ケシシアン
■衣装デザイン/アリアンヌ・フィリップス
■出演/アビー・コーニッシュ
アンドレア・ライズブロー
ジェームズ・ダーシー
オスカー・アイザック




プロフィール
 
あつた美希 あつた美希
あつた美希
フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。