奴隷の男が賞金稼ぎとなり、愛する妻の奪還を目指す
死闘の背景に過去のアメリカの差別と迫害を映し、
タランティーノが熱く放つ、激烈マカロニ・ウエスタン!
クエンティン・タランティーノ初の時代劇にして西部劇、そしてラブ・ストーリー! 出演は映画『RAY /レイ』で2004年の第77回アカデミー賞にて主演男優賞を受賞したジェイミー・フォックス、タランティーノの前作『イングロリアス・バスターズ』で2009年の第82回アカデミー賞助演男優賞を獲得し、本作で再び同賞を受賞したクリストフ・ヴァルツ、本格的な悪役は今回が初となるレオナルド・ディカプリオ、タランティーノ作品の常連サミュエル・L・ジャクソン、『ラスト・キング・オブ・スコットランド』のケリー・ワシントンほか。人種差別による奴隷制度が長く当たり前とされていた19世紀のアメリカ南部。奴隷だった男が賞金稼ぎとなり、連れ去られた愛妻を取り戻すべく立ち上がる! 血で血を洗う暴力の応酬、激しい銃撃戦、そしてドラマの背景に過去のアメリカの差別と迫害の事実を臆さずに描く。すでにタランティーノ作品最大のヒットとなっている、過激なマカロニ・ウエスタンである。
1859年のアメリカ南部、雪の降る極寒のテキサス。裸足の奴隷たちを鎖で引き連れる奴隷商人の前に、ドイツ人の歯医者キング・シュルツが現れる。彼は人探しをしていると話し、その顔を知る男ジャンゴを奴隷のなかから見つけだして解放。ジャンゴを連れて西部の町ドートリーへ着くと、シュルツが今は賞金稼ぎを生業とし、高額の賞金首であるブリトル3兄弟を探している、と語る。ジャンゴにとってブリトル3兄弟は妻ブルームヒルダを連れ去った仇であり、シュルツと目的をともにする。ドイツ人の元歯医者と黒人の元奴隷という異色の賞金稼ぎコンビとなった2人は、おたずね者を次々と倒してゆく。そしてジャンゴが腕をみがき賞金を稼ぐようになったころ、ブルームヒルダがミシシッピの大農園キャンディ・ランドの残虐な領主カルビン・キャンディのもとにいることをつきとめ、奪還へと乗り出す。
アメリカ南部が舞台の西部劇。過剰なバイオレンスが特徴であるマカロニ・ウエスタンのスタイルで19世紀の奴隷制度を描くことについて、タランティーノは語る。「当時のアメリカはひどかった。くるっていた。だからこそマカロニ・ウエスタンの題材にピッタリだったんだ。ウエスタン作品は必死に奴隷制度にふれまいとしてきたけど、僕はぜひ取り上げたかった」。劇中で差別用語の“ニガー” が137 回連呼され、アメリカで論議があることについては、「社会派映画を撮ったわけじゃない。マカロニ・ウエスタンを撮りたかったのさ」とカラッと笑ってかわすあたり、いかにもタランティーノらしい。
ジャンゴ役はフォックスが、ただひたすら妻への愛ゆえに戦う男を好演。激烈な殺戮にどこまで身を投じようと、フォックス自身のあたたかな人柄がにじみでているところがジャンゴの個性として生かされている。ジャンゴを導き相棒となるシュルツ役は、ヴァルツが知的で面倒見のいいドイツ人をひょうひょうと表現。差別を好まず、世間体など気にもとめずにアフリカ系であるジャンゴを引き立てて対等に接し、おたずね者には容赦ない、という痛快なキャラクターだ。この役は脚本の段階からタランティーノがヴァルツのためにあて書きをしたそうで、先に発表されたばかりの第85回アカデミー賞にてヴァルツがまたしてもタランティーノ作品で助演男優賞を受賞したことも深くうなずける。大農園の残忍な独裁君主カルビン・キャンディ役はディカプリオがねっとりと。この役はディカプリオ自身が志願し、もっと年配の役者をこの役に想定していたタランティーノは、若き暴君として脚本を書き換えたそうだ。キャンディ家につかえる執事でありカルビンを育てたスティーブン役は、ジャクソンが風貌から作りこみ、どこまでもあざとく陰険に。ジャンゴの妻ブルームヒルダ役はワシントンが健気に演じ、フォックスとは『RAY /レイ』に次ぎ夫婦役で再共演となり、2人の相性の良さが伝わってくる。またマカロニ・ウエスタンの代表作のひとつ1966年のイタリア映画『続・荒野の用心棒』で主人公ジャンゴを演じたフランコ・ネロも登場。この作品の主人公が人気キャラクターとなり、“ジャンゴ”がマカロニ・ウエスタンの代名詞になったというオリジナルにオマージュを捧げている。本作では「What's your name?」とジャンゴに酒場で名をたずねる1シーンをお見逃しなく!
そもそも10年前、タランティーノがジャンゴというキャラクターを思いついたことから始まったという本作。「物語の芽となったのは、『奴隷が賞金稼ぎになり、その後黒人を搾取する奴隷監督たちを追いつめていく』というアイデアだった」とのこと。本作のプロデューサーであり1992年の映画『ブーメラン』ほかの監督でもあるレジナルド・ハドリンは脚本を読んだとき、南北戦争以前の奴隷制度に関するユニークかつ率直な描写に感服したとのこと。「僕らは、自分たちの一番いいところだけでなく、一番悪いところも覚えていなければならない。この物語に登場するのは架空のキャラクターたちだ。でも彼らは、現実の世界で悪に対して面と向かって『ノー』と言った何百、あるいはそれ以上の黒人、白人たちを象徴しているんだ」とコメントしている。
奴隷解放でも白人への復讐でも金目当てでもなく、主人公が愛妻を取り戻すための私的な戦いを描く本作。以前にも『パルプ・フィクション』でアカデミー賞脚本賞を受賞したタランティーノは、今回の賞レース前にこう語っていた。「アカデミー賞はすばらしいよ。ただ、賞のために映画をつくっているわけではないけど。アカデミー賞から評価されるからといって映画が今以上によくなるわけではないし、逆に評価されないからと言って映画が悪くなるわけでもない。むしろタイミングの問題だよね。でもアカデミー賞は楽しくて名誉なことだし、パーティーやイベントに招待されるのはナイスなことだよ! 1年の終わりに映画の成功を祝福するのは楽しい時間だね」。そして今年の第85回アカデミー賞で再び脚本賞を受賞したタランティーノは授賞式で、感謝の意をこのように伝えた。「(オスカー像を見て)カッコイイねぇ…なんてことだろう! 前々から言っている通り、役者たちに感謝している。脚本に対してやってくれたことにとても感謝している。彼らがいたからこそ僕がここに立つことができたんだ。30年後あるいは50年後、僕が作ったキャラクターでこの映画は思い出されると思う。人生に一度きりのチャンスに、的確にキャストを選び、長年記憶される映画を作りたいと思い、まさにそれをやったのです。(客席にいる本作の出演俳優たちに向かって)本当にありがとう。(式典を欠席している)レオ、君にも感謝している。最後に、本当に今年受賞できて光栄です。脚本賞も脚色賞もすばらしい作品がノミネートされていて、本当にライターの1年だったと思います」。映画を熱く愛し、役者やかかわるひと全員に厚く感謝して。Fワード満載のスラングだらけでも血みどろでも、いつも作品全体に満ちている愛情深さの理由がここに。テンション高く熱く激しく放たれる、タランティーノ作品からやっぱり目が離せない!
公開 | 2013年3月1日公開 丸の内ピカデリーほかにて全国ロードショー |
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制作年/制作国 | 2012年 アメリカ |
上映時間 | 2:45 |
配給 | ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント |
原題 | Django Unchained |
監督・脚本 | クエンティン・タランティーノ |
出演 | ジェイミー・フォックス クリストフ・ヴァルツ レオナルド・ディカプリオ サミュエル・L・ジャクソン ケリー・ワシントン ドン・ジョンソン |
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