劇場版 ATARU‐THE FIRST LOVE & THE LAST KILL‐

天才的な能力をもつサヴァン症候群の青年が刑事とともに
東京、ラスベガス、ロサンゼルスをめぐり難事件に迫る
事件の真相と人の心のあやを解く人情派ミステリー

  • 2013/09/13
  • イベント
  • シネマ
劇場版 ATARU‐THE FIRST LOVE & THE LAST KILL‐© 2013劇場版「ATARU」製作委員会

最高視聴率19.9%を記録したTBS系の連続ドラマ『ATARU』(2012年4月〜6月放送)の劇場版が完成。サヴァン症候群の特別な能力を生かして事件の捜査をする、FBIの内部組織SPBの捜査官アタルと、彼の仲間となり友人となった刑事たちの物語。出演はドラマから引き続き中居正広、北村一輝、栗山千明、村上弘明、玉森裕太、そして2013年1月に放送されたスペシャルドラマ(単発)からの出演で本作のキーパーソンとなる堀北真希、本作からの出演として松雪泰子ほか。監督は堤幸彦の作品に助監督などで参加し、ドラマ『ATARU』ではチーフディレクターとして全11話中6話ぶんの演出を担当、映画は本作が初監督となる木村ひさし。ニューヨークと日本で、同じ手口による爆破事件が発生。日本に潜伏する犯人を追い、警視庁とFBIの内部組織SPBが協力して捜査することになる。サスペンス、ヒューマン、ホームドラマ、コメディというさまざまな要素で魅せるドラマのスタイルをそのままに、東京、ラスベガス、ロサンゼルスを舞台にスケールアップ。サヴァン症候群の特別な能力を生かして難事件を解決に導き、本質をつく純粋さで人を癒すアタルと、その仲間たちによる物語である。

ニューヨークでFBIの内部組織SPBの入っているビルが爆破。SPBの責任者であるラリーは、ラスベガスにいた捜査官チョコザイこと猪口 在(いのぐち・あたる)からの電話により危機を免れる。そのころ、日本でも同じ手口による爆破事件が発生し、車椅子の女性管理官・星 秋穂を中心に沢たち捜査一課の面々が捜査を開始。そこへラリーとアタルたちSPBの捜査チームが合流し、警視庁を退職し探偵となった蛯名舞子も捜査に加わることに。容疑者として、コンピューターウイルス“ウィザード”を生み出し自在に操る、もとSPBの女性マドカが浮上するなか、監禁事件が発生する。

北村一輝、栗山千明

「ATARU, Even you can become a criminal(アタル、あなただって犯罪者になれる)」。スペシャルドラマの最後に示されたマドカからのメッセージが、映画としてスケールアップして展開。これまでの流れをくみつつ、映画だけを観ても楽しめる仕上がりとなっている。蛯名家のほのぼのとしたホームドラマ、アタルと舞子と沢の信頼関係、猪口家のその後など、ドラマから続く物語の背景もさりげなく描かれ、舞子の父が車を買って運転を楽しんでいることをはじめ、意味のある小ネタも配されている。

FBI特殊捜査機関SPBの捜査官チョコザイこと猪口 在(いのぐち・あたる)役は、中居正広が淡々と。独自のルールと判断で行動し、周囲を巻き込みながら真実を静かに見つめる目を表現している。少しずつ情緒や感情表現が豊かになってきている、という流れもほほえましい。もと美人刑事で今はさえない探偵である舞子役は、栗山千明があかるく元気よく。素直で猪突猛進、生命力の強そうなキャラクターを生き生きと演じている。舞子のもと上司である捜査一課の沢刑事役は北村一輝がいつものノリで。超ナルシストながら面倒見よく、舞子やアタルのフォローをして回る姿がかいがいしい。もとSPBで幼いころの事故によりサヴァン症候群に似た能力をもつアレッサンドロ・カロリナ・マドカ役は堀北真希が謎めいた雰囲気で。’11年の映画『白夜行』の雪穂役に通じる、賢く無垢な魂の哀しい反転、冷静に突き進む迷いのない純粋さでよくハマっている。剛腕を振るう女性管理官・星役は松雪泰子が演じ、赤をキーカラーにしたコーディネートが目を引く。そしてSPBの責任者的存在でありアタルを保護するラリー井上役は村上弘明がクールに、「〜なのね」が口癖の警視庁の鑑識課・渥見役は田中哲司が独特のテンポで、舞子の弟・昇役をKis-My-Ft2の玉森裕太がさわやかに、父役を利重 剛がおっとりと演じ、捜査一課の面々として嶋田久作、千原せいじ、庄野崎 謙、中村昌也、三好博道、警視庁の照会センター所属の犬飼役に中村靖日、鑑識課としてもとAKB48の光宗 薫、現在AKB48のメンバーである島崎遥香、アタルの家族である父・猪口 誠役に市村正親、母・ゆり子役に原日出子、弟・介(たすく)役に岡田将生と、ドラマからのメンバーが顔をそろえている。

堀北真希

撮影は東京のほか、アメリカのラスベガスとロサンゼルスにて。ルート66のシーンではスタッフの温度計が50℃を超えていたそうで、白いコートを着たアタルと黒いレザーブーツ姿のマドカは灼熱のアスファルトに座って演じていたとのこと。ラスベガスのメインストリートであるストリップ通りを、沢と舞子が1970年代のシボレーの赤いオープンカーで走るシーンでも、役者たちは強烈な直射日光と熱風にさらされていたそうだ。またラスベガスの名所であるベラージオホテルの噴水のほか、映画『キル・ビル』に使用されたことで有名な教会“キルビル・チャーチ”が病院として登場することも注目だ。

栗山千明、北村一輝

捜査官が事件を解決してゆくミステリーであり、複雑な家庭環境にある家族や、気の合う人たちが集う疑似家族を描くホームドラマであり、各キャラクターの個性がたのしいコメディでもある本作。あくまでもエンターテインメントでありながら、理解されにくい立場への差別や偏見に対する、周囲の人たちの信頼や協力、特別扱いするよりも生かしていく、という在り方をさりげなく描く。そして善悪を超えた本質を見つめ、人の心に寄り添うアタルの純粋さが共感をよぶ。おそらく当初の予想をはるかに超えて、堂々たる人気作品として成長したこの物語。これで終わり、ではなく、引き続きシリーズ化が期待できそうだ。

作品データ

劇場版 ATARU‐THE FIRST LOVE & THE LAST KILL‐
公開 2013年9月14日公開
全国東宝系にてロードショー
制作年/制作国 2013年 日本
上映時間 2:00
配給 東宝
監督 木村 ひさし
脚本 櫻井武晴
出演 中居正広
北村一輝
栗山千明
玉森裕太
嶋田久作
田中哲司
千原せいじ
中村靖日
庄野崎 謙
島崎遥香
光宗 薫
中村昌也
利重 剛
原 日出子
堀北真希
岡田将生
前田美波里
市村正親
松雪泰子
村上弘明
:あつた美希
ライター:あつた美希/Miki Atsuta フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。
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