『眠れる森の美女』を邪悪な妖精の視点から描く物語
悲しみと怒りにとらわれた後、人間性は取り戻せるのか?
アンジーの生き様がキャラクターと重なり胸に響く
『眠れる森の美女』の誰も知らない本当の物語として、オーロラ姫に“永遠の眠り”の呪いをかけた邪悪な妖精マレフィセントの視点から描く作品。主演で製作総指揮を手がけるのは、俳優や監督のみならず、国連高等難民弁務官事務所(UNHCR)の親善大使としての活動も知られているアンジェリーナ・ジョリー。共演は2008年の映画『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』ほか数々の作品で活躍し子役から若手女優へと成長したエル・ファニング、’12年の映画『オン・ザ・ロード』のイギリス人俳優サム・ライリー、’09年の映画『第9地区』の俳優シャールト・コプリーほか。監督は美術監督やプロダクション・デザイナーとして活躍し、’09年の映画『アバター』と’10年の映画『アリス・イン・ワンダーランド』でアカデミー賞美術賞を受賞した経歴をもち、今回が映画初監督となるロバート・ストロンバーグ。朗らかな妖精の少女が邪悪な妖精となり、無垢なベビーに呪いをかけた経緯と、その後の物語を描く。古典の物語にオリジナルの要素をふんだんに盛り込み、アンジーの魅力で惹きつけるファンタジーである。
ある王国でかわいらしい姫が誕生し、祝福のパーティーが開かれる。招待客たちが見守る中、3人の妖精たちが次々に幸運の魔法をオーロラ姫にかけていくなか、3人目の妖精の番になった時、“招かれざる客”である邪悪な妖精マレフィセントが現れ、オーロラ姫に呪いをかける。「16歳の誕生日の日没までに姫は永遠の眠りにつき、真実の愛のキスだけが姫の眠りを覚ます」――。オーロラ姫の死を恐れた父王は、3人の妖精たちに姫が16歳の誕生日を無事に過ごすまで預けることに決め、城から遠く離れた森の中で姫は美しい娘に成長してゆく。マレフィセントは愛らしい子どもであるオーロラ姫が気がかりで、いつも影からそっと見守り続け、サポートしたり世話をしたりするうちに、いつしか温かな感情に満ちている自分に気づく。しかしオーロラ姫が16歳の誕生日を迎え……。
マレフィセント役はアンジーが孤高かつ美しく。彼女はこの作品のテーマについて語る。「誰だって、人生のどこかで、つらい思いを経験するもの。子どもの時にいじめられたり、ほかの人たちになじめないと感じたり、虐待されたりしたせいで、自分と周囲に壁を作ってしまい、暗く、怒りに燃える人になってしまうのはよくあることよ。その暗いところから戻ってくることはできるのか。人間性を失った後に、またそれを手にすることはできるのか。この映画はそういう大きなことを問いかけてくるの」。オーロラ姫役はエル・ファニングが天真爛漫にかわいらしく。2歳8か月のときに‘01年の映画『アイ・アム・サム』で映画デビューしたエルが(実姉ダコタ・ファニングの幼いころの役)、子役として数々の作品に出演しながらすくすくと育ち、今やオーロラ姫と同じ16歳の可憐な若手女優に、ということもまた個人的にとても感慨深い。マレフィセントに仕え、彼女の魔法で変幻自在に姿を変えるカラスのディアヴァル役はサム・ライリーが、ぶっきらぼうでも思いやりとやさしさのある青年として、オーロラの父親で国王役はシャールト・コプリーが野心にかられた人非人として、3人の妖精役はベテランのイメルダ・スタウントンを筆頭に、レスリー・マンヴィル、ジュノー・テンプルらイギリスの女優たちが演じている。
注目は幼いころのオーロラ姫役を演じたかわいらしい女の子、ヴィヴィアン・ジョリー=ピット。名前からわかる通り、アンジーとパートナーであるブラッド・ピットとの実子だ。初の母娘共演のきっかけは、この年頃の子役がアンジーのマレフィセント姿を見てみんな逃げ出すなか(アンジー&ブラッドの次男のパックスさえも)、ヴィヴィアンだけがマレフィセント姿でもいつも通りだったそうで、オーロラの幼いころを演じることに決まったそうだ。とはいえもうすぐ6歳になるヴィヴィアンは本作が映画デビューであり、アンジーとヴィヴィアンの触れ合う1シーンの撮影時には、本人が「やりたくない」となってしまい大変だったそうで、アンジー&ブラッドの両親が一緒に遊びながら、その延長という形であのシーンを撮影したとのこと。またアンジー&ブラッドの次男パックスと長女ザハラも、オーロラ姫の誕生を祝うパーティー・シーンに出演していることも話題となっている。
今でこそ人道活動やブラッド・ピットとの円満な家庭で知られるアンジーは、以前は自傷行為・同性愛・SMなどの行為、ピットとの関係は彼がジェニファー・アニストンと結婚していた時に始まった(’04年〜)ことから不倫としてバッシングをされるなど、昔も今も魅力的な俳優である一方で、グラマラスな風貌のエキセントリックでスキャンダラスな存在としても知られ、その危うさもまた人を惹きつけるものがあった。本作のワールドプレミアがアメリカで5月28日(日本時間5月29日)にハリウッドのエル・キャピタン劇場で行われた際、監督や主要キャストとともに、アンジーはパートナーのピットとともに参加。彼女はこんなふうにコメントしたそうだ。「以前、私は子供をもつなんて考えてみなかったし、誰かを愛することも、愛してくれる人に出会うことも考えたことがなかった。でも人生の中には、それが正しい道だと感じる物事があるのよ。それに素直になれば、あなたを導いてくれる何かがそこに出てくるわ」
アンジーのこれまでの足跡とマレフィセントのドラマが重なる本作。オリジナルの要素を加えた物語そのものの魅力よりも何よりも、アンジーの個性と生き様、マレフィセントのキャラクター・ストーリーが相まって胸に響くものがある、という仕上がりだ。アンジーの転機は’01年に映画『トゥームレイダー』の撮影のためにカンボジアに渡った時に、難民や貧困の実態を目の当たりにしたことだったそう。それから彼女は国連高等難民弁務官事務所(UNHCR)に連絡をして、慈善活動を開始。’02年にはカンボジアの孤児を養子に迎え(長男マドックス)、’05年にエチオピア人の長女ザハラ、’07年にベトナム人の次男パックスを引き取り、’06年にブラッド・ピットとの実子で次女のシャイロを、’08年にノックスとヴィヴィアンの双子を出産し、現在はピットと6人の子どもたちとともに順風満帆に暮らしていることは周知のとおりだ。アンジーは語る。「若いときは自分のことばかり心配するもの。でも、大人になってさまざまな人たちに会ってみて初めて、もっと大きな苦しみを抱えた人たちがいることを知る。そうすると、自分の苦しみがちっぽけに感じ、ほかの人たちのことを考えるようになって生き方が変わってくるの。私は、旅をすることで変わった。そして母になることでも変わったわ。世界のいろいろなところを目の当たりにすることで、自分自身のなかに暗さは感じなくなった。世界は、すでに暗さであふれている。私の暗さを持ち込んでくるスペースなんかないのよ。自分は、“人類愛”という大きなもののひとつ。それを理解して、ほかの人の子ども、ほかの人の家族のことを考えるようになると、自分という人間は変わっていくの」
公開 | 2014年7月5日公開 TOHOシネマズ六本木ヒルズほかにて2D/3D全国ロードショー |
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制作年/制作国 | 2014年 アメリカ |
上映時間 | 1:37 |
配給 | ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン |
原題 | MALEFICENT |
監督 | ロバート・ストロンバーグ |
脚本 | リンダ・ウールヴァートン |
製作総指揮 | アンジェリーナ・ジョリーほか |
出演 | アンジェリーナ・ジョリー エル・ファニング サム・ライリー シャールト・コプリー イメルダ・スタウントン ジュノー・テンプル レスリー・マンヴィル |
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