ベイマックス

日本のポップカルチャーをディズニーが映画化したら?
天才少年とヘルスケア・ロボットが科学都市で事件を追う
SFバトル・アクション、兄弟愛とチームの活躍を描く

  • 2014/12/19
  • イベント
  • シネマ
ベイマックス©2014 Disney. All Rights Reserved.

映画『アナと雪の女王』がメガヒットした日本へ、ディズニーから新たなラブレターが到着。日本のポップカルチャーの影響を感じさせるアメリカのコミック『Big Hero 6』にインスパイアされ、サンフランシスコと東京をミックスした架空の都市サンフランソウキョウを舞台に、天才少年ヒロとロボットのベイマックスが活躍する物語。監督は2011年の映画『くまのプーさん』で監督デビューをしたドン・ホールと、’08年の映画『ボルト』で監督デビューをしたクリス・ウィリアムズ。また数々のディズニー作品を手がけるマット鈴木をはじめ、日本人クリエーターや日本文化をリスペクトするメンバーが製作に参加。映画の舞台設定や街の背景などのビジュアル、鈴をモチーフにしたベイマックスの顔や登場人物たちのキャラクターや名前など、日本のポップカルチャー×ディズニーというコラボレーション感覚が楽しめる作品である。

最先端科学都市サンフランソウキョウ。幼い頃に両親を亡くした14歳の少年ヒロは、唯一の理解者である優しい兄タダシとともに、母親代わりの叔母キャスの家で暮らしている。天才的な発明の能力をもつヒロが、兄の通う工科大学へ飛び級で入学できるとわかった矢先、謎の事故によりタダシが他界。深く悲しみ絶望するヒロの前に、タダシが開発したヘルスケア・ロボットのベイマックスが現れる。ヒロが兄の死の真相を調べ始め、危険に直面するなか、ベイマックスはヒロの心と体を癒そうと献身的に寄り添い……。

ベイマックス

大切な人を亡くし傷ついた少年と心優しいロボットとの心の交流から、仲間たちとチームとなって巨悪と戦う戦隊モノへ。日本のポップカルチャーの影響がはしばしに感じられる作品だ。“アナ雪”の姉妹愛と堅実なロマンスで日本の女子ファンをがっちりつかんだその次は、兄弟愛とバトル・アクションで男子ファンを獲得しよう、ということだろうか。その目標は果たしていかに? 
 個人的には本編よりも、芸人でイラストレーターの鉄拳が手がけたディズニー公認のパラパラ漫画のPVにしみじみと感じ入った。そもそもディズニー作品のPVを外部のクリエーターが手がけることは基本的になく、まったくの異例であるとのこと。日本版のエンディングソングであるAIの「Story」のメロディにハマり、手書きの素朴な質感がとてもあたたかい仕上がりとなっている。

映画化のきっかけは、ドン・ホール監督が原作コミックを見つけたことから始まったとのこと。そして製作総指揮ジョン・ラセターの「ストーリーこそが王である」「リサーチの中からストーリーが生まれる」という信条のもと、精鋭スタッフたちの熱意とともに製作が進められていったそうだ。ホール監督のイメージ、「思いやりがあって、ユニークで、抱きしめたくなるロボット」を求めて、マサチューセッツ工科大学やハーバード大学のロボット工学の研究室を訪問したとのこと。
 そしてカーネギーメロン大学でソフトロボット工学を知った時、「これが僕らの主人公だ!」とインスピレーションを受け、ベイマックスのキャラクターの方向性が定まったそうだ。その後、日本の鈴からデザインされたシンプルなデザインの顔に、空気で膨らむボディをもつディズニーの主人公初の人工知能を持つロボット、ベイマックスが完成したそうだ。

ベイマックス

サンフランシスコと東京をミックスした架空の都市サンフランソウキョウの街並みは、2人の監督やスタッフが日本へリサーチ旅行で出向き、細かいディテールまで作り上げたとのこと。海外作品にでてくる日本語の多くは奇妙なものが多く、それもまたツッコミどころとして笑えることはよくあるものの、本作の劇中にでてくる日本語の書かれた看板や電柱、ネオン看板が明るい夜の街などは、日本人から見てもパッと見はそのままの雰囲気となっている(一時停止でよくよく見るとなにかあるかも?)。日本語吹き替えの声の出演は、兄弟の育ての親である叔母キャス役を菅野美穂、兄タダシ役を小泉孝太郎が担当している。

ベイマックス

「僕らは若い頃に日本のポップカルチャーの影響を受けた最初の世代」と語るウィリアムズ監督。「『となりのトトロ』のキャラクターや人間関係は、優しくシンプルで素晴らかった。優しく心の奥底に響くストーリーという意味で、『ベイマックス』は『となりのトトロ』を参考にしている。『ベイマックス』で日本文化に恩返しをしたい」とも。世界のディズニーファンの反応も気になるところだ。
 ポップカルチャーに関しては、日本でも外交ポイントのひとつとして外務省が力を入れているのは周知のとおり。外務省でも“ポップカルチャーの文化外交への活用”として会議がなされ、“ポップカルチャー専門部会”の活動も。本作はそういうあたりに合っているような。

日本のポップカルチャー×ディズニーという試みの本作。2014年はディズニーの実写版映画として、インド人初のメジャーリーガーを描く作品も公開されたことも記憶に新しく。1国ターゲットというのか、ディズニーのお国柄に合わせた作品作りはこれからも続くのだろうか。次回は中国とか……と、思わず2015-2016年の製作ラインナップを確認したら、『シンデレラ』『ジャングル・ブック』、そして『スター・ウォーズ/エピソード7』など王道の人気作品が続々と。ディズニーといえば、伝統的な作品を中心に世界中の老若男女がシンプルに楽しめるエンターテインメント、というのは揺らがずに。2015年6月に日本公開予定のジョージ・クルーニー主演による映画『トゥモローランド』のような“極秘プロジェクト”もあり、ディズニー王国はさまざまな挑戦も取り入れつつ、今後も充実・拡大していくようだ。

作品データ

ベイマックス
公開 2014年12月20日公開
TOHOシネマズ六本木ヒルズほかにて全国ロードショー
制作年/制作国 2014年 アメリカ
上映時間 1:49
配給 ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン
原題 Big Hero 6
監督 ドン・ホール
クリス・ウィリアムズ
製作総指揮 ジョン・ラセター
脚本 ロバート・L. ベアード
ダニエル・ガーソン
声の出演 ライアン・ポッター
ダニエル・ヘニー
マーヤ・ルドルフ
日本語吹き替えの声の出演 小泉孝太郎
菅野美穂
:あつた美希
ライター:あつた美希/Miki Atsuta フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。
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