不都合な真実2:放置された地球

世界的に大ヒットしたドキュメンタリーの続編
気候変動への危惧、再生可能エネルギーへの転換
アル・ゴア元アメリカ副大統領の活動を映す第2弾

  • 2017/10/16
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不都合な真実2:放置された地球©2017 Paramount Pictures. All Rights Reserved.

地球環境問題についてアル・ゴア元アメリカ副大統領が訴え、世界的に大ヒットした2006年のドキュメンタリー作品の続編が完成。あれから10年、世界中で異常気象や自然災害が頻発し続けるなか、ゴア氏は科学者や政治家や実業家たちと対話し、クリーンエネルギーへの移行の必要性と現実的な手段について伝えてゆく。監督は夫婦で映画製作に取り組み、2011年のドキュメンタリー映画『南の島の大統領 沈みゆくモルディブ』で高い評価を得たボニー・コーエンとジョン・シェンクのコンビが手がける。また製作総指揮としてデイヴィス・グッゲンハイム監督をはじめ1作目の製作チームも参加。ゴア氏が世界を巡り専門家と対話して環境問題への理解を深め、人々への啓蒙活動を精力的に進めるなか、アメリカでは新大統領としてトランプ氏が当選する。刻々と変化してゆく現在の地球環境、そこにこれからどのように向き合っていくかを伝える真摯なドキュメンタリー作品である。

アル・ゴア

あれから10年。アル・ゴア元アメリカ副大統領は世界中を巡り、地球環境問題に取り組む人材育成をサポートし、週に3度のペースで各地にて講演を行い人々にメッセージをじかに伝え続けている。
 ある日はテキサス州内で初となる100%再生可能エネルギーの電力を使用している街ジョージタウンのデール・ロス市長のもとを訪問。またある日はグリーンランドにある環境科学共同研究所の調査基地に赴き、気候学研究の第一線にいる科学者コンラッド・シュテフェン博士から北極の氷床が急激に溶けている現状を聞く。そして2015年の国連のCOP21気候変動会議に参加するためにパリにいたゴア氏と撮影チームは、パリの街で大規模なテロ攻撃があったと知る。混乱と哀悼のなか行われたCOP21気候変動会議では、インドが化石燃料方式による発展途上国の発展を維持する権利を主張。ゴア氏は有意義な合意を得るために、インドのデリーへ赴き、ピユシュ・ゴヤル動力及びエネルギー大臣とプラカシュ環境大臣と会う。

グリーンランド、インド、ヨーロッパ、アジア、アメリカと世界中を巡り、気候変動問題に取り組み続けるゴア氏の姿をとらえたドキュメンタリー。2017年7月28日からアメリカで公開された本作に、各界から賛同の声が集まっている。レオナルド・ディカプリオは自身も環境保護活動を熱心に行っていることもあり、ツイッターで「我々は地球温暖化について戦い続けなければならない。日々精進しよう。そして『不都合な真実2:放置された地球』を観よう」とコメント。また本作のために主題歌「Truth To Power」を書き下ろしたワンリパブリックのライアン・テダーは、「アル・ゴア元米副大統領が、再び、僕らの地球のために何かをしようとインスパイアを与えてくれる映画を作ったんだ。立ちあがって、世界を変えようとする時には“真実”こそが“力”となる」とコメントしている。さらに本作の公式HPの“ニュース”では、ポール・マッカートニー、U2のボノ、ファレル・ウィリアムズら人気アーティストたちが賛同の声を寄せたスペシャル映像の紹介も。

アル・ゴア,ほか

予想外の大ヒットをした2006年の映画『不都合な真実』の翌年、ゴア氏はノーベル平和賞を受賞。本作の制作にあたりヴィス・グッゲンハイム監督による前作の大成功というプレッシャーがあるなか、コーエンとシェンクの監督コンビは「現代の最重要課題である気候変動問題に人々の注目を集めようとする世界的リーダーの立場を観客に追体験してもらう」という考えのもと、前作とは異なり、ゴア氏に密着して撮影・取材する許可を得る。ゴア氏は撮影について語る。「ボニーとジョン(監督)、そして製作チーム全員が長い間熱心に働いてくれたので、撮影されていることを忘れていたことも実は多かった。編集された映像を見て、それぞれの場面は覚えていても、カメラが何をしていたのかはまったく覚えていなかった。撮影技術に長け、映画製作への情熱をもつ彼らに感謝している」
 シェンク監督はゴア氏について語る。「(前作から)10年後のゴアの様子を見ることは、とても興味深い。大統領になるよりも今の方が強く刺激を与える人物になったと思う。『細かな人生計画があったが、その通りにはいかなかった』と経緯について話す彼の様子は感動的で、これを映画のテーマのひとつにした。人生で何が待ち受けているかは誰にもわからないが、それを活かしていけばいいんだ」

2016年には全世界で再生可能エネルギーへの投資額は史上最高を記録。ゴア氏が政党や組織に関わらず、環境変動問題に積極的に取り組むことについて、本作の製作をつとめた企業家のジェフ・スコールは語る。「政治的思考にかかわらず、クリーンで安全、安価で再生可能なエネルギーというビジョンが人々をひとつにしているというのは注目に値する。僕はクリーンエネルギーの将来については楽観的だ。なぜなら、ビジネス的に意味を成しているし、急速に普及する傾向にあるからだよ。僕たちは慎重に行動し、さまざまな背景の人々と関わり合っていかなければならない。地球の運命は僕らにかかっているんだから」
 世界中の195ヵ国が温室効果ガスの削減に取り組むことを定め、「現代の最大の成果」とも言われるパリ協定。トランプ政権がパリ協定の離脱を発表したことについて、ゴア氏はこのように語った。「無謀で全く擁護できない行動です。これにより、世界の中でのアメリカの立場は弱まり、限られた時間のなかで気候問題を解決することが危ぶまれます。今回のトランプ大統領の決断は、多くの米国人が望んでいる結果とは異なりますが、彼が何をしようとも、我々のこの革命は続きます」
 またコーエン監督とシェンク監督は「非常にショックを受けるとともに失望しています。この映画では当時パリ協定を実現させるために裏で奔走した人々の努力や情熱を映しています。トランプ大統領が世界に対するアメリカの貢献を邪魔するのであれば、我々ひとりひとりがこの地球のために立ち上がりましょう」とコメントを寄せている。

微小粒子状物質「PM2.5」による中国の深刻な大気汚染、異常気象によって引き起こされたと言われるスペイン南部の街アドラでの集中豪雨による大洪水、アメリカをはじめ拡大する山火事の被害など、気候変動によりさまざまな異変が起きている今。劇中では、100%再生可能エネルギーの普及は予想以上に各国で飛躍的に普及していること、世界の貧困国の1つでありながらも太陽光発電の市場が世界一速く伸びているバングラデシュの例を紹介。シェンク監督は語る。「多くの人が想像しているよりも災害は近づいてきている。しかし同時に、多くの人が知っているよりもずっとたくさんのことが日常的に行われていることも本作で示しています。今この瞬間、私たちは理性的な形で取り組むか、大変な事態になるのを待つか、選択することができるとゴアは伝える。明らかに前者の選択肢の方が圧倒的に良いと、人々を説得し続けているんです」

アル・ゴア,ほか

本作はドキュメンタリー映画として初めて、東京国際映画祭のクロージング作品に選ばれ2017年11月3日の上映が決定。おカタい啓蒙映画であり気軽に万人が楽しめる内容というわけではことは否めないものの、映画祭というイベントを楽しみながら見てみるのもいいだろう。またこの上映に合わせて、ゴア氏の来日が前作以来10年ぶりに決定したというニュースも。最後に、ゴア氏からのメッセージをご紹介する。「『不都合な真実2:放置された地球』が2017年の東京国際映画祭のクロージング作品に選ばれたことを光栄に思います。また、最近の異常気象により被害に遭われた日本の皆様に対し心からお悔やみを申し上げます。来日し、異常気象の問題に警鐘を鳴らす機会に恵まれることを心待ちにしています」

作品データ

不都合な真実2:放置された地球
劇場公開 2017年11月17日よりTOHOシネマズ みゆき座ほかにて全国ロードショー
制作年/制作国 2017年 アメリカ映画
上映時間 1:38
配給 東宝東和
原題 An Inconvenient Sequel: Truth to Power
共同監督・撮影監督 ジョン・シェンク
共同監督 ボニー・コーエン
製作 ジェフ・スコール
リチャード・バージ
ダイアン・ワイアーマン
製作総指揮 デイヴィス・グッゲンハイム
ローレンス・ベンダー
ローリー・デイヴィッド
スコット・Z・バーンズ
レスリー・チルコット
出演 アル・ゴア
:あつた美希
ライター:あつた美希/Miki Atsuta フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。
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