グレイテスト・ショーマン

19世紀の米国で興行師として成功した男の実話をもとに
家族との愛や仲間たちとの友情、挫折と成功を描く
『ラ・ラ・ランド』チームの曲が冴えるミュージカル映画

  • 2018/02/05
  • イベント
  • シネマ
グレイテスト・ショーマン© 2017 Twentieth Century Fox Film Corporation

「みんな違うから輝く」「人生がどうなるかは自分次第」
 1800年代のアメリカで興行師として成功したエンターテイナー、P.T.バーナムの実話に着想を得た物語。出演は『レ・ミゼラブル』のヒュー・ジャックマン、『マンチェスター・バイ・ザ・シー』のミシェル・ウィリアムズ、『スパイダーマン:ホームカミング』のゼンデイヤ、『ヘアスプレー』のザック・エフロン、『ミッション・インポッシブル/ローグ・ネイション』レベッカ・ファーガソン、そしてミュージカル女優としてブロードウェイで活躍し『幸せをつかむ歌』に次いで映画出演2作目となるキアラ・セトルほか。ミュージカル・ナンバーは『ラ・ラ・ランド』でアカデミー賞を受賞した音楽チーム、ベンジ・パセックとジャスティン・ポールが担当し、監督はミュージック・ビデオやCMの制作で活躍し本作が長編映画初監督となるマイケル・グレイシーが手がける。バーナムは独自の個性をもつ人々とともに、誰も観たことがない華やかなショーを思いつくが……。新事業に燃える男、応援する妻と子どもたち、個性的な人たちの活躍、まったく異なる背景でありながら惹かれ合う男と女。それぞれの熱い思いをエネルギッシュな歌とダンスとともに贈る、ポジティブなミュージカル映画である。

ヒュー・ジャックマン,ミシェル・ウィリアムズ

19世紀半ばのアメリカ。幼なじみの妻チャリティと2人の娘たちを幸せにすることを願うP.T.バーナムは、挑戦と失敗を経て、オンリーワンの個性をもつ人々を集めたショーを思いつく。それは予想以上にヒットし成功するが、これまでにない型破りなショーに対して強硬に反対する者たちもいた。バーナムは裕福になったものの社会的にはあまり評価されない状況のなか、新たな相棒となった上流階級出身のフィリップの協力を得て、パフォーマーたちを連れて英国のヴィクトリア女王に謁見。そのときに欧州で成功していたオペラ歌手ジェニー・リンドと知り合い、初のアメリカ公演をもちかける。

実力派の俳優たちによる歌とダンスがたっぷりと楽しめる本作。同じ音楽スタッフが関わっている『ラ・ラ・ランド』と比べると、いくつかの名作を彷彿とさせるロマンティックな余韻を残す感覚とはまた異なり、スピード感とキレのあるアクロバティックなダンスや、力強いエネルギッシュな歌、といった全体的にパワフルで元気なイメージとなっている。プロデューサーのローレンス・マークは、パセックとポールが制作した9曲のミュージカル・スコアについて語る。「ベンジとジャスティンは、ロックとポップ、現代のブロードウェイ・サウンドを組み合わせるというめったにない才能を見せています。彼らの作る歌は映画の核心をつき、高ぶる気持ちと沈む感情をとらえ、いつでも人をどこかへと運んでいく。それぞれの曲が独立した物語を伝えているんです」

ザック・エフロン,ゼンデイヤ

興行師として成功するP.T.バーナム役はヒュー・ジャックマンが、家族を大切に思いながらも事業欲に燃える野心的な実業家として、彼の幼なじみの妻チャリティ役はミシェル・ウィリアムズが、誠実で愛にあふれる女性として、バーナムに弟子入りし相棒となるフィリップ役はザック・エフロンが、自身の愛と生き方に迷う上流階級出身の男性として、フィリップと惹かれ合う魅力的な空中ブランコ乗りのアン役はゼンデイヤが生き生きと魅力的に。そしてソウルフルな歌声をもつレティ役はキアラ・セトルが、自分らしさを開放するパフォーマーたちの筆頭として、欧州で成功していたオペラ歌手ジェニー・リンド役はレベッカ・ファーガソンが、それぞれに演じている。
 グレイシー監督は本作のテーマについて語る。「バーナムの物語では、自分の想像力を制限しないこと、新しい世界を作り出すために頭にあるものを使うことが描かれています。彼は社会から認められていない人たちにスポットを当て、彼らが初めて愛を感じるチャンスを提供しました。そして、彼らは特別なのだと伝えたんです。観客は彼らを気に入ると思います。なぜなら、結局、誰もが彼らと同じだから。バーナムのセリフに『みんなと同じでいたら、誰も状況を良くすることができなかったはずだ』というのがあります。これこそが本作のハートだと、私は思っています」
 そしてバーナムについての著書を37冊読んだというヒューは、この映画の魅力について語る。「本作は思いやりに満ちた楽しい作品で、感動を呼び、人を笑顔にするんだ。音楽は並外れてすばらしく、きっとみんなこの音楽が頭から離れなくなると思う。多様性の受け入れや忍耐などすばらしいメッセージもあり、完璧な要素をそろえた作品だ。人々は立ち上がり笑顔になって、元気いっぱいになるだろう。この世に生まれたことを誇りに思えるような映画なんだ」

見どころはやはり、印象的なミュージカル・シーンの数々。スピーディでキレのある振付でバーナム夫妻が幸せそうに歌い踊り、子どもたちも一緒に歌う「A Million Dreams」、カウンターバーを舞台にバーナム演じるヒューとフィリップ演じるザックが歌とダンスでダイナミックに応酬する「The Other Side」、バーナムとパフォーマーの人々による迫力の「The Greatest Show」「Come Alive」などどれも楽しい。なかでも実在しない映画上の架空の人物であるフィリップとアンによる「Rewrite The Stars」は、人種や背景が違えども惹かれ合う若い2人のもどかしさを、空中ブランコを用いてアクロバティックに、ダンスとデュエットでスリリングかつロマンティックに表現していて、意外性と相反する要素のミックスが面白く筆者は個人的に一番好みだ。空中ブランコ乗りのアンを演じたゼンデイヤは、空中ブランコのプロのもとでトレーニングを積み、数カ月かけて上半身と体幹を鍛えたとのこと。「Rewrite The Stars」のシーンについてザックは語る。「これは典型的な振付ではなく、かなり突飛な曲芸をやるんだ。ゼンデイヤは空中ブランコがとても上手になっていたから、2人で空中のスタントをやり、ハーネスも使わずに部屋の中でブランコに乗った。運よく失敗せず、美しくユニークなシーンになったんだ。あの場面は、ある意味シルク・ドゥ・ソレイユとシェイクスピアの組み合わせのようだと思っているよ」

そしてキアラ・セトルが歌う「This is Me」は、2018年1月7日(現地時間)に第75回ゴールデン・グローブ賞にて主題歌賞を受賞、2018年3月4日(現地時間)に授賞式を行う第90回アカデミー賞でノミネートされたことも話題に。もしアカデミー賞にて受賞した場合は、ベンジ・パセックとジャスティン・ポールのコンビは、昨年の『ラ・ラ・ランド』に次いで2度目のアカデミー賞とゴールデン・グローブ賞のW受賞となるが、果たして。本作のミュージカル・スコアを手がけたポールは、キアラの歌声の魅力と本作に起用した理由について語る。「『お前には愛される価値がない』と世間から言われても、自分を愛し、自分に自信をもつことが大切だと強調するには、とても強烈な女性の声による生々しいパワーが必要だと思ったんだ」
 またパセックはこんなふうにキアラを称えている。「キアラが歌った瞬間にぐっと持ち上がったね。彼女のことは大好きでずっと尊敬していた女優だ。彼女は自分のもてる感情や気持ちのすべてを音楽と歌詞に注いで歌うんだ。自分を受け入れることの大切さを全力で訴えている。あんなスキルとハートをもつ人に歌ってもらえて、作詞家人生のなかでもとても感動的な体験だったよ」

ザック・エフロン,ゼンデイヤ

7年の準備期間と10ヶ月に及ぶリハーサルを経て完成したという本作。ハリウッドにおけるミュージカル作品への挑戦の難しさと本作への思いについて、ヒューは語る。「オリジナルのミュージカルが作られるのは23年ぶりなんだ。『ラ・ラ・ランド』も僕らと同じ時期にゴーサインが出ている。ただ僕らの作品には、3倍の予算がかかっているんだ。スタジオにとっては、すごいリスクだ。チャレンジは大好きだし、オリジナルのミュージカル映画を作ろうというガッツのあるスタジオで仕事をするのは楽しかったよ」
 2018年12月には、1964年の大ヒット作『メリー・ポピンズ』の公開から約50年ぶりに続編『Mary Poppins Returns』が全米公開予定というニュースもあり、ハリウッドで改めてミュージカル映画が製作され始めていることは、いちファンとして個人的に嬉しい限り。ミュージカル映画が廃れてしまうことなく、オリジナルはもちろん、リメイクも含め、いろいろな形で魅力が広く浸透し、次世代へと継がれてゆくといいな、と期待している。

作品データ

グレイテスト・ショーマン
劇場公開 2018年2月16日よりTOHOシネマズ新宿ほかにて全国ロードショー
制作年/制作国 2017年 アメリカ映画
上映時間 1:45
配給 20世紀フォックス映画
原題 The Greatest Showman
監督 マイケル・グレイシー
脚本 ジェニー・ビックス
ビル・コンドン
音楽 ジャスティン・ポール&ベンジ・パセック
出演 ヒュー・ジャックマン
ザック・エフロン
ミシェル・ウィリアムズ
レベッカ・ファーガソン
ゼンデイヤ
キアラ・セトル
:あつた美希
ライター:あつた美希/Miki Atsuta フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。
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