ブラックパンサー

アフリカ系ヒーロー映画が米国で大ヒットし社会現象に!
青年の葛藤と成長とともに現代に通じるテーマを描く
良質なアクション・エンターテイメント

  • 2018/03/12
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これまでにないアフリカ系スーパーヒーロー映画としてアメリカで社会現象となり、異例の大ヒットとなっている話題作。出演は『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』のチャドウィック・ボーズマン、『それでも夜が明ける』のオスカー女優ルピタ・ニョンゴ、『クリード チャンプを継ぐ男』のマイケル・B・ジョーダン、『レディ・プレイヤー1』の若手女優レティーシャ・ライト、テレビシリーズ「SHERLOCK シャーロック」のマーティン・フリーマン、テレビシリーズ「ウォーキング・デッド」のダナイ・グリラ、『猿の惑星』などのパフォーマンス・キャプチャーで知られるアンディ・サーキス、『ラストキング・オブ・スコットランド』のオスカー俳優フォレスト・ウィテカーほかアフリカ系の俳優を中心に。監督・共同脚本は、ロッキー・シリーズで歴代新記録となった『クリード チャンプを継ぐ男』のライアン・クーグラーが手がける。アフリカの超文明国家ワカンダの王位と“ブラックパンサー”を継いだ若きティ・チャラは、国民と国を守ることに加え、国土で産出する希少鉱石〈ヴィブラニウム〉が悪用されないように守るという重責を負う。人種差別や弾圧への反発や怒り、伝統的な王国のルールと混沌とした世界との関わり方、考え方の違いにより部族や派閥が対立する内部抗争、貴重な資源の流出やそれを食い止めようとする諜報活動など、現代社会に通じるテーマを新ヒーロー誕生のドラマとして魅力的に描く。『アベンジャーズ』シリーズのマーベル・スタジオによる最新作であり、見ごたえのある良質なアクション・エンターテイメントである。

ワカンダの国王だった父を亡くしたティ・チャラは、国王の即位の儀式を経て、国王であり国の守護者「ブラックパンサー」に即位する。その頃、謎の男エリック・キルモンガーが、武器商人のユリシーズとともに、希少鉱石〈ヴィブラニウム〉を得るべくワカンダへの潜入を企てていた。韓国で盗難品のヴィブラニウムが取引されるという情報を得たティ・チャラは、天才科学者である妹シュリが改良した特殊スーツをまとい、国王の親衛隊の隊長オコエや、諜報員のナキアとともに、韓国・釜山の取引現場へ。別口で取引を追っていたCIA捜査官エヴェレット・ロスがユリシーズを拘束するが……。

アメコミのスーパーヒーローものながら、現代社会を映すドラマ性で惹きつける良質な作品。アフリカの王国の守護者「ブラックパンサー」が、なぜ世界を救おうと思うようになったのか、といったヒーローとしての動機や背景、奴隷や植民地制度、差別や弾圧に対する急進的な思想、部族間の内部抗争などが描かれるなか、アフリカ系としての誇りが伝わってくる。監督から出演者までアフリカ系が中心の映画でこれだけ充実の作品を打ち出せると証明し、人種や国籍への偏見、白人中心の映画製作に対して、正攻法で一石を投じているところも、響くものがある。また劇中で白人すべてを悪人にしたり締め出したりするのではなく、卑怯な人間もいれば協力しながら一緒にやっていける人間もいる、という描き方が良心的だ。クーグラー監督は本作について語る。「どんな業界でも、これまで行われていなかったことを試す瞬間がある。映画は、比較的新しいメディアだ。何かの理由で、これまでこの映画が作られる機会が巡ってこなかった。これはアフリカ大陸を基にしたストーリーだ。僕たちは、一生懸命作り上げた。この作品が、観客に届くことを期待しているよ」

突然の父の死により、覚悟をもてないまま国王とブラックパンサーの使命を継ぐティ・チャラ役は、チャドウィックが葛藤し困難を乗り越えて成長してゆく青年として。ティ・チャラの妹でワカンダの王女シュリ役はレティーシャが天才科学者として溌溂と、ティ・チャラの幼馴染で元恋人ナキア役はルピタが国と国王を支えるため各国に潜入するスパイとして、ティ・チャラの母親で、ワカンダの女王ラモンダ役はアンジェラ・バセットが気高く、ワカンダの親衛隊長オコエ役はダナイ・グリラがりりしく、ワカンダ潜入を謀る謎の男エリック役は、マイケルが世界の支配をもくろむ元アメリカの秘密工作員として、CIA捜査官エヴェレット・ロス役はマーティンがベテランのエージェントとして、ワカンダの高僧として国に尽くすズリ役はフォレストが、ワカンダの山奥で暮らすジャバリ族のリーダー、エムバク役はウィンストン・デュークが、武器商人ユリシーズ・クロウ役はアンディがそれぞれに演じている。
 劇中ではティ・チャラを支える凛として強く思いやりのある女性たちの活躍も見ごたえがある。精神的かつ実質的なよりどころとして、ヒーローである主人公が自然と頼りにしている、という描き方が新鮮で、女性キャラクターたちがみんな生き生きとしている。そしてルピタは本作のテーマについて語る。「この映画では、コミュニティというものは1つの国なのか? それとも世界全体としてのコミュニティであるべきなのか? という深いテーマを問いかけているから、この作品を見る時は、できれば大勢で観てほしいわ」

ブラックパンサーは1966年に出版されたマーベル・コミックス『Fantastic Four Vol. 1』第52号に初登場した、初めてのメジャーな黒人ヒーローというキャラクター。一国の王にしてアベンジャーズの一員という独特のポジションで人気を得たブラックパンサーの魅力について、プロデューサーのネイト・ムーアは語る。「ブラックパンサーの面白いところは、ヒーローであると同時に、国の王であるというところだ。彼の影響力は個人的なものに留まらず、政治的なものにもなるということ。自分自身に責任があるばかりか、国の人々全員の責任を背負っている。つまり彼は、ヒーローとして、政治家として、決断を下すことになる。そこまでの責任を背負っているキャラクターは、マーベル・シネマティック・ユニバースのキャラクターで彼以外にひとりもいない。だからこそ、この映画では、ものすごく複雑な物語を語ることができるんだ。なぜなら彼は、ブラックパンサーとしてその時正しいと思うことをやるのみならず、国民のために正しいと思うことをやらなくてはならないからね」

本作の監督・共同脚本をつとめたライアン・クーグラーは現在31歳。南カリフォルニア大学映画芸術学部にて修士号を取得し、2011年の短編学生映画『Fig』が全米映画監督組合学生映画賞とHBO短編映画監督賞を受賞。’13年の長編監督デビュー作品『フルートベール駅で』がサンダンス映画祭のグランプリなどを受賞。脚本・監督を手がけた’15年の長編2作目『クリード チャンプを継ぐ男』はロッキーシリーズの歴代新記録となり、本作の監督としてマーベル・スタジオから抜擢された。マーベル・スタジオ代表のケヴィン・ファイギはクーグラー監督を称賛する。「彼が今回『ブラックパンサー』の共同脚本として参加することに、監督自身が私たちと同じくらい興奮し、情熱をもって挑んだことは素晴らしい出来事でした。監督が初期段階で出したアイデアは、この映画の可能性に新たな活気をもたらしてくれたのです」
 クーグラー監督は2018年2月5日に韓国で行われたプレミアイベントにて映画ファンへのメッセージを伝えた。「あらゆる観客に気に入ってもらえる作品になったと思うよ。大事なメッセージがたくさん詰まっているけど、純粋に映画を楽しんでくれればうれしいな」

アメリカの有名な映画批評サイト「Rotten Tomatoes」で100点満点を得たことも話題の本作。アフリカ系のスーパーヒーロー映画として大きな成功をおさめ、子どもから大人まで誰もが気軽に楽しめるコミック原作のアクション・エンタメでありつつ、現代社会につながるテーマ性が自然と伝わり、本国アメリカで社会現象となっていることは意味深い。白人中心の状態が長い間続いているハリウッドの映画製作のなかで、そして差別や偏見について改めて考えさせられる現代アメリカの社会情勢のなかで、アフリカ系のスタッフとキャストとテーマにより良質なドラマ性と観客動員、双方の成功例となっていること、人々がそれを誇りに思い強く支持していることも。
 マーベル・コミックの同じ世界観で描く実写映画シリーズ、マーベル・シネマティック・ユニバースの第18作である本作。2018年に10周年となるマーベル・スタジオは、今まで登場したキャラクター全員が登場する映画『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』を製作し、2018年4月27日に日本公開が決定。10周年にふさわしく、『ブラックパンサー』の大ヒットは、アベンジャーズシリーズの人気をさらに盤石なものにすることだろう。

作品データ

劇場公開 2018年3月1日よりTOHOシネマズ六本木ヒルズほかにて全国ロードショー
制作年/制作国 2018年 アメリカ映画
上映時間 2:15
配給 ウォルト・ディズニー・ジャパン
原題 Black Panther
監督・脚本 ライアン・クーグラー
脚本 ジョー・ロバート・コール
製作 ケヴィン・ファイギ,p.g.a.
出演 チャドウィック・ボーズマン
マイケル・B・ジョーダン
ルピタ・ニョンゴ
ダナイ・グリラ
マーティン・フリーマン
ダニエル・カルーヤ
レティーシャ・ライト
ウィンストン・デューク
アンジェラ・バセット
フォレスト・ウィテカー
アンディ・サーキス
:あつた美希
ライター:あつた美希/Miki Atsuta フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。
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