500ページの夢の束

ダコタ・ファニング主演による人間ドラマ
自閉症である女性のささやかな挑戦と冒険と成長、
彼女をサポートする人たちとの交流を描くロードムービー

  • 2018/09/11
  • イベント
  • シネマ
500ページの夢の束©2016 PSB Film. LLC

ダコタ・ファニング主演、アメリカのTVシリーズ「アリー my Love」や映画『セッションズ』のベン・リューイン監督による人間ドラマ。共演は『シックス・センス』のトニ・コレット、『スター・トレック イントゥ・ダークネス』のアリス・イヴほか。製作は『JUNO/ジュノ』、『マイレージ、マイライフ』のダニエル・ダビッキが手がける。自閉症であるウェンディは『スター・トレック』が大好き。ソーシャルワーカーのサポートを受けながら暮らすなか、『スター・トレック』の脚本コンテストがあると知り、脚本を執筆するが……。主人公がある願いを込めて、彼女にとっての大きなチャレンジをするひたむきな姿と、ささやかな冒険と成長、彼女をサポートする周囲の人たちとの交流を描くロードムービーである。

アリス・イヴ,トニ・コレット,ほか

自閉症であるウェンディは、唯一の肉親の姉と離れてベイ・エリアの自立支援ホームで、それぞれに障害をもつ人たちと暮らしている。不慣れな場所や知らないことを始めるのが不得手ながらも、ソーシャルワーカーであるスコッティのサポートにより「シナボン」でアルバイトをして日々を過ごしている。そんななか、大好きな『スター・トレック』の脚本コンテストがあると知り、脚本を執筆。ようやく書き上げるも郵送では募集の期日に間に合わないと気づいたウェンディは、脚本を届けるためにベイ・エリアからハリウッドまで約370kmの旅に出ることを決意。3 日間の旅を誰にも告げずに衝動的に決行したウェンディは、ついてきてしまった愛犬ピートとともに、トラブルに遭いながらもロサンゼルスを目指してゆく。

知らない場所を一人で行動するのは困難である女性が、自分にとって譲れないことのために、思いがけずベイ・エリアからロサンゼルスまで旅をする様子を描く。正味のところ、彼女が心ない人たちに何度も付け入られるのは観ていてつらいし、物語としては昔からよくある要素や演出で構成されていて、それほど響くものは個人的にはあまりなく。思いやりのある人たちに常に助けられているウェンディもまた、周囲へいい影響を与えている存在である、というくだりをもっとさまざまに新しい視点で描いてほしかった気も少し。本作では、主人公がダコタであり自閉症の役に挑戦していること、自閉症の人たちが社会で生きていく上でいろいろな可能性があることを示唆していることは注目だ。

ダコタ・ファニング,ほか

『スター・トレック』が大好きな女性ウェンディ役はダコタが丁寧に表現。ウェンディを演じたことについて、ダコタはこのように語っている。「ウェンディに命を吹き込めるのは、私だけだと思ったの。怖さもあったし、これまでとは違う挑戦になると思ったわ」
 ウェンディの姉のオードリー役はアリス・イヴが、妹との関係がうまくいかないことに心を痛めて悩み、ウェンディをサポートする自立支援ホームのソーシャルワーカー、スコッティ役はトニ・コレットがさばさばとしながらも思いやり深く演じている。

製作のきっかけは、脚本家のマイケル・ゴラムコが、ニューヨーク・タイムズ紙に掲載された自閉症の少女の記事から、本作のインスピレーションを得たからとのこと。その少女は自分の趣味について、『ロード・オブ・ザ・リング』の流れに沿って、楽しいフィクションを書くことだと語っていたそうだ。またリューイン監督は6歳の時に患った急性灰白髄炎の影響で、歩くのに生涯松葉杖が必要であるとのこと。本作のプロデューサーであるララ・アラメディンは監督について、「ベンは自身も障害とともに生きてきた。だからそうしたキャラクターに対して特別な見方はしないの。彼自身が困難を乗り越えるために、ユーモアのセンスを活用してきたわ」とコメントしている。リューイン監督は本作の脚本を称えて、このように語っている。「自閉症の人たちを描いた脚本は、たくさん送られてくる。そのなかでも、ダイナミックな主人公とともに最も活気を感じさせる脚本だった。自閉症は二次的な問題だったからだ。私たちは主人公が好きで、彼女に成功してほしいと思う。そして自分の居場所を探す彼女に、この旅は達成感と啓発をもたらす。それはまさに人生の旅のようなんだ」

ダコタ・ファニング

2001年の映画『I am Sam アイ・アム・サム』で愛らしい子役として大ブレイクしたダコタも現在は24歳。最近では妹のエル・ファニングがより活躍していて話題作への出演が続くなか、姉ダコタはやや影が薄い向きもあるものの、2017年には本作、2018年には『オーシャンズ8』にカメオ出演(?)などいろいろと出演していて。またダコタは、クエンティン・タランティーノ監督・脚本・製作で2019年公開予定の大作『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』にて、レオナルド・ディカプリオ、ブラッド・ピット、アル・パチーノ、マーゴット・ロビーと共演というニュースも。天才子役から大人の女優となり、どのように活躍していくか。これからもダコタの活躍をいち映画ファンとして楽しみにしている。

作品データ

劇場公開 2018年9月7日より新宿ピカデリーほかにて全国ロードショー
制作年/制作国 2017年 アメリカ
上映時間 1:33
配給 キノフィルムズ/木下グループ
原題 PLEASE STAND BY
監督 ベン・リューイン
脚本 マイケル・ゴラムコ
製作 ダニエル・ダビッキ
ララ・アラメディン
出演 ダコタ・ファニング
トニ・コレット
アリス・イヴ
:あつた美希
ライター:あつた美希/Miki Atsuta フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。
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