ROMA/ローマ

監督賞ほかアカデミー賞3部門受賞、急遽劇場公開決定!
1970年代のメキシコ、先住民族の家政婦クレオの視点で描く
アルフォンソ・キュアロン監督による半自伝的な人間ドラマ

  • 2019/03/13
  • イベント
  • シネマ
ROMA/ローマNetflixオリジナル映画『ROMA/ローマ』 独占配信中

アルフォンソ・キュアロンが監督・脚本・製作・撮影・編集を手がけ、2019年の第91回アカデミー賞にて監督賞、外国語映画賞、撮影賞の3部門を受賞。2018年12月14日より全世界同時オンラインストリーミングを開始、日本ではオンライン配信のみだったNetflixオリジナル映画『ROMA/ローマ』が、2019年3月9日より劇場公開が緊急決定。出演は、本作で映画デビューした25歳のヤリッツァ・アパリシオ、舞台でも活躍するマリーナ・デ・タビラほかメキシコの俳優たち。1970年代のメキシコ・ローマ地区、先住民族の両親をもつクレオは中産階級の家庭で家政婦として働いている。雇い主一家と円満な関係を築き淡々と仕事をするなか、クレオにある出来事が起きる。キュアロン監督が自身の幼少期の体験も交えて、時には優しく時には寂しく、関わり合った人たちが厳しい現実を支え合って生きてゆくさまを静かに映す。ゆっくりとした時間と情感がモノクロームの映像で流れ、郷愁を誘うドラマである。

ヤリッツァ・アパリシオ,ほか

1970年代、メキシコシティのローマ地区。医師のアントニオと妻ソフィア、夫妻の4人の子どもたちが暮らす中産階級の家庭で、クレオは家政婦仲間のアデラと一緒に働き、専用の離れに2人で住んでいる。休日、クレオはボーイフレンドのフェルミンに「妊娠したかも」と告げると、彼はその場を立ち去り、姿を消す。そのまま彼と連絡が取れなくなり、困惑したクレオはソフィアに相談。病院で診察を受けて妊娠が判明する。
 アントニオは会議のためカナダのケベックへ出張に行き、一度帰宅するもまた家を出て戻らない。ソフィアは4人の子どもたちとクレオとアデラとともにアシエンダの友人宅に行き、新年を迎える。夫妻の別居話が水面下で進むなか、臨月を迎えたクレオは、ソフィアの母テレサに連れられてベビーベッドを買いに家具屋へ。そこで暴動に巻き込まれ……。

各方面で高く評価され、2018年の第75 回ヴェネツィア国際映画祭コンペティション部門にて、動画配信サービス製作の作品では初となる金獅子賞(最高賞)を受賞、2019年の第76 回ゴールデン・グローブ賞にて、外国語映画賞と監督賞を受賞、そして2019年の第91回アカデミー賞にて監督賞、外国語映画賞、撮影賞の3部門を受賞と、受賞歴多数の注目作。米国アカデミー賞では外国語の映画として史上初、スペイン語の映画が作品賞を受賞したことも大きな話題となっている(Netflix作品の映画部門としてもゴールデン・グローブ賞、アカデミー賞ともに初の受賞)。キュアロン監督は本作のアカデミー賞ノミネーションを受けて、今後の映画界への思いとともにこのように語った。「私たちは人間として同じ経験を共有しています。だからこそ、メキシコでの人生を描いたモノクロ作品が世界中で賞賛されていることを大変嬉しく思います。私たちは、多様性が受け入れられる“映画”という世界のなかで、素晴らしい瞬間を生きています。今回のノミネーションは映画業界を前に推し進め、湧き出てくる新たな意見や価値観を反映した作品創りの力となるでしょう。これまでスポットライトが当たらなかった、家政婦や先住民族の女性のような普通の人を主人公にして、私たちの日常に潜む小さな物語の積み重ねを描いた作品が評価される時代になったという、大きな意味を持っています。この素晴らしいニュースをキャスト、制作スタッフそして何よりも大切な家族とメキシコの人々とともに分かち合いたいと思います」

ROMA/ローマ

出演はソフィア役のマリーナ・デ・タビラやゾベック教授役のプロレスラーで俳優のラテン・ラヴァーを除いて、ほぼ演技経験のない無名の人たちばかり。若い家政婦のクレオ役はヤリッツァ・アパリシオが、純朴な女性として。雇い主の妻ソフィア役はマリーナ・デ・タビラが、子どもたちと家庭を守ろうとする女性として、クレアの雇い主でソフィアの夫である医師アントニオ役はフェルナンド・グレディアガが、クレオとともに働く家政婦アデラ役はナンシー・ガルシアが、クレオとデートするフェルミン役はホルヘ・アントニオ・ゲレーロが、ソフィアの母テレサ役はヴェロニカ・ガルシアが、それぞれに演じている。ソフィアとアントニオの4人の子どもたち、ペペ役はマルコ・グラフが、ソフィ役はダニエラ・デメサが、トーニョ役はディエゴ・コルティナ・アウトレイが、パコ役はカルロス・ペラルタが演じ、みんな元気いっぱいでかわいらしい。

キュアロン監督は1961年生まれ。国際原子力機関の原子物理学者アルフレッド・キュアロンを父にもち、3人兄弟の長男としてメキシコシティで育った。メキシコ国立自治大学で哲学と映画を学び、メキシコのテレビ局に勤務。1991年に初めて製作した長編映画『最も危険な愛し方』がアメリカでも認められ、1998年に『大いなる遺産』、2001年に『天国の口、終りの楽園。』など、メキシコとアメリカの両方で映画製作に取り組む。以後、2004年に『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』、2013年にアカデミー賞7部門を受賞した『ゼロ・グラビティ』などを監督、そのほか映画製作でも知られている。『ROMA/ローマ』は監督の半自伝的な作品であり、第75 回ヴェネツィア国際映画祭にて金獅子賞を受賞した際に、監督は家族と郷里への感謝とともにこのように語った。「この映画は、実際には私の母である(乳母)リボによって、また家族によって、そして恐らく何よりも重要であり、私の思考や創造性を形成してくれたとても複雑な場所、ROMAによって監督された作品です。メキシコありがとう!」

マリーナ・デ・タビラ,ほか

ネット配信のみならず、すでにアメリカやメキシコ、韓国など30か国以上で劇場公開している本作。日本では2018年12月からのNetflixによるオンライン配信のみだったが、2019年3月9日より劇場公開が急遽決定。配信用に製作されたNetflix映画が権威ある映画賞の数々を受賞したこと、国や地域によってはこれまでにない形式で上映することで、本作をきっかけに映画の定義、映画興行の仕組みについてさまざまな議論や物議が起きているとも。いずれにしても、大手スタジオ側の論理優先ではなく、映画作家が利益やマーケティングだけにとらわれずに自由に作品を制作できて、良作が世界中の視聴者にスムーズに届くために、映画界がますます進化していくといいなと筆者は思う。
 日本では、配給会社を通さずに配信プラットフォームであるNetflixと劇場が直接タッグを組む異例の公開でイオンシネマ48館にて上映。劇場によっては上映開始日が異なり、上映回数が少ない場合もあるので、事前に残席や上映日時などを確認してから行くといいだろう(https://www.aeoncinema.com/)。

キュアロン監督が脚本・製作、そして撮影・編集まで手がけた本作。モノクロームといってもベージュがかったセピアカラーのやわらかな色調で光と影がゆらぎ、1970年代のメキシコシティを伝える映像美も魅力となっている。支え合っていけること、地に足をつけて生きてゆくこと。キュアロン監督は観る人たちへのメッセージを込めて、本作への思いをこのように語っている。「ゼロ・グラビティの仕上げをするなかで、次の作品はシンプルで、より私的な物語を作ると自分に約束したんだ。この作品は、なにかに答えを出すということではなく、見た人それぞれが自身の思い出や体験を振り返ることのできる作品になっているはずだよ」

作品データ

公開 2018年12月14日よりNetflixにて全世界同時オンラインストリーミング、
2019年3月9日より日本全国48館のイオンシネマにて劇場公開
制作年/制作国 2018年 メキシコ・アメリカ
上映時間 2:15
原題 Roma
監督・脚本・製作・編集 アルフォンソ・キュアロン
出演 ヤリッツァ・アパリシオ
マリーナ・デ・タビラ
:あつた美希
ライター:あつた美希/Miki Atsuta フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。
XInstagram

記載内容は取材もしくは更新時の情報によるものです。商品の価格や取扱い・営業時間の変更等がございます。