キャッツ

傑作ミュージカルをトム・フーパー監督が実写映画化
各国から実力派のダンサーやミュージシャンも参加
楽曲とダンスで惹きつけるエンターテインメント作品

  • 2020/01/24
  • イベント
  • シネマ

1981年のロンドン初演以来、全世界累計観客動員数8100万人、世界各地で上演され続けている傑作ミュージカルを実写映画化。出演は、英国ロイヤル・バレエ団のプリンシパルダンサーであり今回が映画初出演のフランチェスカ・ヘイワード、『ドリームガールズ』のオスカー女優ジェニファー・ハドソン、ニューヨーク・シティ・バレエ団のもとプリンシパルダンサーである『パリのアメリカ人』のロビー・フェアチャイルド、コメディアンや司会者としても活躍するジェームズ・コーデン、『ヴィクトリア女王 最期の秘密』のジュディ・デンチ、シンガーソングライターで俳優のジェイソン・デルーロ、2018年にピープル誌の“最もセクシーな男性”に選ばれた『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』のイドリス・エルバ、『グッドライアー 偽りのゲーム』のイアン・マッケラン、10度のグラミー賞受賞経験のあるアーティストのテイラー・スウィフト、『ジョジョ・ラビット』のレベル・ウィルソンほか。監督・脚本・製作は『英国王のスピーチ』で第83回アカデミー賞にて作品賞を含む4部門を受賞、『レ・ミゼラブル』の映画化でも知られるトム・フーパー、製作総指揮にオリジナルの作曲を手がけたアンドリュー・ロイド=ウェバー、スティーヴン・スピルバーグが名を連ねる。名曲『Memory』や新曲にのせて、実力派の演者たちによる華やかな歌とダンスで惹きつけるエンターテインメント作品である。

1930年代後半のイギリス、満月の夜。若く臆病な白猫ヴィクトリアは人間に捨てられ、ロンドンの片隅にあるゴミ捨て場に迷い込む。そこではぐうたらな猫、ワイルドな猫、お金持ちでグルメな猫、勇敢な兄貴肌の猫、不思議な力をもつ長老猫、個性豊かな“ジェリクルキャッツ”たちが気ままに暮らしていた。彼らとの出会いから、ヴィクトリアも自分らしい生き方を見つけていく。そしてある日、新しい人生を生きることを許される、一匹の猫を選ぶ特別な舞踏会の夜を迎える。

ノーベル文学賞の受賞経験をもつイギリスの詩人T・S・エリオットの詩集をもとに、『オペラ座の怪人』などのアンドリュー・ロイド=ウェバーが作曲、『レ・ミゼラブル』などのキャメロン・マッキントッシュがプロデュースを手がけた傑作ミュージカルをトム・フーパー監督が実写映画化。楽曲や舞台セットなどでミュージカルのイメージを尊重しつつ、ストーリーや演出や振付は映画オリジナルとして新たに製作。物語は群像劇というより、新参者の主人公ヴィクトリアの目線で、さまざまな個性をもつ猫たちの世界へと誘(いざな)われていく感覚となっている。フーパー監督は映画版のテーマについて、「贖罪と多様性の受容の大切さを説いている」とコメントしている。

白猫のヴィクトリア役はフランチェスカ・ヘイワードがかわいらしく表現。ヴィクトリアを導く勇敢で兄貴肌の猫マンカストラップ役はロビー・フェアチャイルドが、町一番のお金持ちでグルメな紳士猫バストファージョーンズ役はジェームズ・コーデンが、慈愛に満ちた長老猫オールドデュトロノミー役はジュディ・デンチが、神出鬼没で恐ろしい力をもつお尋ね者の猫マキャヴィティ役はイドリス・エルバが、マキャヴィティと行動を共にする妖艶な雌猫ボンバルリーナ役はテイラー・スウィフトが、昼はぐうたらでも夜は元気なおばさん猫ジェニエニドッツ役はレベル・ウィルソンが、かつて劇場の大スターだった過去の栄光を懐かしむ老猫ガス役はイアン・マッケランが、甘い歌声で雌猫たちを魅了する自由奔放な猫ラム・タム・タガー役はジェイソン・デルーロが、誰からも愛されない孤独な猫グリザベラ役はジェニファー・ハドソンが、優しい心をもつマジシャン猫ミストフェリーズ役はローリー・デヴィッドソンが、汽車をこよなく愛する働き者の猫スキンブルシャンクス役は英国ロイヤル・バレエ団のプリンシパルダンサーであるスティーヴン・マックレーが、イタズラ好きのコソ泥カップルであるマンゴジェリー役とランペルティーザ役は、ダニー・コリンズとニーヴ・モーガンが、それぞれに演じている。
 日本含め世界で二カ国のみが許可されたという日本語吹替え版では、葵わかな、山崎育三郎、高橋あず美、ロバートの秋山竜次、森崎ウィン、大貫勇輔、Official髭男dismの藤原聡、山寺宏一、宝田明、浦嶋りんこ、RIRI、宮野真守、沢城みゆき、山路和弘、朴璐美、大竹しのぶが参加している。

見どころは数々の楽曲を表現する、出演者たちによる歌とダンス。ジェニファーがオーケストラのサウンドとともに切々と歌い上げる『Memory』は、初演で大ヒットしたエレイン・ペイジが歌う『Memory』のように、美しく儚げなヴォーカルにじわじわとパワーが満ちて最後の最後で強いエネルギーを放つイメージとは異なり、最初に悲哀から入るもすぐに力強くソウルフルに訴えかけてくる感覚だ。また猫たちが陽気に大合唱する「Jellicle Songs for Jellicle Cats」、ファンキー・サウンドでジェイソン・デルーロが歌う「The Rum Tum Tugger」などたくさんの楽曲が楽しめる。なかでも注目は、ミュージカル版の作曲家アンドリュー・ロイド=ウェバーがテイラー・スウィフトと共同で制作した新曲「Beautiful Ghosts」だ。切なさや哀感とともに幻想と戯れる楽しさや明るい希望をかすかに含むウェバーの美しいメロディに、原作者の世界観を反映させたというテイラーの詞が印象的に響く。ウェバーは脚本を読んだ瞬間に、「ヴィクトリアのための曲を作らなくてはいけないと思った」とコメントし、フーパー監督はこの楽曲が期待をはるかに超えていたと絶賛。テイラーは作詞について、「T・S・エリオットは独特な言葉や表現を使う詩人だから、それを反映させたくて彼の作品をすべて読んだわ」と語っている。映画では劇中でフランチェスカが歌い、エンディングでテイラーが歌うバージョンが楽しめる。
 本作の振付は、2016年のミュージカルのリバイバル版で振付を手がけ、3度のトニー賞を獲得したアンディ・ブランケンビューラーが担当。劇中にはダンサーとして、ユニット名“Les Twins”として知られる一卵性双生児のヒップホップ・ダンサー、ラリー&ロラン・ブルジョア、英国ロイヤル・バレエ団のもとソリストのエリック・アンダーウッド、ダンスグループ“The Baes”のメンバーで女優としても活動しているメタ・トーレイほか、ブラジル、フランス、フィリピン、アメリカ、イギリスなど各国からストリート、フリースタイル、コンテンポラリーの実力派ダンサーたちが出演。役者たちとともに、ダンスシーンを華やかに盛り上げている。

“ビジュアルエフェクトの限界に挑戦した”という本作の映像は、役者たちの演技を最大限に活かし、ハイブリッド・テクノロジーを用いて猫らしくVFX化を目指したとのこと。アメリカの観客から厳しい評価もあるのは、オリジナルを愛する大勢の長年のファンによる多大な期待に加えて、このあたりも要因のひとつかもしれない。生身の人間がベースでありながら自然ではない、不自然なシルエットやボディラインが“キモかわいい”の一線を越え、微妙な不気味さや見世物小屋的なニュアンスがややあるところは否めない。またミュージカル版にもとづきながらも、原作の詩に敬意を表し、映画の内容は詩に大きな影響を受けて新しい演出やストーリーを打ち出したことも、ミュージカルそのままを期待していた観客には気になる向きがあった可能性も。ラジー賞の可能性アリとはいえ、それも含めて好みはそれぞれ、楽しみ方はいろいろ。日本の観客にはどのように響くだろうか。
 2020年1月22日に東京で行われたジャパンプレミアにて、フーパー監督はこの映画を「素晴らしいパフォーマンスを通して、優しい心がもたらす変化を描いた作品です」と紹介。そしてフランチェスカは、映画に込められたメッセージをこのように伝えた。「一見楽しいミュージカルですが、深いテーマが込められている作品です。愛、救い、人生の再生などたくさんのメッセージが詰まっていますので、ぜひ注目してください!」

公開 2020年1月24日よりTOHOシネマズ日比谷ほかにて全国ロードショー
制作年/制作国 2019年 アメリカ・イギリス
上映時間 1:50
配給 東宝東和
原題 Cats
監督・脚本・製作 トム・フーパー
脚本 リー・ホール
原作・原案 T.S.エリオット
原作・原案・製作総指揮 アンドリュー・ロイド=ウェバー
製作総指揮 スティーヴン・スピルバーグ
出演 ジェームズ・コーデン
ジュディ・デンチ
ジェイソン・デルーロ
イドリス・エルバ
ジェニファー・ハドソン
イアン・マッケラン
テイラー・スウィフト
レベル・ウィルソン
ロビー・フェアチャイルド
ローリー・デヴィッドソン
フランチェスカ・ヘイワード
日本語吹替え版
音楽プロデューサー
蔦谷好位置
日本語版の声の出演 葵わかな
山崎育三郎
高橋あず美
秋山竜次(ロバート)
森崎ウィン
藤原聡(Official髭男dism)
山寺宏一
宝田明
宮野真守
沢城みゆき
大竹しのぶ
:あつた美希
ライター:あつた美希/Miki Atsuta フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。
XInstagram

記載内容は取材もしくは更新時の情報によるものです。商品の価格や取扱い・営業時間の変更等がございます。