We Are One: A Global Film Festival

映画の新たな取り組みとして、21の映画祭の
プログラムを10日間限定でオンライン無料公開
楽しみを分かち合い、医療や支援団体への寄付も

  • 2020/06/01
  • イベント
  • シネマ
We Are One: A Global Film Festival

現在、2020年5月29日〜6月7日まで、トライベッカ・エンタープライズの主催により、東京国際映画祭をはじめ21の映画祭が参加する10日間のデジタル映画祭「We Are One: A Global Film Festival」が開催中(YouTube.com/WeAreOne)。映画やドキュメンタリー、トーク映像など、東京、カンヌ、ベルリン、ヴェニス、サンダンス、トロント、トライベッカなどの映画祭プログラム100本以上を無料公開。35か国以上から多様な作品を選定し、長編はフィクションが23作品、ドキュメンタリーが8作品、短編はフィクションが57作品、ドキュメンタリーが15作品、トーク映像はアーカイブから15本、この映画祭限定の映像4本を公開。なかにはワールドプレミアが13本、オンラインプレミアが31本、国際的なオンラインプレミアが5本と、この映画祭でお披露目となる作品も。この映画祭の収益は、世界保健機関(WHO)とコロナ感染に関わる救援活動をサポートしている各地域の機関に役立てられ、視聴者がこの映画祭を通じて関連団体に直接寄付し、地域社会をサポートする仕組みも。今回は映画の世界的な新しい取り組みのひとつである、「We Are One: A Global Film Festival」をご紹介する。

ワールドプレミアなども多数! 海外作品

この映画祭では、35か国以上の各国のクリエイターたちによる多様な作品を公開。ドリームワークス・アニメーションの初の短編作品である『Bilby, Marooned』と『Bird Karma』といったメジャーなスタジオの作品、インドのムンバイ映画祭にてGolden Gate Awardを受賞した『Eeb Allay Ooo!』のオンラインプレミアなど。またドキュメンタリー作品では、写真家リッキー・パウエルについて、ナターシャ・リオンやLL・クール・Jのインタビューを交えながら考察する『Ricky Powell: The Individualist』、Third Eye Blindによる短編作品『Motorcycle Drive By』のグローバルプレミア上映、中国のバレーボール選手ジェニー・ラン・ピンの活動の軌跡を伝える、ジョアン・チェン監督作品『Iron Hammer』のワールドプレミア上映ほか。

ジョシュ・スウェイド監督『Ricky Powell: The Individualist』よりジョシュ・スウェイド監督『Ricky Powell: The Individualist』より

湯浅監督の短編アニメや深田監督の新作など日本映画

東京国際映画祭は日本人監督による6本のプログラムを公開。湯浅政明監督による短編アニメーションは、7人の映像作家によるSTUDIO4℃のオムニバス『Genius Party』より15分の短編『夢みるキカイ(英題:Genius Party: Happy Machine)』。ベビーが不思議な世界で奇妙な生きものたちや現象と戯れる様子を描く。音響が冴えていて、デジタル・ミュージックとスタイリッシュな色彩の映像とよだれや涙や鼻水をたらしている赤ん坊という組み合わせの妙、ベビーの喜怒哀楽の声だけでセリフがないことからか左脳がオフになり、観ていると自然と没入し、解き放たれるようなトランス感があるのがユニーク。言語のしばりがないため、幼い子どもたちを含む世界中の誰もが気軽に楽しめる内容だ。

湯浅政明監督『夢見るキカイ』よりc Genius Party湯浅政明監督『夢見るキカイ』より ©Genius Party

一方、“深田晃司監督特集”として、17年ぶりに再会した姉弟のよみがえる思い出をほろ苦く描く『いなべ(英題:INABE)』、相席カフェで出会った男女の奇縁を映す短編『ジェファソンの東(英題:East of Jefferson)』の公開、そしてこの映画祭のために制作された『ヤルタ会談オンライン(英題:The Yalta Conference Online)』のワールドプレミアも。『ヤルタ〜』は、第2次世界大戦後の支配をめぐり米・英・ソの首脳が行った会談をパロディ化した、劇団青年団の30分の戯曲を作者・平田オリザと深田監督の共同脚本で、設定を現在の状況に置き換えて映像化。また芥川賞作家・綿矢りさの小説を松岡茉優の主演で大九明子監督が映画化した『勝手にふるえてろ(英題:Tremble)』、小さな村で初舞台の上演を目指す少年少女6人の姿を描く松居大悟監督の『アイスと雨音(英題:Ice Cream and the Sound of Raindrops)』といった2本の長編作品も公開する。
 東京国際映画祭のシニア・プログラマーである矢田部吉彦氏は、この映画祭への参加と作品の選出について、このようにコメントしている。「高い志を掲げる『We Are One: A Global Film Festival』に参加できることを光栄に感じ、不自由を強いられている世界の人々に、映画を見る喜びを通じて少しでも開放感を味わってもらえる作品を選ぼうと試みました。ユニークなアニメーションや、勢いに乗る気鋭の映画監督たちによる刺激的な作品を、世界の映画ファンに楽しんでもらうことを意図しています」

深田晃司監督『ヤルタ会談オンライン』より深田晃司監督『ヤルタ会談オンライン』より

人気の監督や俳優たちが語る、貴重なトーク映像

また監督や俳優たちによる対談やトーク映像も充実。アーカイブ15本の公開のみならず、この映画祭限定の映像4本を公開。監督たちの参加は、アン・リーと是枝裕和、フランシス・フォード・コッポラとスティーブン・ソダーバーグ、ギレルモ・デル・トロなど、監督とクリエイターの顔合わせは、アレハンドロ・イニャリトゥとパフォーマンス・アーティストのマリーナ・アブラモビッチ、『パラサイト 半地下の家族』のポン・ジュノと主演俳優のソン・ガンホ、ジェーン・カンピオンと女優でミュージシャンのテッサ・トンプソン、デヴィッド・クローネンバーグと俳優のヴィゴ・モーテンセンほか。創作や製作について、各国の監督や俳優たちがざっくばらんに語る内容が充実している。

さらに視聴者が視点を360度自在に動かすことのできる映像と、立体的なサウンドが楽しめるVR作品は、ジョン・レジェンド、コンスタンス・ウー、オプラ・ウィンフリーが声の出演をしているアニメーション『Crow: The Legend』、初監督作品『Music by Prudence』で第82回アカデミー賞の短編ドキュメンタリー賞を受賞し、アフリカ系アメリカ人の監督として初のオスカー受賞者となったロジャー・ロス・ウィリアムズによる『Traveling While Black』ほか。また世界的に活躍するドラマーのクエストラヴ(Questlove)による30分のDJプレイといった音楽パフォーマンスのほか、音楽やダンスがテーマの作品も。
 上映スケジュールは公式HPの一覧にて、作品それぞれの概要とともに紹介(www.weareoneglobalfestival.com)。また「We Are One: A Global Film Festival」の公式YouTubeチャンネルでは、1日目、2日目、と日付ごとの分類や、VR作品、トーク映像、音楽&ダンス、ドラマ、コメディなどジャンル分けのリストになっていてわかりやすい。それぞれの映像の公開日時をカレンダーにリマインダー設定ができて、公開後は映画祭期間中いつでも楽しめるのが便利だ。

「We Are One: A Global Film Festival」の視聴者は、映画ページの寄付ボタンかリンクを介して、新型コロナウイルスの救済活動に寄付できる。寄付先の団体は、世界保健機関(WHO)、UNICEF、UNHCR、セーブ・ザ・チルドレン、国境なき医師団、Leket Israel、GO Foundation、Give2Asiaなど。本映画祭を主催するトライベッカ・エンタープライズと、トライベッカ映画祭の共同創設者で最高経営責任者のジェーン・ローゼンタールはこのようにコメントしている。「世界中のみなさまと、映画祭パートナーとYouTubeとの共同の取り組みを分かち合うことをとてもうれしく思います。私たちは各映画祭がもつ特徴的なスタイルやバリエーションを簡潔に反映した魅力的なプログラムを企画することができました」
 YouTubeの最高事業責任者ロバート・キンセルは語る。「映画やほかの視覚的なコンテンツの素晴らしさのひとつは、居住地や出身地に関わらず、物語を伝え、人々をつなぐことができることにあります。これはYouTubeで何年にもわたり見られてきた現象で、人々がよりつながりと楽しみを求めている今日では特に顕著です。『We Are One: A Global Film Festival』は、尊敬する映画祭パートナーによる独自のレンズを通して、世界中の観客を特別な瞬間に連れていく魔法のような力をもっています」

日本では休業要請の段階的緩和が全国的に始まっているなか、東京でも2020年6月1日よりステップ2へ移行すると小池百合子知事が発表。入場の人数制限や消毒・換気の徹底といった対応をしながら、映画館の休業も6月1日からひとまず解除となり、“近日公開(公開時期未定)”となったままの作品も公開日が決まり始めている。最新の状況や情報に気を付けて、さまざまな変化に対応しながらみんなで日々を慎重に過ごすなか、「We Are One〜」に参加しているベルリン国際映画祭のディレクター、マリエッテ・リッゼンベックとカルロ・チャトリアンからの映画ファンへのメッセージをお伝えする。「映画は共同作業であるだけでなく、体験の共有でもあります。このようなソーシャル・ディスタンスをとる時代には、これまで以上に協力の精神と共同体意識が求められています。このような時に、『We Are One』の取り組みに参加できとても嬉しく思います。今回参加している素晴らしいアーティストたちのファンであるみなさんが、早く大画面で彼らの作品を再び見られるようになることを祈っています」

We Are One: A Global Film Festival

2020年5月29日〜6月7日YouTubeにて独占的に開催

公式HP
http://www.weareoneglobalfestival.com/

YouTube
https://www.youtube.com/WeAreOne

主催 トライベッカ・エンタープライズ
参加している映画祭 アヌシー国際アニメーション映画祭、ベルリン国際映画祭、ロンドン映画祭、カンヌ映画祭、グアダラハラ国際映画祭、マカオ国際映画祭、ロッテルダム国際映画祭(新規)、エルサレム国際映画祭、ムンバイ映画祭、カルロヴィ・ヴァリ国際映画祭、ロカルノ映画祭、マラケシュ国際映画祭、ニューヨーク映画祭、サン・セバスティアン国際映画祭、サラエヴォ映画祭、サンダンス映画祭、シドニー映画祭、東京国際映画祭、トロント国際映画祭、トライベッカ映画祭、ヴェネツィア映画祭
:あつた美希
ライター:あつた美希/Miki Atsuta フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。
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