eHills Club 試写会日記

毎週、映画ファンの皆さんへ熱いメッセージ! 傑作でもB級でも映画ってやっぱり素敵!!

ブリット=マリーの幸せなひとりだち

人気作家フレドリック・バックマンの小説を映画化
スウェーデンの田舎町を舞台に、ひとりの主婦が
人々と出会い、生き生きと変わっていく姿を映す

ブリット=マリーの幸せなひとりだち© AB Svensk Filmindustri, All rights reserved

スウェーデンの人気作家フレドリック・バックマンの小説『ブリット=マリーはここにいた(原題:Britt-Marie var har、英題:Britt-Marie Was Here)』を映画化。出演は、1992年の映画『愛の風景』でカンヌ国際映画祭にて女優賞を受賞した、『スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス』のペルニラ・アウグスト、『ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女』のペーター・ハーバー、『テルマ』のアンデシュ・モッスリング、『フロッキング』のマーリン・レヴァノンほか。監督・共同脚本は女優として活躍し、監督としても評価されているツヴァ・ノヴォトニー、共同脚本はデンマークの脚本家でありペルニラ・アウグストの義理の息子であるアンダース・アウグストが手がける。スウェーデンで夫と暮らす63歳のブリット=マリーは、日々の家事を熱心にこなす専業主婦。しかしある日、夫に長年の愛人がいたと知り……。スウェーデンの田舎町を舞台に、ブリット=マリーが周囲の人々や子どもたちと交流し、自身を改めて見つめ直し、自立して暮らすことで変わっていく姿を描く。理解し合える人たちと出会うことで、何歳からでも変われること、“自分らしく生きる”という素直なテーマを伝える人間ドラマである。

ペルニラ・アウグスト,ペーター・ハーバー

結婚して40年、専業主婦のブリット=マリーはスウェーデンの一軒家で夫ケントと2人暮らし。仕事で多忙な夫のために、毎日家じゅうを磨き上げて料理を作り、家事を熱心にこなしている。しかしある日、夫が長年付き合っている愛人と鉢合わせし、ショックを受けたブリット=マリーは荷物をまとめて家を出る。
 ほとんど働いた経験のない63歳のブリット=マリーが職業安定所に相談したところ、なんとかひとつの仕事を紹介される。それは都市から離れた小さな町ボリのユースセンターの管理人兼、地域の子どもたちの弱小サッカーチームのコーチだった。サッカーなんてよく知らないし、どんな仕事かわからないながらも即断し、長距離バスでボリに到着。ブリット=マリーは荒れ放題だったユースセンターの建物を丁寧に掃除し、やんちゃなサッカーチームの子どもたちに手こずりながらも、村の警察官スヴェンや地元のピザ屋の店長に助けられながら、少しずつ新しい生活になじんでいく。

生真面目な63歳の主婦ブリット=マリーが新しい生活に飛び込み、だんだんと変わっていく姿を映す北欧映画。人気作家の原作をベテランの有名女優の主演で映画化し、本国スウェーデンでヒットした作品だ。例えば、長年家族に尽くしてきて、「別の人生もあるのでは」と逡巡する立場にある人、実際にこうした選択をした人に、より響くストーリーかもしれない。個人的には、家族といる、ある種の不自由さと幸せと安定、ひとりでいる孤独と自由と気楽さ、どちらがいい悪いではないな、と改めて。ノヴォトニー監督は本作のテーマについて語る。「『ブリット=マリーの幸せなひとりだち』のテーマは、どの時代でもどこの国でも通じることです。存在価値のない寂しさ、孤独への恐れは、誰もが共感すること。パートナーや友人や仕事などにおいて、勇気を出して自分の人生に変化をもたらそうとする時に、人は強くなれると訴えかけています」

アンデシュ・モッスリング,ペルニラ・アウグスト

きれい好きの主婦ブリット=マリー役はペルニラ・アウグストが、四角四面な性分の仏頂面から少しずつ変わっていくさまを自然体で表現。ボリの警察官スヴェン役はアンデシュ・モッスリングが世話好きの心優しい男性として、サッカーチームの亡くなった前コーチの娘で元サッカー選手、盲目のバンク役はマーリン・レヴァノンが地に足の着いたしっかり者として、ブリット=マリーの夫ケント役はペーター・ハーバーが、それぞれに演じている。ピザ屋の店主や子どもたち、村人たちなど、さまざまに個性ある人物が登場する。

原作者のフレドリック・バックマンは、1981年生まれ。ライターなどを経て人気ブロガー、コラムニストとなり、2012年に初の小説『幸せなひとりぼっち(原題:En man som heter Ove、英題:A Man Called Ove)』を発表し、スウェーデン国内で80万部を超えるベストセラーとなり、2015年に映画化。また、2013年に『おばあちゃんのごめんねリスト(原題:Min mormor halsar och sager forlat、英題:My Grandmother Asked Me to Tell You She's Sorry)』、2014年に本作の原作『ブリット=マリーはここにいた』などの小説を発表。著作は46か国以上で翻訳され、世界累計1000万部を超える人気作家に。映画『幸せなひとりぼっち』は、トム・ハンクス主演でハリウッドでのリメイクが進行中という。ノヴォトニー監督はブリット=マリーの物語の魅力と、映画に込めた思いを語る。「私はこのテーマを、温かみのあるごく普通の日常と、複雑な感情を表現する物語に仕上げました。ブリット=マリーが人生で初めて職探しをしてハラハラしながらも新しい1歩を踏み出し、自分自身や周囲が抱いている偏見に直面しながら、最終的には町でリーダーシップを発揮します。脚本の観点から見たら、比較的単純な物語ですが、ブリット=マリーの感情と存在感が豊かに表現されています」

ペルニラ・アウグスト,ほか

スウェーデンの田舎町を舞台に、新しい生活に飛び込んだ60代主婦の姿を描く本作。いくつかの有名な北欧映画、愛らしい子どもたちを主役に、色鮮やかなファッションやインテリア、美しい自然の風景などで引きつける、『ロッタちゃん はじめてのおつかい』や “オンネリとアンネリ”のシリーズなどと比べるとだいぶ地味ながらも、人間ドラマとして味わいのある内容だ。年齢、性別、世代を超えた交流がほほえましい。最後に、ノヴォトニー監督がこの映画に込めたメッセージをお伝えする。「私は、問題を抱えたかわいそうな女性が、ついに悟りを得て自分自身の性格を変え、新しい冒険へと踏み出していくというような物語にはしたくありませんでした。むしろ、観客がブリット=マリーのありのままの姿を受け入れてくれることを期待します。また彼女自身も、自分を好きになってくれる人々と出会うことで自分を受け入れるようになります。周囲の人々に合わせるのではなく、自分自身を受け入れ、自分に自信をもつことで復活を体験するという物語にしたかったのです」

2020年7月10日更新

作品データ

公開 2020年7月17日より新宿ピカデリー、YEBISU GARDEN CINEMA、ヒューマントラストシネマ有楽町ほかにて公開
制作年/制作国 2019年 スウェーデン
上映時間 1:37
配給 松竹
原題 Britt-Marie var har
監督・共同脚本 ツヴァ・ノヴォトニー
共同脚本 アンダース・アウグスト
出演 ペルニラ・アウグスト
ペーター・ハーバー
ライター:あつた美希 CSホロス株式会社代表取締役。フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。これまでに取材した人数は600人以上、2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』でコラム“シネマ・アロマ”を担当。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。