サイレント・トーキョー

クリスマス・イブの18時、渋谷に爆破予告が――
充実のキャスト&スタッフによる群像劇にして、
作り込んだ映像で引きつけるクライム・サスペンス

  • 2020/11/30
  • イベント
  • シネマ
サイレント・トーキョー©2020 Silent Tokyo Film Partners

1971年にジョン・レノンとオノ・ヨーコが発表した名曲「Happy X-mas (War Is Over)」にインスパイアされた秦建日子(はた・たけひこ)の小説『サイレント・トーキョー And so this is Xmas』を、「SP」シリーズなどの波多野貴文監督が映画化。出演は、佐藤浩市、石田ゆり子、西島秀俊、中村倫也、広瀬アリス、井之脇海、勝地涼ほか実力派たちが集結。クリスマス・イブの12月24日、東京・恵比寿に爆弾を仕掛けたとTV局に電話が入り、現場に向かったTV局のスタッフ2名と買い物に来ていた主婦が巻き込まれてしまう。再度の爆破予告、首相への要求、犯人の狙いは一体何なのか。渋谷のスクランブル交差点を再現したほぼ実寸大の美術セットや綿密に計算されたVFXなど、作り込んだ映像でも引きつける。事件を起こす者、巻き込まれて翻弄される者、真相を追う者、群像劇として複数の視点から出来事をとらえてゆく、クライム・サスペンスである。

佐藤浩市,ほか

12月24日、クリスマス・イブの東京。恵比寿に爆弾を仕掛けたとTV局に電話が入る。半信半疑で中継に向かったTV局スタッフの来栖公太は、そこにいた主婦・山口アイコと共に犯人の罠にはまり、実行犯へと仕立てられてゆく。その様子を朝比奈仁が静かに見つめるなか、爆発は起きた。そして次の犯行予告が動画サイトに上げられる。「標的は渋谷・ハチ公前。要求は首相との生対談。期限は午後6時」。それが受け入れられない場合、18時に爆弾が爆発するという。渋谷では警察が一帯を通行不可として封鎖するなか、マスコミの報道は過熱し、野次馬たちが集まって騒ぎたて、現場は混沌とした状態に。事件を追う刑事の世田志乃夫と泉大輝、不可解な行動をとるIT企業家の須永基樹、人気店へと向かう会社員の高梨真奈美と印南綾乃、渋谷のスクランブル交差点付近にさまざまな人たちが居合わせるなか、指定の18時を迎える。

クリスマスの東京が連続爆破テロに翻弄される様子を描くクライム・サスペンス。充実のキャストとスタッフ、ほぼ実寸大で再現した渋谷スクランブル交差点の美術セットを製作し、延べ1万人のエキストラが参加するなど大規模な作品となっている。原作の小説は2016年に出版、映画の撮影は2019年10月〜12月であり、COVID-19以前につくられた物語であるものの、“未曽有の事態に陥る国家と人々”という意味で、プロデューサーの阿比留一彦は「現代の情勢とフィクションの類似性」に驚いているとのこと。阿比留プロデューサーは語る。「“日本にテロはない。日本は大丈夫”という安心感はいいことではあるが、“用心しない。考えない。想像しない”という思考停止ではいけない。この作品がひとつの警鐘となると同時に、サイレント・マジョリティー(積極的に発言をしない多数派の人々)が発言する機会を作りたい」

石田ゆり子,井之脇海

連続爆破テロ事件の容疑者・朝比奈仁役は佐藤浩市がミステリアスに表現。事件に巻き込まれた主婦・山口アイコ役は石田ゆり子が、アイコと共に犯人に利用されるテレビ局の契約社員・来栖公太役は井之脇海が、事件を追う刑事の世田志乃夫役は西島秀俊が、世田とバディを組む若手の刑事・泉大輝役は勝地涼が、不可解な行動をとるIT企業家・須永基樹役は中村倫也が、犯行予告現場に居合わせた会社員・高梨真奈美役は広瀬アリスが、それぞれに演じている。さらに、高梨の同僚で須永に惹かれている印南綾乃役に加弥乃、テレビ局のスタッフで来栖の先輩・高沢役に金井勇太、日本の総理大臣・磯山毅役に鶴見辰吾、須永の母親・須永尚江役にドラマ「美食探偵 明智五郎」でも中村倫也の母親を演じた財前直見、謎の探偵役に野間口徹、捜査の指揮を取る警視庁捜査一課管理官・鈴木学役に大場泰正、加えて事件のカギとなる人物の役を毎熊克哉、白石聖、庄野崎謙らが演じている。

波多野監督はリアリティを重視し、撮影の約1年前から警察監修、医療監修、爆弾慣習など専門家に徹底的に取材。爆弾の種類や破壊力、犯行予告後の警察の動き、政府機関への報告、公共交通機関や周辺店舗への協力要請、車両止めの範囲、人止めの仕方、機動隊の動きなど、そのほかさまざまなことについてプロの意見を取り入れ、登場人物たちの行動をはじめストーリー展開を分刻みで徹底的に作り込んだという。
 また、渋谷のスクランブル交差点のオープンセットは、栃木県足利市の足利競馬場跡地の一部、2万2千平米弱の空間に、ハチ公前改札、ハチ公前広場、地下鉄の入口などを含めてほぼ原寸大で忠実に再現。総工費約3億円は他作品との共同出資によるもので、数本の作品が順番にここで撮影されたとのこと。『サイレント・トーキョー』のこのセットでの撮影には1日最大1,200人、延べ1万人のエキストラが参加。そしてクライマックスのシーンでは、ワイヤーなどで激しい動きを表現し、高速レールに乗せたハイスピードカメラを使用、数秒の瞬間を4日間かけて撮影。セットの装飾と綿密に計算された演出、最先端のVFXによって完成した。

西島秀俊,勝地涼,ほか

原作者の秦建日子は劇団秦組を主宰し、小説家・脚本家・演出家として活躍している人物。2004年に小説家デビューした作品『推理小説』は、「アンフェア」としてドラマ&映画化。《刑事 雪平夏見》シリーズとしてベストセラーとなった。映画『サイレント・トーキョー』の原作である長編小説『And so this is Xmas』は2016年に発表。秦氏の脚本・演出で舞台化して劇団秦組が同年に上演。2019年に『サイレント・トーキョー And so this is Xmas』と改題して文庫化した。今回の映画化については、「素晴らしいキャスト・スタッフが集結してくれたと聞き、原作者冥利に尽きる思いです」と語り、完成前にこのようにコメントした。「小説から映画になるにあたり、いくつか設定が変わったりストーリーラインが変わったりということはあるようですが、そこは映画製作チームを信頼して、私は原作者チェックなどの口出しは一切しておりません。完成した映画を、映画館のスクリーンで、まっさらの状態で、大勢のお客様と一緒にドキドキハラハラしながら楽しめる日が、今からとても楽しみです」

名曲「Happy X-mas (War Is Over)」にインスパイアされた原作を映画化し、明確なメッセージがくっきりとある本作。エンディングでは、明るいパワーに満ちた原曲とはまた趣が異なる、新人アーティストAwichによる「Happy X-mas (War Is Over)」のカヴァーが流れ、ピアノとヴォーカルの静かな始まりから、しなやかな芯の強さとしっとりとした包容力のある楽曲が楽しめる。
 日本ではこれまで、大規模な爆弾テロが実際に起きたことはない。この物語では、犯人と警察との攻防、事件の真相に迫るといった男性中心のパートだけではなく、夫へのプレゼントを選ぶ主婦や気になる男性に思いを寄せる会社員といった女性たちも登場する群像劇とすることで、幅広い人たちに届くように工夫をしたとのこと。波多野監督は本作に込めた思いについて、観客へのメッセージと共にこのように語った。「誰も経験したことのない未曾有の大事件を描くにあたり、観る方の没入感を阻害しないことを心がけて、リアリティーを徹底的に追求しました。テロの脅威が平和な日本にも起こり得るものとして体感してもらえるように、音、映像の細部にわたり臨場感を大事にした映画を目指しました。当たり前が当たり前じゃなくなった2020年。日常の中で突如巻き起こる連続爆破テロ事件の先にある真実を、大切な人と共に見届けていただけたらと思います」

作品データ

サイレント・トーキョー
公開 2020年12月4日より丸の内TOEIほかにて全国ロードショー
制作年/制作国 2020年 日本
上映時間 1:49
配給 東映
原作 秦建日子「サイレント・トーキョー And so this is Xmas」(河出文庫刊)
監督 波多野貴文
脚本 山浦雅大
出演 佐藤浩市
石田ゆり子
西島秀俊
中村倫也
広瀬アリス
井之脇海
勝地涼
毎熊克哉
加弥乃
白石聖
庄野崎謙
金井勇太
大場泰正
野間口徹
財前直見
鶴見辰吾
:あつた美希
ライター:あつた美希/Miki Atsuta フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。
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