eHills Club 試写会日記

毎週、映画ファンの皆さんへ熱いメッセージ! 傑作でもB級でも映画ってやっぱり素敵!!

ラーヤと龍の王国

アジア系ヒロインを打ち出すディズニー・アニメ最新作
凛々しく孤独なラーヤは龍と共に世界を救う旅に出る――
多様性を表現する、アクションあり冒険ありのファンタジー

ラーヤと龍の王国©2021 Disney. All Rights Reserved. ©2021 Disney and its related entities

『アナと雪の女王』シリーズに次ぐ、ディズニー・アニメーションの最新作。ディズニー初となる東南アジアのイメージで、凛々しく孤独なヒロインが伝説の龍と共に世界を救う冒険を描く。声の出演は、『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』のベトナム系アメリカ人ケリー・マリー・トラン、中国系と韓国系のルーツをもつアジア系アメリカ人である『フェアウェル』のオークワフィナ、『エターナルズ』の中国系イギリス人ジェンマ・チャン、『ヘルボーイ』のダニエル・デイ・キム、ドラマ『グレイズ・アナトミー 恋の解剖学』のサンドラ・オー、『アベンジャーズ/エンドゲーム』のベネディクト・ウォンほかアジア系を中心に。監督は、アカデミー賞にて長編アニメーション賞を受賞した『ベイマックス』のドン・ホールと、『ブラインドスポッティング』のカルロス・ロペス・エストラーダがタッグを組み、製作は『モアナと伝説の海』のオスナット・シューラー、『アナと雪の女王』シリーズのピーター・デル・ヴェッコが手がける。<龍の石>の守護者一族の娘であるラーヤは、分断しバラバラになった世界を再びひとつにするため、伝説の“最後の龍”シスーを探す旅に出る。アクションあり冒険ありのスペクタクル・ファンタジーであり、ヒロインが仲間と出会い、成長することで目標へと向かっていく姿を描く。信じ合うことや仲間の大切さを今の世界に投げかける、躍動感あるポジティブなアニメーション大作である。

ラーヤと龍の王国

この世界は、かつては聖なる龍たちに守られ、龍と人とが共存する平和なひとつの王国だった。しかし邪悪な魔物ドルーンによってすべての龍と多くの人が犠牲になり、残された人々は“信じ合う心”を失い、バラバラになってしまう。ハート国の首長の娘であり、<龍の石>の守護者一族であるラーヤは、父を失い、1人で孤独に成長。増殖する魔物から王国を救うため、伝説の<最後の龍>シスーを探し続けたラーヤは、ついに龍を蘇らせることに成功する。そして失われた龍の魔力を取り戻すため、ラーヤとシスーは5つに砕けた<龍の石>を探す旅に出る。過去の出来事により人を信じられないラーヤは、人を信じることを大切にしているシスーと共に過ごし、新しい仲間たちと出会ううちに、世界を救う唯一の方法を見出し……。

世界を救うために戦い冒険に身を投じる、アジア系のアクティブなヒロイン、ラーヤを打ち出したディズニー・アニメーションの最新作。人々が信じ合うことを忘れ、分断された世界で、多様性を認め合い調和を目指す、という現代社会のテーマをとてもストレートに描いている。監督のタッグも画期的で、ディズニーでさまざまな作品を手がけてきた、もうすぐ52歳の白人であるドン・ホール監督と、前作は社会派の実写ドラマで長編映画は今回が2作目である32歳のメキシコ系アメリカ人カルロス・ロペス・エストラーダ監督という、まさに多様性といった顔合わせになっている。子どもの頃にディズニー・アニメが大好きだったというロペス・エストラーダ監督は、サンダンス映画祭での初長編映画『ブラインドスポッティング』の上映をきっかけにディズニーのプロジェクトに参加し始めたとのこと。ロペス・エストラーダ監督は本作とディズニーへの思いを語る。「とてもいい経験をさせてもらっているよ。“ラーヤ”は僕のインディーズ映画のバックグラウンドを活かす意味でもパーフェクトだった。今作で僕らは新しいことをたくさん試したし、僕は自分のアイデアをたっぷり言った。フィルムメーカーとしてすごく成長させてもらったと感じているし、本当に自分自身を作品に反映させることができたと思っているんだ」

ラーヤと龍の王国

愛する父を失い、誰も信じずに孤独に育ったラーヤの声はケリー・マリー・トランが、王国を救うために試練に立ち向かうたくましい女性として。ラーヤによって500年の眠りから覚めた“最後の龍”シスーはオークワフィナが、天真爛漫で陽気なキャラクターとして。女優でラッパーのオークワフィナの声はハスキーでテンポがよく、時たま韻を踏んでラップ調に話したりするのが可笑しい。「五つの地で最凶の刃」の異名をもつ龍の石の守護者でありハート国の首長であるラーヤの父ベンジャの声はダニエル・デイ・キムが、目的のためには手段を選ばないファング国の首長の娘ナマーリの声はジェンマ・チャンが、ファング国の冷徹な首長であるナマーリの母ヴィラーナの声はサンドラ・オーが、そしてラーヤが旅で出会う、抜かりなく料理が上手い少年船長ブーンの声はアイザック・ワンが、幼児ながら自身のかわいさを武器に詐欺や盗みをするノイの声はタライア・トランが、巨大な体躯で強面ながら仲間思いの戦士トングの声はベネディクト・ウォンが、アルマジロ風の見た目でありラーヤの相棒でときどき乗り物にもなるトゥクトゥクの声はアラン・テュディックが、それぞれに表現。またノイの相棒である猿のような小動物のオンギ3匹組といった、さまざまなキャラクターが登場する。
 日本語吹き替え版では、ドラマ『恋はつづくよどこまでも』の若手女優・吉川愛、声優の高乃麗、森川智之らが声の出演をしている。

また、映画館では本作と同時上映となる、ディズニー・アニメーションで5年ぶりの新作劇場用短編映画『あの頃をもう一度(原題:Us Again)』も素敵な仕上がりだ(ディズニープラスでの配信開始は6月を予定)。監督は『ベイマックス』でヘッド・オブ・アニメーションを務めたザック・パリッシュが手がけ、1960年代中盤を思わせるオリジナルのファンクやソウルの音楽は『キャプテン・マーベル』の作曲家パイナー・トプラクが担当。ダンスと音楽をテーマにしたミュージックビデオの仕立てで、歌もセリフも一切なし。主人公は、昔はダンスが好きだったが高齢になり偏屈になってソファから動かなくなった夫と、元気に外出へと夫を誘う、年老いても明るい妻。音楽やダンスで賑わう都会の街で、夫婦がある夜に不思議な雨に導かれて踊る喜びを再び思い出す、というストーリー。最初から最後までダンスの動きが脇のキャラまで生き生きとしていてすばらしい。それもそのはず、劇中の老夫婦のダンスパフォーマンスは、ジャスティン・ビーバーやビリー・アイリッシュとのコラボレーションや、人気グループBTSの振り付けなどで知られ、数々の受賞歴をもつ夫婦ダンサーのケオネ&マリ・マドリッドが担当。そもそもこの短編は、2016年にケオネ&マリが老夫婦になりきって披露したダンス映像を、パリッシュ監督が見たことで着想を得たとのこと。監督はこの短編のテーマについて、「事物が変化し年老いてゆくなかで、人はどんな風に今までとは違う目で世界を見るようになるのだろうか、と考えはじめたのです」とコメント。そして製作を担当したブラッド・シモンセンは、「この映画には、生きる勇気を与えてくれる時代を超越したメッセージがあります」と語っている。COVID-19により人が集まったり声を発したりすることが難しくても、歌もセリフもなしでこれだけ魅力的な短編を創ることができる、というのはメッセージとしても力強い。何より、若かった時もとても楽しかったし、年を重ねた今もこれからも夫婦で楽しく過ごしていこう、という心温まる気分がシンプルに広がるのがとても心地よい。

ラーヤと龍の王国

さて、“ラーヤ”は東南アジアをイメージしていながら、メインの制作者に東南アジア系の人物がいないものの、ベトナム系アメリカ人で劇作家や脚本家として活動しているクイ・グエンがアクションの経験者であったことから、本作の非公式なマーシャルアーツ・コンサルタントとして参加しているとのこと。また龍の石といえばドラゴンボールを、荒野を旅するラーヤの姿はナウシカを思い出すような、日本の名作を思い出す向きも。ラーヤの風貌はアジア系の肌に黒髪に切れ長の黒い瞳、ブーツにマントに長い剣といった勇壮ないでたちで、エルサのようにドレスを着てすばらしい声で歌い上げ、強力な魔法を操る白人のプリンセスではないことから、ディズニー・プリンセスとして人気を得るかどうかは果たして。全体として、東南アジアの人たちが見たら「???」と思うようなこともいろいろあるかもしれないものの、ディズニー・アニメーションで初めて、これまで舞台になったことのない東南アジアにインスピレーションを得て新たなファンタジー作品を目指したことについては、新しく前向きで良いことだと思えるのはないだろうか。

分断された世界で、多様性を認め合い調和を目指す。現代的なテーマをとてもストレートに描いている本作は、バイデン大統領の就任スピーチととてもマッチしていたと監督2人は言う。ドン・ホール監督はネタバレになると笑いながらも、この映画への思い入れを語る。「この映画の最後は泣かせるんだ。『ベイマックス』みたいにね。さらに“ラーヤ”には大規模なエピックの要素がある。これは僕らがこれまで手がけてこなかったような、ビッグなスケールの映画だ。そこに人と人との密接なシーンもあって、最後にすべてが一緒になる。すごく満足のいく形で。僕らは何度も映画を見たが、今もまだ感動するよ。慣れてしまったというのはない。いつ見ても、すごく心が動かされる。巨大なスケールの映画で、細やかな人の心を描くという難しいことを、自分たちは達成できたと思うよ」
 多様性をくっきりと打ち出したディズニー映画について、ロペス・エストラーダ監督は語る。「僕らが実際に生きる世の中、そこに住む人たちを描こうという努力は、意識してやっていることだと思う。でも、だからといって、ラーヤはその理由だけで生まれたわけじゃないよ。僕らが関わったほかの映画でも、『これは多様化の条件を見たしているか?』なんてチェックが入るわけじゃない。しかし、ディズニーの映画は、自分が行ったことのない世界に連れて行ってくれて、よく知らなかった文化を体験させてくれ、そこにいる人たちに会わせてくれる。ディズニーはこれまで世界のこの部分(東南アジア)をちゃんと扱ったことがなかったから、僕らは喜んでそこに飛び込んで行ったんだ。その文化を、みなさんと分かち合えるようにね」

2021年3月5日更新

作品データ

公開 2021年3月5日より映画館 and ディズニープラス プレミア アクセス 同時公開
※プレミア アクセスは追加支払いが必要です。
制作年/制作国 2021年 アメリカ
上映時間 1:54
配給 ウォルト・ディズニー・ジャパン
原題 Raya and the Last Dragon
監督 ドン・ホール
カルロス・ロペス・エストラーダ
製作 オスナット・シューラー
ピーター・デル・ヴェッコ
声の出演 ケリー・マリー・トラン
オークワフィナ
ジェンマ・チャン
ダニエル・デイ・キム
サンドラ・オー
ベネディクト・ウォン
日本語吹き替え版の
声の出演
吉川愛
高乃麗
森川智之
ライター:あつた美希 CSホロス株式会社代表取締役。フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。これまでに取材した人数は600人以上、2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』でコラム“シネマ・アロマ”を担当。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。