窓ぎわのトットちゃん

黒柳徹子氏の自伝的小説を初のアニメ映画化
個性的な少女の成長、恩師や友だちとの出会い、
子どもの目を通して、楽しい日々と戦中の日本を描く

  • 2023/12/4
  • イベント
  • シネマ
窓ぎわのトットちゃん© 黒柳徹子/2023映画「窓ぎわのトットちゃん」製作委員会

20以上の言語で翻訳され全世界累計2500万部を超える、黒柳徹子氏の自伝的小説『窓ぎわのトットちゃん』をアニメーションで初めて映画化。声の出演は、『ゆとりですがなにか インターナショナル』の大野りりあな、『キングダム 運命の炎』の小栗旬、『翔んで埼玉 〜琵琶湖より愛をこめて〜』の杏、『土竜の唄 FINAL』の滝沢カレン、『PERFECT DAYS』の役所広司ほか。監督・脚本は『映画ドラえもん のび太の月面探査記』の八鍬新之介が手がける。小学校を退学になったトットは新たにトモエ学園に通うことになり……。第二次世界大戦が終わる少し前である78年前、日本の自由が丘近辺で少女が優しい先生や楽しい仲間たちとのびのびと過ごしたこと、そして両親とのかけがえのないを日々を鮮やかな色彩で描き出す。日本で暮らす女性たちの多くは読んだことがあり、それぞれにイメージをもっているだろう内容を、とてもあたたかく実(じつ)のある内容でアニメーション化した良作である。

第二次世界大戦が終わる少し前の東京。落ち着きがないことを理由に、トットは小学校を1年生で退学になる。新しく通うことになったトモエ学園の校長・小林先生は、最初に会った時にトットの話を4時間ずっと聞き続け、出会ったばかりのトットに優しく語りかけた。「君は、ほんとうは、いい子なんだよ」
 トモエ学園では校長先生の独自の教育理念により、授業の進め方も時間の過ごし方も子どもたちの自主性と個性を尊重。トットちゃんはみんなと共にのびのびと日々を過ごしてゆく。

窓ぎわのトットちゃん

黒柳徹子氏の子どもの頃の実体験をもとに、元気いっぱいで個性的な女の子トットの成長と、恩師である校長先生との出会い、優しいパパとママとの楽しい毎日、仲良しの友だちと過ごした日々を綴った有名な自伝的小説をアニメーション映画化。ただのかわいい子どもたちの日常、ということではなく、お気に入りの財布をトイレに落としたトットが納得いくまでトイレをさらい続けた時のことや、小児麻痺の友だちとどんなふうに仲良くなっていったか、という学校でのさまざまなことや、独自の方針によるトモエ学園に対する周囲の偏見への反発、トットちゃんの目から見た戦中の日本、という子どもの目を通した当時の風潮なども描かれ、大人が観てもしみじみと染みるものがある。黒柳氏によると、本がベストセラーになったために映画化のオファーもたくさんあったものの、“読者のなかにあるトットちゃん”を大切にしたいという思いからすべて断ってきたとのこと。しかし世界情勢などが不穏になってくるなか、ふと映画化を考えていた時に八鍬監督からアニメーション映画化の打診が7年前にあり、そこから企画が始まったそうだ。八鍬監督は2023年11月18日に東京で行われた完成披露舞台挨拶にて、原作の刊行から42年たった今に映画として完成し公開することについて、このように語った。「今、世界中で人種や宗教をめぐって戦争が起きていて、たくさんの難民の方や犠牲者の方が出ています。遠い国の出来事のように感じるかもしれませんが、78年前に日本も同じように戦争をしていました。徹子さんの書いた『窓ぎわのトットちゃん』には、戦争中でも思いやりの心を忘れずに生きた人々が描かれています。その姿を映像化して世界に届けることができれば、少しでも明るい未来につながるんじゃないかと思って企画しました」

窓ぎわのトットちゃん

トモエ学園でのびのびと過ごすトットの声は大野りりあなが、元気に愛らしく。日本人の父とイラン人の母をもつ現在7歳の大野りりあなは受け答えが非常にしっかりしていて、原作の好きなところをこのようにコメントしている。「年長さんの時に将来、女優やアナウンサーの道に進みたいと思いました。でも、成功するかどうか不安だった5歳の時、お母さんが徹子さんの『窓ぎわのトットちゃん』の本を買って読んでくれました。『こうやって勇気を出して成功している人がいるんだな』と思い、勇気をもらったので本当に感謝しています。友達関係のことや色んなことが書いてあって、おもしろいし感動するところがとっても大好きです」
 トモエ学園の校長・小林先生の声は役所広司が、子どもたちを根気よく見守り大らかに指導するゆるぎない信念をもつ人物として。この映画が魅力的なのは、役所広司の声により小林先生の愛情深さや子どもたちとの信頼関係がとてもよく伝わり、胸を打つことも大きい理由のひとつだ。役所は小林先生との不思議なつながりと、この作品への思いについてこのようにコメントを寄せている。「声の仕事は本当に難しいので躊躇しましたが、台本を読ませて頂きとても感動しましたし、戦争というものを子どもたちがどう感じていくのかは普遍的なテーマでありますから、やはりこういったお話は沢山の方に観ていただきたいなと思い参加をしました。妻の母親が小林先生にリトミック体操というのを教わった経験があり『素晴らしい先生だ』という話はよく聞いていました。お会いしたことはありませんが、以前から小林先生を存じ上げていたので今回演じさせて頂くことを、非常に光栄に思っています」
 黒柳氏が小林先生から毎日のようにいわれていた言葉は、原作でも大切な言葉として何度も記され、この映画でも小林先生がたびたびトットに同じ内容を語りかけている。この言葉について、黒柳氏は完成披露舞台挨拶でこのように語った。「今でも何かあった時には、『君は、本当は、良い子なんだよ』と言われたんだから、『私は良い子に違いない』と思って、良い子であるように頑張っています」
 ヴァイオリン奏者であるトットの父・黒柳守綱の声は小栗旬が、夫と娘を愛するトットの母・黒柳朝の声は杏が、トットの担任・大石先生の声は滝沢カレンが、それぞれに表現している。
 黒柳氏は完成披露舞台挨拶にて、先生や両親を改めてアニメ映画で観たことについて、このように話した。「共に私を育ててくださった方々ですので、(本作で観られて)心からうれしく思いました。本当にとてもよく描かれていました。先生も、それから私の母も本当にそのままに描かれていて、監督には『うれしかった』と申し上げました」
 また主題歌「あのね」は、あいみょんが映画のために書き下ろした新曲を提供。あいみょんは映画の制作途中の映像をみて感動したそうで、完成披露舞台挨拶で読み上げられた黒柳氏宛ての彼女の手紙では、この曲についてこのように綴られていた。「主題歌を担当するのが私で大丈夫なのかと不安もありました。作品から伝わる温もり、そして徹子さんの存在に支えられて、『あのね』を作ることができました」

窓ぎわのトットちゃん

実際のトモエ学園は1945年の東京大空襲で消失。一時保管されていた学園の記念碑は、自由が丘駅からほど近くの跡地にある商業施設「JIYUGAOKA de aone(自由が丘 デュ アオーネ)」に再設置され、2023年11月24日に黒柳氏も参加して記念碑除幕式が行われた。また1981年の小説『窓ぎわのトットちゃん』から42年を経て、その後のトットちゃんを描く『続 窓ぎわのトットちゃん』を2023年10月3日に発表。黒柳氏は第5回野間出版文化賞を受賞したというニュースも。続編の出版にあたり、黒柳氏はこのようにコメントを寄せている。「私は、どう考えても『窓ぎわのトットちゃん』よりおもしろいことは書けない、と思っていました。私の人生でトモエ学園時代ほど、毎日が楽しいことはなかったから。だけど、私のようなものの“それから”を知りたいと思ってくださる方が多いのなら、書いてみようかなと、だんだん思うようになったのです。よし!と思うまで、なんと42年もかかってしまったけど、書きはじめると、笑っちゃうこと、泣いちゃうこと、それから戦争のことも次々に思い出されて……」
 続編では、トットが青森に疎開した後、音楽学校を卒業してNHKの専属女優になり、ニューヨークに留学するまでのことが記されている。今回の映画がヒットすれば続編の小説も同じメンバーでアニメ化、という可能性もあるかもしれない。役所広司はこの映画について観客へのメッセージをコメントに寄せている。「この作品は戦争というものについてあらゆる痛みを伝えてくれる物語になっていると思います。子どもから大人まで皆さんが楽しめますし、本当にメッセージが伝わる素晴らしいアニメーションになっていると思います。是非、劇場で観てください」
 この作品のアニメーションはCGに加え、手描きによる12万枚もの作画により完成(通常4万枚でも多い)。完成披露舞台挨拶で、手描きで12万枚と話した八鍬監督は、スタッフや関係者への感謝を込めてこの映画への熱い思いを話した。最後に、完成披露舞台挨拶にて大野りりあな、八鍬監督、そして黒柳氏が伝えたメッセージをご紹介する。
 大野「『窓ぎわのトットちゃん』の映画には、友情の大切さ、親子との関係、先生と子供たちの関係、そして争いというのがどれだけ寂しいものか、そういったいろいろなメッセージが込められている作品です。本作を観て、ぜひ皆さんに感動してほしいです。そして本作を世界中のいろいろな人に観てもらえたらと思います」
 八鍬監督「本作は、本当にたくさんの方のご協力、スタッフの懸命な努力があって、完成させることができました。日本を代表する方々がこの作品のために集まり、長い時間をかけて作った大作となっております。トットちゃんと一緒にトモエ学園に入学するつもりで、ぜひ最後まで楽しんでいただけたらと思います」
 黒柳氏「12万枚! 12万枚の紙に描いたものが本作になっているので、その皆さんの努力というものは口では言い表せないものだと思います。皆さんが一生懸命描いてくださったんだと思うと、本当にうれしく思います。皆さんの心もお届けしたいと思いますので、そういうお気持ちも汲んで観ていただければうれしいです」

作品データ

公開 2023年12月8日より全国劇場にてロードショー
制作年/制作国 2023年 日本
上映時間 1:54
配給 東宝
監督・脚本 八鍬新之介
共同脚本 鈴木洋介
原作 『窓ぎわのトットちゃん』(黒柳徹子 著、講談社 刊)
声の出演 大野りりあな
小栗旬

滝沢カレン
役所広司
:あつた美希
ライター:あつた美希/Miki Atsuta フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。
XInstagram

記載内容は取材もしくは更新時の情報によるものです。商品の価格や取扱い・営業時間の変更等がございます。