用いられたシーンや制作過程に思いを馳せながらみる漆芸美
住友コレクションの漆芸品の数々を、用いられてきたシーンごとにひもとき、漆芸品を見るたのしみ、使うよろこびについて再考する企画展。同時開催として、瀬川竹生コレクションの染付大皿を初公開する。
同館が収蔵する住友コレクションの漆器は、江戸時代から続く大坂の商家・住友家が蒐集し、実際に用いてきたもの。本展では、新春にふさわしく、住友家のハレの日の宴を彩った漆芸の食器・酒器の展示から始まる。統一のとれた揃いの漆器から、在りし日の祝宴の光景が浮かび上がるようなお膳が勢ぞろいする。
また、15代住友家当主・住友吉左衞門友純(号:春翠1864〜1926年)が蒐集した茶席や香席を彩る華やかな漆芸品や美しい蒔絵で装飾された能楽の楽器なども展観。交友の証として住友家にもたらされた漆芸品や、当主が娘に贈った雛祭りの会席膳など、同館ならではの貴重な作品も鑑賞できる。
漆芸品を作り上げた人々の技も堪能できるのも本展のみどころだ。ウルシの木から取れる樹液を東南アジアから東アジアにかけての人々は、接着剤や防腐のためのコーティング剤など単に有用な樹液として利用するので終わらせず、各地域の特性や美意識に応じてさまざまな技法を開花させた。たとえば、一度固まると頑丈な塗膜をつくる漆は、刀による彫刻を可能とし(彫漆)、漆が硬化するまでの時間が、貝殻をつけたり(螺鈿)、金銀粉を蒔いたり(蒔絵)する余地になり、多彩な技法が編み出されていった。このような、漆の可能性を引き出した技法の数々を知ることができるのも、漆芸品を見る楽しみのひとつだろう。
また、辰年を迎えて最初の展覧会である本展では、龍をモチーフにした漆芸品・染付大皿が続々登場する。
さらに同時開催として、漆芸品と同じく私たちのくらしを彩ってきた陶磁器のなかから、近年同館に寄贈された瀬川竹生コレクションの染付大皿が初めて公開される。江戸時代後期に佐賀県・有田地域でつくられた染付大皿の斬新で大胆な意匠は、圧倒的な迫力で、粋な青と白の世界へ誘う。
新春のひと時、その制作技法や用いられたシーンに思いを馳せながら、住友コレクションの漆芸美を堪能したい。
展覧会名 | 企画展 うるしとともに ―くらしのなかの漆芸美 |
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会期 | 2024年1月20日(土)〜2月25日(日) |
休館日 | 月曜日(2月12日は開館)、2月13日(火) |
時間 | 11:00〜18:00(金曜日は19:00まで) ※入館は閉館時間の30分前まで |
会場 | 泉屋博古館東京 港区六本木1-5-1 >> 会場の紹介記事はこちら |
入館料 | 一般 1,000円、高大生 600円、中学生以下無料 |
公式サイト | https://sen-oku.or.jp/tokyo/ |
問合せ | 050-5541-8600 (ハローダイヤル) |
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