神田日勝 大地への筆触

生きることと描くことを諦めなかった画家・神田日勝の回顧展
最高傑作であり遺作の馬の半身絵は必見!

  • 2020/05/29
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  • アート

北海道の開拓民として、農業に従事しながら絵を描き続け、32歳の若さで亡くなった神田日勝(1937〜1970)。2019年に放送されたNHK連続テレビ小説「なつぞら」の登場人物、山田天陽のモチーフとなった画家としても注目を集めるなか、その没後50年にあたる今年、日勝の代表作を網羅した本格的な回顧展が開催される。

1937年、東京の練馬で生まれた神田日勝は、7歳のときに戦火を逃れ一家で北海道に渡る。敗戦によって国からの援助もほとんど得られなかった一家が、極寒の冬を幾度も越しながら、荒れ果てた土地を開墾するのに、辛酸を舐めたことは想像に難くない。そんな厳しい状況下でも、兄の影響で油絵を描き始めた日勝はすぐに絵画にのめり込み、中学を卒業すると農業を続けながら絵を描く道を選ぶ。徐々に作品が評価を得るようになり、多彩な作品を生み出していった日勝だが、1970年、世間が大阪万博で盛り上がっていた頃、農作業、制作、展覧会の準備などに忙殺される中、体調を崩し最後の作品を完成させないまま亡くなってしまう。

42年ぶりの神田日勝の本格的な回顧展となる本展では、代表作を網羅した日勝芸術の全体像を紹介。日勝の画風は、15年に満たない活動期間に目まぐるしい変化を遂げており、労働者や廃棄物をモチーフにした、暗いモノトーンによる社会派リアリズムから、農村生活の身近な物事、農耕馬や牛を緻密な描写で表現した時期を経て、色と形への関心を深め、カラフルな色彩と明瞭な形態が躍動する大画面作品、さらに最晩年の、原点に回帰したかに見える丹念な描写へと、大きな変貌を繰り返した日勝の芸術的展開を、本展ではつぶさに追うことができるだろう。特に、遺作となった《馬(絶筆・未完)》は、未完成でありながら馬の生命を力強く描き出しており、まぎれもなく日勝の最高傑作と言える。
 また、これまで「農民画家」という括りで語られることの多かった日勝の、前衛的な一面にも光を当てた最新研究から、新たな日勝像も提示される。

生きることと描くことが一つであった画家の、喜びや悲しみ、誇りと苦悩がにじみ出た作品群は、きっと鑑賞者の心にずっしりと響くことだろう。

  1. 《馬(絶筆・未完)》1970年 神田日勝記念美術館
    《馬(絶筆・未完)》1970年
    神田日勝記念美術館
  2. 《ゴミ箱》1961年 個人蔵(神田日勝記念美術館寄託)
    《ゴミ箱》1961年 個人蔵(神田日勝記念美術館寄託)
  3. 《飯場の風景》1963年 神田日勝記念美術館
    《飯場の風景》1963年 神田日勝記念美術館
  4. 《画室A》1966年 神田日勝記念美術館
    《画室A》1966年 神田日勝記念美術館

開催概要

展覧会名 神田日勝 大地への筆触
会期 2020年6月2日(火) 〜 6月28日(日)
休館日 会期中無休
時間 10:00〜18:00(金曜日は20:00まで)
※入館は閉館時間の30分前まで
会場 東京ステーションギャラリー
千代田区丸の内1-9-1
入館料 一般 1,100円、高大生 900円、中学生以下無料
※日時指定予約制
※詳細はこちらをご確認ください
公式サイト https://kandanissho2020.jp/
問合せ 03-3212-2485

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