歴史とこだわりが詰まった羊羹は鉄板!著名建築家の設計で建物丸ごと魅力的に

とらや 赤坂店(赤坂)

  • 2018/11/20
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夜の梅夜の梅 小形羊羹1本260円、中形羊羹1本1,512円、竹皮包羊羹3,024円、大形羊羹5,616円
※価格はすべて税込
※賞味期限 製造から1年
※写真は、竹皮包羊羹

赤坂見附駅から徒歩7分ほど、豊川稲荷の前に建つ「とらや 赤坂店」。言わずと知れた和菓子の名門だ。ビル建て替えに伴い、2018年にリニューアルした店舗は、簡素さ、あたたかさ、自然体をイメージした低層の建物となり、優しい檜の香りが穏やかに訪れる人を包む。商品の購入だけでなく、喫茶、ギャラリーの鑑賞、建物自体の見学など、和菓子をキーワードに多方面に楽しめ、若いカップルから年配の常連まで人が途切れることがない。

こし餡派の店長 村上曜介氏。おすすめは、最中「御代の春」。水飴の入った甘みの強い餡はコーヒーと好相性なのだそうだ

2棟建っていた敷地を生かし、扇形の敷地に素直に扇形に建てられた店舗は、建築家 内藤廣氏の設計によるもの。大きな庇と、扇のアーチを描くガラスの壁面の組み合わせが目を引く斬新なデザイン。店内に入ると、1Fはホテルのロビーのようなソファがあり、木の階段が広がる開放的な空間。ここでは、予約品の受け渡しなど、急ぐ人向けの対応を行っている。3Fの菓寮の座席予約ができるタッチパネルもあり、さっと予約を入れて用事を済ませる人も。

“簡素にして高雅”をコンセプトに設計された店舗。2Fの売場は、左官の技術が光る黒壁の前にオープンな陳列台が並ぶ

2Fはショップで、定番品はもとより、生菓子、季節の羊羹、受注生産の特別菓子、オリジナルグッズまで幅広くラインナップされている。正面の黒壁には、屋号の虎の字を4つの鐶(箪笥の引き出しの取っ手)で囲んだ「鐶虎(かんとら)」のロゴが掲げられ、老舗の風格が漂う。この黒壁は、第一人者として知られる久住章氏を筆頭に左官職人たちが黒磨きという伝統技法で造ったもの。漆黒に見えるまで磨き上げた職人技の粋が光る。広いフロアに陳列台がゆとりをもって配置されているため、ベビーカーの人やキャリーバッグなどを持った人も周りを気にせず見られそうだ。「さまざまなお客様にゆったりとお買い物を楽しんでいただくため、ゆとりのある造りにしました。陳列台は低くし、掘り込みを設けて、車イスのお客様にも対応しております。オリンピックを控え、外国人のお客様にも気軽にお越しいただけるよう、英語やそのほかの言語が話せるスタッフを配置しました。」と、企画室広報課の奥野容子氏。フロアには、制服に身を包んだ韓国人やイタリア人のスタッフもおり、多国籍な雰囲気と和菓子の組み合わせが今の時代らしく斬新だ。

3Fの虎屋菓寮。ゆったりとした空間と眺望の良さは、商談場所としても魅力的

3Fは虎屋菓寮と御用場。仕切りのある半個室、テラス、カウンターと、席のバリエーションが豊富な菓寮は、高い天井と窓越しに広がる緑が癒し度バツグン。甘味だけでなく、同店限定の和菓子の素材を使った“季節の食事”、“湯葉うどん”もあり、昼休みのランチにも使えそうだ。御用場では、生菓子や生姜入り焼菓子「残月」を製造。特に「残月」は、工場生産の場合は製造から店頭に並ぶまで数日かかるため、赤坂店だけ作り立てならではの味が楽しめる。中の餡子もやや甘さ控えめに仕上げているのだとか。そんな細かなこだわりを感じる味比べも楽しい。

3Fの御用場で朝から手作りされている生姜入焼菓子「残月」。2Fの売場には13時30分以降に並ぶ
アクセントとなる色と水引がかわいい「おこのみ包み」は好みのデザインを選べる。赤い水引は虎をイメージしているのだとか

主力の羊羹の中でも、不動の人気は上品な甘さとしっかりとした食感が印象的な小倉羊羹「夜の梅」。切り口に浮き出た小豆を夜の闇にほの白く咲く梅に見立てて菓銘が付けられた。夜の梅の美しさは古来より知られ、“春の夜の 闇はあやなし梅の花 色こそ見えね 香やは隠るる(春の夜の闇は無意味だ。梅の花のせっかくの色が見えなくなってしまうが、その素晴らしい香りだけは隠れようもない)”と、『古今集』の和歌にも詠まれている。1819(文政2)年には記録があり、1923(大正12)年に商標登録されたロングセラーだ。北海道産の最上級の小豆を煮て羊羹専用の餡を作り、その餡に煮溶かした寒天と白双糖を加えてじっくりと練り上げていくため、完成するまでに3日かかるのだとか。ビジネスでは、カットせずに食べられる小形羊羹の詰め合わせが良く利用されているという。個包装と同じ感覚なのだろう。

2Fの売場の左手には、風呂敷や豆皿などのオリジナルグッズや、饅頭の中に小さな饅頭が入った「蓬が嶋(よもがしま)」などの特別注文商品が並ぶ。後ろの衝立は、内藤氏がデザインしたもの

虎の模様を思わせる羊羹「千里の風」は赤坂店限定。希少性や話題性から、まとめて購入する人も多い。四季折々の情景を表した「季節の羊羹」は、とらやに古くから伝わる「菓子見本帳」に描かれているものも。小倉羹をそぼろ状の餡で挟んだ「湿粉製棹物」は、羊羹よりも口当たりが優しい。季節に合わせてデザインが変わっていくが、茶系で地味な色合いながら小豆がふんだんに使われている「むさし野」が人気だ。新年に宮中で開かれる歌会始のお題に因んだ羊羹と、干支に因んだ羊羹のデザインは、社内公募で毎年新しいデザインが募集され、1席になると、商品化されるのだとか。9〜4月上旬限定「あんやき」もホロホロ食感でファンが多い。3Fの御用場で作られている生菓子では、秋限定の「栗粉餅」が一番人気だが、11月に販売される「亥の子餅」も好評。
 世界的にも稀有な長い歴史を持ち、それを生かしながらも少しずつ時代に合わせて変化を遂げるとらやの和菓子。手土産に迷った時の“間違いない品”として今後も多くの人に愛されていきそうだ。

基本情報

店舗外観
名称 とらや 赤坂店
所在地 港区赤坂4-9-22
電話番号 03-3408-4121(代)
営業時間
売り場(1〜2F)
平日
8:30〜19:00
土日祝
9:30〜18:00
菓寮(3F)
平日
11:00〜18:30(L.O. 18:00)
土日祝
11:00〜17:30(L.O. 17:00)
※ランチタイム 11:30〜14:30
ギャラリー(B1F)
10:00〜17:30 ※イベントによって変更あり
定休日 12月を除く毎月6日
公式サイト https://www.toraya-group.co.jp/

記載内容は取材もしくは更新時の情報によるものです。商品の価格や取扱い・営業時間の変更等がございます。