最高にファット!
めくるめく“クライム・ショウ”でゴージャスなときを約束
ゴージャスで退廃的、メランコリックで挑発的。視覚から聴覚からノンストップでゾクゾクさせられる感覚がたまらない。試写の後、「もう一度スクリーンで観たい!」と、久しぶりに思えた作品だ。
人のエゴや欲望、ささいなきっかけで起こる犯罪……さまざまなシチュエーションを歌と踊りで表現。1920年代のシカゴにうごめく裏社会の人間模様。最後に笑うのは誰?ミュージカル映画だが、特有の“しらじらしさ”がないのは考え抜かれた演出の勝利だ。
『シカゴ』は1926年に実際に起こった事件を元に戯曲化され、1975年にボブ・フォッシーによってブロードウェイ・ミュージカルとして初演。本作は1995年、フォッシーの最後の愛人アン・ラインキングの振付による再演で大絶賛を浴びた舞台がベースとなっているそうだ。出演はレニー・ゼルヴィガー、キャサリン・ゼタ=ジョーンズ、リチャード・ギア。 全曲吹き替えナシでスターたちが歌い踊る不朽のナンバーは必見!なかでも驚いたのは、ゼタ=ジョーンズの歌と踊りの上手さ。もともとミュージカル女優だったという彼女が歌う「アンド・オール・ザット・ジャズ」は、何度聴いてもドスのきいた妖艶さにシビれる。
一方、“歌や踊りが物足りない”と評されたのが主演のゼルヴィガー。しかしスターになりたくてもなれない、という役柄のため、筋肉が足りなくてヨロめいている踊りもハマッていたし、歌には独自の良さがあった。声質がマリリン・モンローと似ていて、上手下手とは関係なく人を魅了するけだるい甘さがある。その点をぜひ味わってみて欲しい。笑ってしまうのは、ゼタ=ジョーンズやギアの踊りは引きのショットでしっかり映しているのに、ゼルヴィガーが踊るシーンは切り替えの多いカメラワークであまりちゃんと見せてくれないところ。ダンスの実力に差がありすぎることがバレないよう、工夫したのでは?……と、勘ぐってしまったのは意地悪だろうか。
サウンドにはビョーク主演のミュージカル映画『ダンサー・イン・ザ・ダーク』のように、場面の特徴的な音をサンプリングして用いる手法も取り入れられ、スタイリッシュな仕上がりに。サントラ盤は、気分を盛り上げたいときやいまひとつ冴えないときに聴くと効果テキメン。ファットな気分を約束してくれる。ストーリーのオチには思わず「ありえない!」とつぶやいてしまうかもしれないが、この映画で物語性を求めるのは野暮なこと。すべてはひとときの幻、「ショウタイム!」なのだから!
公開 | 2003年4月19日公開 丸の内プラゼール他、全国松竹系にて拡大ロードショー |
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制作年/制作国 | 2002年 アメリカ |
上映時間 | 1:53 |
配給 | ギャガ・ヒューマックス |
監督 | ロブ・マーシャル |
出演 | レニー・ゼルヴィガー キャサリン・ゼタ=ジョーンズ リチャード・ギア |
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