近距離恋愛

愛していると気づいた時、彼女には婚約者が!
彼女を取り戻すためにN.Y.男が大奮闘
大人のための良質なロマンティック・コメディ

  • 2008/07/04
  • イベント
  • シネマ
近距離恋愛

女好きで独身主義のトム、堅実でロマンチストのハンナ。正反対のタイプの男と女でありながら10年来の大親友である2人に、恋愛 → 結婚の未来はあるのか? 出演はアメリカのTVシリーズ『グレイズ・アナトミー』でブレイクしたパトリック・デンプシー、着実にキャリアを伸ばしているミシェル・モナハン、俳優としても活躍し、’08年5月に他界した名匠シドニー・ポラック。監督はCM界で数々の賞を受賞後、映画監督のキャリアをスタートさせ、ヨーロッパを中心に活躍するポール・ウェイランド。恋愛や人情の機微を丁寧に描く、大人のためのロマンティック・コメディである。

大学時代からの大親友であるトムとハンナ。週末は一緒に食事をし、これまでのお互いの恋愛遍歴もすべて知っている仲だ。ある日、ハンナがスコットランドへ6週間の長期出張をした時、彼女が自分にとってかけがえのない存在であることに気づいたトムは「結婚はしないけどハンナと一緒に暮らす」と身勝手な計画を仲間たちにもらす。が、ハンナは出張先で出会った婚約者のコリンとともに帰国。2週間後にスコットランドで挙げる結婚式で花嫁付添い人をしてほしい、とトムはハンナから頼まれてしまう。

パトリック・デンプシー

いまアメリカで大人気のデンプシーを起用した本作。ラブコメというと女性の目線で描かれ、女友達とワイワイしながら展開するものが多いが、本作はデンプシー扮するトムの目線で、男友達と井戸端会議をしながらハンナ奪回作戦を練っていくところが可笑しい。自己中でも憎めない遊び人のトムと、待ち望んだ理想の男性と運命の恋に落ちたハンナ、誠実で情熱的なスコットランド男のコリン。コリンは素朴な田舎者かと思いきや、実はスコッチの名門メーカーの御曹司で公爵の称号をもつ貴公子。アイディアビジネスで成功しているN.Y.のプチセレブとして自信満々だったトムが、人間性も家柄も能力も傑出しているコリンと愛し合うハンナを前に、恋に落ちたただの男として謙虚に素直になっていく姿にも説得力がある。

日本ではあまりなじみのない“花嫁付添い人(bridesmaid)”。近ごろ彼らをテーマにした映画が多い。本作もそのひとつで、本来は未婚の女性が務める花嫁のお世話役をトムが引き受けるところにも独特のユーモアがある。トムが任されたのは、その中でも一番大切な立場にある“筆頭花嫁付添い人(maid of honor)”。本作の原題がそれをもじった『Made of Honor』であることは、イギリス出身のウェイランド監督らしくウィットが効いている。

パトリック・デンプシー、ミシェル・モナハン

デンプシーは、能天気な女好きからハンナを一途に思う男へと変化するトムを好演。モナハンは幸せな結婚を目前にしながらトムの変化にとまどうハンナを、ポラックは恋愛遍歴を繰り返すトムの父親を自然な雰囲気で演じている。コリン役はスコットランド出身のケヴィン・マクキッドが演じ、文武両道に秀で、頼れるタイプの好青年を温かく表現している。

ケヴィン・マクキッド、ミシェル・モナハン、パトリック・デンプシー

N.Y.とスコットランドのカルチャーギャップも楽しい本作。スコットランドの撮影は、北スコットランド最古の居城といわれるスカイ島のダンヴェガン城で行われ、クラシックな建物や雄大な風景がとても美しく映し出されている。わかりやすいラブコメというだけではなく、人間ドラマとしてトムやハンナの心のゆらぎが丁寧に描かれている物語。大人の男女に共感できる要素が満載、とても良質なロマンティック・コメディである。

作品データ

近距離恋愛
公開 2008年7月12日公開
日比谷みゆき座ほかにて全国ロードショー
制作年/制作国 2008年 アメリカ
上映時間 1:41
配給 ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
監督 ポール・ウェイランド
原案・脚本 アダム・ステイキエル
共同脚本 デボラ・カプラン
ハリー・エルフォント
出演 パトリック・デンプシー
ミシェル・モナハン
ヴィン・マクキッド
シドニー・ポラック
キャスリーン・クインラン
:あつた美希
ライター:あつた美希/Miki Atsuta フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。
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