カムイ外伝

崔洋一監督×宮藤官九郎脚本で名作劇画を映画化
松ケン扮するカムイのストイックな忍者活劇にして
人々の愛憎が熱くたぎるシリアスな人間ドラマ

  • 2009/09/18
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  • シネマ
カムイ外伝©2009「カムイ外伝」製作委員会

漫画家、白土三平が江戸時代を舞台に描く劇画『カムイ伝』の番外編『カムイ外伝』を初の実写映画化。主演は本格アクションに初挑戦となる松山ケンイチと小雪、そしてベテランの小林薫、“海猿”シリーズで人気の伊藤英明をはじめ有名俳優たちが続々。監督は『血と骨』の崔洋一、脚本は宮藤官九郎と崔監督。抜忍(ぬけにん)となったもと青年忍者カムイの逃亡劇と、彼が出会う人々との人間模様をシリアスに描く。時間も技術も制作費もしっかりかけて2年越しで作り上げた、大がかりなアクション・エンタテインメントである。

手練れ(てだれ)の忍者カムイは真の自由を求め、里を飛び出して抜忍に。執拗な追っ手をかわしながら、逃亡の旅を続けている。ある日、漁師の半兵衛を助けたカムイは島で暮らす半兵衛一家のもとへ身を寄せることに。そこで以前に抜忍として行方知れずとなった同じ里のくノ一(女忍者)で、今は半兵衛の妻として暮らすスガルと再会。自分は追っ手ではないとカムイが伝えても、スガルは警戒して敵対視する。そんな折、ある事件の犯人として半兵衛が藩主・水谷軍兵衛に捕えられてしまう。

伊藤英明、松山ケンイチ

忍者カムイを主役としたストイックな活劇であり、人々の愛や信頼、裏切りが交錯する人間ドラマでもある本作。原作でも知られている通り、楽しくてハッピーな大団円という物語ではまったくないが、「生き抜け!負けるな」という崔監督の思いがしかと込められた作品となっている。

崔監督にとって初の時代劇であり久しぶりのアクションという本作。全カットの2/3がCGで、デジタル合成にここまでたっぷりと時間をかけたこともお初とのこと。超人的な忍者の動きはもちろん、荒れ狂う海や燃え盛る炎などの映像はかなりの迫力だ。注目は「変移抜刀霞斬り(へんいばっとうかすみぎり)」や、「飯綱(いづな)落とし」などカムイが繰り出す必殺技の数々。技を披露する印象的な格闘シーンには山崎努のナレーションが入り、その秘術について一言解説があるのも面白い。原作ファンにグッと訴えかけるこうした仕込み、要所要所で歯切れよく観客をアッと驚かせる展開に、宮藤官九郎の脚本らしい味わいがある。

忍者役の出演者たちは全員特訓を受けて撮影に参加。冷静沈着な手練れであり人の情を酌む心をもつカムイを、松山ケンイチが豊かな表現力と集中力を生かして熱演。「自分の中で納得できる、最高の芝居ができた」と自身でも語っている。くノ一のスガルを演じた小雪は、全力疾走したり忍術を放ったりとアクションで大奮闘している。本作の共演をきっかけ噂されている松山と小雪の熱愛も気になるところだ。出演者には小林薫、伊藤英明、佐藤浩市、大後寿々花、金井勇太、芦名星、土屋アンナら日本の俳優のほか、香港からはアクションスターのイーキン・チェンも名を連ねる。また少年期のカムイを演じた韓国人子役イ・ハソンのキレのいいアクションも目を引く。

松山ケンイチ

そもそも『カムイ伝』は’64年に連載が始まり、’65年に番外編『カムイ外伝』が誕生。今回の映画は『カムイ外伝』より’82年に発表された“スガルの島”編が原作となっている。「40年前、10代の終わりごろから白土さんの漫画を読んで影響を受けた」という崔監督は語る。「僕は今、映画として、この作品を観てほしいと考えていました。白土三平さんがこの作品を描いた40年前と現代ではその背景も違いますが、安穏と生活し、社会に平々凡々と生きているわけにはいかない世相や、世界の変貌も今はあると思います」

松山ケンイチ、大後寿々花

松山が撮影中に足にケガを負い、約半年という異例の長い撮影中断を余儀なくされたことに松山本人も製作関係者もショックを受けながらもそれを乗り越え、キャストとスタッフが一丸となって作り上げた一大スペクタクル。続編は未定なものの崔監督の構想としては、本作の次に外伝の2部、3部そして本筋の『カムイ伝』へつなげていきたいとも。愛や希望や根性や野望などがさまざまに込められた入魂の一作。果たして続編決定となるか、吉報を待つ!

作品データ

カムイ外伝
公開 2009年9月19日公開
丸の内ピカデリーほか全国ロードショー
制作年/制作国 2009年 日本
上映時間 2:00
配給 松竹
監督 崔洋一
脚本 宮藤官九郎
崔洋一
原作 白土三平
美術 オリビエ・ラド
出演 松山ケンイチ
小雪
伊藤英明
大後寿々花
イーキン・チェン
金井勇太
芦名星
土屋アンナ
佐藤浩市
小林薫
:あつた美希
ライター:あつた美希/Miki Atsuta フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。
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