理想の夫婦と謳われ、イギリスの最盛期を築いた
若き日のヴィクトリア女王と有能な夫アルバート。
19世紀から伝わる2人の恋と人間模様を描く
イギリスの最盛期“ヴィクトリア王朝(1837〜1901年)”といういち時代を築き上げたヴィクトリア女王と、彼女を導き支える夫アルバート。19世紀のイギリス王室を舞台にヴィクトリアとアルバートのラブ・ストーリーと、権力争いや陰謀が渦巻く人間ドラマを描く。出演は『プラダを着た悪魔』で注目されたエミリー・ブラント、『プライドと偏見』のルパート・フレンド、『ダ・ヴィンチ・コード』のポール・ベタニー、『オペラ座の怪人』のミランダ・リチャードソン、若手からベテランまでイギリスの俳優たちを起用。製作は巨匠マーティン・スコセッシ、英国の王子ヨーク公アンドリューの元夫人であり、現在は記者として活動しているセーラ・ファーガソン。監督はカナダで活躍するジャン=マルク・ヴァレ、脚本は『ゴスフォード・パーク』でアカデミー賞を受賞したジュリアン・フェロウズ。華美な派手さはないものの上品で良質、史実をベースにアレンジされた愛と信頼の物語である。
19世紀のイギリス。高齢で病を患っていたウィリアム国王の姪ヴィクトリアは、10代の王位継承者としてさまざまな軋轢を抱えている。実の母ケント公爵夫人は内縁の仲である秘書コンロイの言いなりで娘に摂政政治を強いようとし、叔父のベルギー国王レオポルドはドイツ人の甥アルバートを次期女王の夫にすべくヴィクトリアのもとへ差し向ける。ヴィクトリアとアルバートは周囲の思惑を知りながらもそれとは関係なく、互いにとても自然に惹かれあう。
ヴィクトリア女王というと、愛する夫が42歳で病死したことから、81歳で他界するまで常に喪服を着用していたことで知られる人物。本作では彼女の青春時代をロマンティックに情熱的に描いている。当時、ドイツ人のアルバートがイギリス女王の夫になることは国民や政治家、皇室関係者からあまり歓迎はされていなかったそうだが、妻を愛し献身的に支え、イギリスの政治や皇室内部の現状を学んで実力で信頼を勝ち取っていく流れも魅力的。アルバートが政治家のメルバーン卿に自身の立場を堂々と明言するシーン、ラスト近くでメルバーンがアルバート評をヴィクトリアに伝えるシーンでは、スッとさわやかに胸がすく。
ヴィクトリア役はブラントが、アルバート役はフレンドが、2人の出会いから結婚、夫婦として過ごす10代から30代までを好演。野心的で策略家のメルバーン卿はベタニー、ヴィクトリアと対立する母親のケント公爵夫人はリチャードソン、ウィリアム王はオスカー俳優のジム・ブロードベントが演じている。本作では主人公たちに敵対する人物でもずるさと弱さの両方を描き、キャラクターやエピソードに人間らしいぬくもりがあるところがいい。また製作のファーガソンとアンドリュー王子の娘、ヴィクトリア女王の子孫であるヨーク公爵嬢ベアトリス王女(王位継承権第5位)が、戴冠式のシーンに女官として出演。イギリスの王族が映画初出演ということも、さりげないトピックスに。撮影はプレナム宮殿やハンプトン・コート宮殿をはじめイギリスの17の歴史的建造物で行われ、アカデミー賞受賞経験のあるデザイナー、サンディ・パウエルの衣裳もすばらしく、クラシックで優美な世界に浸れることも愉しい。
確かな愛と信頼と実力によって一国を統治し、理想の夫婦として歴史に名を刻んだヴィクトリアとアルバート。本作は今から150年以上前のイギリス王室という非日常を舞台にした物語であるものの、自立と愛を求めて奮闘するヴィクトリアの姿は現代女性に通じる点も少なくない。葛藤や失敗を乗り越えて、愛する男性とのパートナーシップと社会的地位を確立し、夫婦で大きな成功を収めたという、おとぎ話のようなストーリー。何かと世知辛い現代に向けて、実話をもとに希望をイメージさせる良質な作品である。
公開 | 2009年12月26日公開 Bunkamuraル・シネマほかにて全国順次ロードショー |
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制作年/制作国 | 2009年 イギリス・アメリカ合作 |
上映時間 | 1:44 |
配給 | ギャガ |
監督 | ジャン=マルク・ヴァレ |
脚本 | ジュリアン・フェロウズ |
製作 | マーティン・スコセッシ |
衣装 | サンディ・パウエル |
出演 | エミリー・ブラント ルパート・フレンド ポール・ベタニー ミランダ・リチャードソン ジム・ブロードベント |
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