シン・ゴジラ

脚本・総監督・庵野秀明による新生ゴジラ!
怪獣ものとして人間ドラマとして
日本の底力を描くエンターテインメント作品

  • 2016/07/29
  • イベント
  • シネマ
シン・ゴジラ©2016 TOHO CO.,LTD.

2014年にハリウッド版『GODZILLA』が全世界で大ヒットしたことが記憶に新しいなか、「エヴァンゲリオン」シリーズの庵野秀明の脚本・総監督によって日本版が12年ぶりに完成。出演は長谷川博己、竹野内豊、石原さとみをはじめ、総勢328 名の俳優陣がスクリーンに登場。そして庵野総監督のもと、監督・特技監督は庵野氏の長年の盟友である樋口真嗣、准監督・特技統括は尾上克郎が担当し、日本映画では異例の三監督・四班体制、1000 人以上のスタッフによる大規模な撮影によって製作された。ある日、海上に謎の巨大生物が現れ日本に上陸。街が次々と破壊されてゆくなか、政府は緊急対策本部を設置し対処しようとするが……。新生ゴジラが大暴れするパニックものというだけでなく、大事件が勃発したときの世界と人々を描くエンターテインメント作品である。

東京の羽田沖にて、東京湾アクアトンネルが崩落する原因不明の事故が発生。首相官邸に参集された閣僚の緊急会議にて、事故の原因は「地震や海底火山」という意見が大勢を占める中、内閣官房副長官の矢口蘭堂だけが、海中に棲む巨大生物による可能性を指摘。周囲が一笑に付すなか、海上に巨大不明生物が姿を現し日本に上陸する。街が次々と破壊されてゆくなか、政府は緊急対策本部を設置し自衛隊に防衛出動命令を発動。アメリカ国務省から派遣された大統領特使のカヨコ・アン・パタースンがいち早く日本の緊急対策本部に到着したのをはじめ、各国が日本の異様な状況を注視し始める。そして川崎市街にて、“ゴジラ”と名付けられた謎の巨大生物に自衛隊が向かってゆく。

シン・ゴジラ

東宝による1954年の映画『ゴジラ』以来、国内外で数々の“ゴジラ映画”が製作されてきたなか、12年ぶりの本家版が登場。当初、庵野監督はプロデューサーの山内章弘氏から監督を依頼された際、「怪獣映画は最初の『ゴジラ』があれば、十分じゃないですか」と言って辞退したとのこと。その時の思いについて、「お断りした理由のひとつは、『最初のゴジラを超える自信がない、それに近づけるだけの自信がない』ということでした」とも。また『シン・ゴジラ』では“ゴジラが初出現”として描かれ、すべて続編だったこれまでの“ゴジラ映画”とは異なる。この理由について、2016年7月19日に行われた完成報告会見にて庵野監督はこのように語った。「怪獣映画のおもしろいところは、現代社会にまったく違うものが現れる、というところです。それは特撮映画じゃないとできない世界観だと思います。それを最大限に活かす方法論としては、それが実社会に最初に出てくることなんです。僕は、怪獣映画の完成度と素晴らしさは最初の『ゴジラ』に集約していると思います。でも、引き受けておもしろい映画をつくるなら、最初の『ゴジラ』に少しでも近づけたい。あのおもしろさ、あの衝撃にわずかでもいいから近づけたいと思いました。それには最初の『ゴジラ』と同じようなことをやるしかない。それ以外、あれに近づく方法は僕のなかになかった。だから最初の『ゴジラ』と同じ設定で、怪獣というものがいない世界に初めて現れた、という世界を描こうという感じでした」

巨大生物である可能性をいち早く指摘した内閣官房副長官・矢口役は、長谷川博己が突発的な異常事態に必死で対応するうちに成長してゆく政治家として。内閣総理大臣補佐官・赤坂役は、竹野内豊が冷静に状況を読み必要な役割を果たしてゆく中堅の政治家として、アメリカ大統領特使のカヨコ・アン・パタースン役は、石原さとみが日本政府の緊急対策本部に乗り込んでくる日系アメリカ人の女性エージェントとして演じている。また矢口の秘書官・志村役は高良健吾が、保守第一党の政調副会長・泉役は松尾諭が、環境省自然環境局の野生生物課・課長補佐の尾頭役は市川実日子が、防衛大臣・花森役は余 貴美子が、統合幕僚長・財前役は國村隼が、農林水産大臣・里見役は平泉成が、内閣官房長官・東役は柄本明が、それぞれに演じている。劇中では、専門用語を交えた長台詞を俳優たちがたびたび繰り出すのも見もののひとつ。石原さとみは今回の出演について、前述の完成報告会見にてこのように語った。「撮影中は胃が痛い毎日で、『ゴジラを撮影している』と客観視するたびに、プレッシャーに押しつぶされそうでした。脚本が本当に素晴らしくて、『壊したくない』と思いながらずっと震えていました」

シン・ゴジラ

長い尻尾とこぶりの腕をもつ今回のゴジラは、着ぐるみではなくフルCGであることも大きな特徴のひとつ。庵野監督は、「あらゆることで苦労しました」と笑いながら語る。「今回はCGの持っている人間的ではない部分も活かそうかなと思いました。なるべく人間的な意図や意思は削り取るようにして描いています。目だけは下を見ていて、これが今回のゴジラの唯一のコミュニケーションかなと。下を見ているゴジラは、初代ゴジラと今回のゴジラだけです。見ることが感情になるので、視線にはこだわって、ものすごく小さいレベルの修正をしました。CGは、最後の仕上げがすごく大変なんです。光の加減、どういう風に皮膚の感じが見えるか、動きや、それに合わせた煙やエフェクト、本当に大変でした。けれど、(制作会社の)白組さんが本当に最後の最後までがんばってくれました。日本映画のCGに対する見方が変わるのではないかと思うぐらい素晴らしい出来になっていると思います。それで日本映画の何かが変わればいいなと切に願っています」

山内プロデューサーがゴジラについて語る。「『ゴジラ』は東宝としても大切なキャラクター作品ですし、世界中の映画ファンにとっても次作を待ち望まれている作品であると認識しています」。また前作から12年を経て製作するきっかけとなったのは、2012年にハリウッド版『GODZILLA』の企画が発表されたことだったとも。その経緯について、山内氏はこのようにコメントしている。「『本家本元の日本版は?』という声援に背中を押された部分もあり、『日本のゴジラとは?』と強く考えました。監督は日本を代表するアニメーションクリエーターであり、実写の経験も豊富で特撮に対する愛情、造詣も非常に深い庵野監督にぜひともお願いしたいと、‘13年の初冬に監督に相談させてもらいました。最初からご快諾というわけじゃなかったものの、’14年の春ぐらいに盟友の樋口監督、尾上監督にもご参加いただいて一緒につくっていくことになり、プロジェクトの本格始動となりました」

シン・ゴジラ

本作は日本で公開する前に、100の国と地域で世界配給が決定。これは異例であり、日本版「ゴジラ」シリーズの中でも最多とも。大規模な世界配給について、俳優陣は喜びとともにこのように語った。
 長谷川 「すごいですね。ゴジラが世界的にひとつの怪獣のシンボルであり、世界中に愛されているということと、庵野監督への期待だと思います。それに出られたことは、すごく嬉しいです。違う仕事で海外に行った時に、外国人のコーディネーターさんに『君はゴジラアクターなんだろ?』と言われました。『ゴジラ』の映画に出ていると(海外でも俳優として)かなり価値が上がるということでした(笑)」
 石原 「観てくださる方の経験や知識、どこに興味を持っているのか……(人によって)捉え方や感想がすごく変わる作品です。原爆、原発、放射能について、私もこの映画を観て改めて考えさせられました。観終わった後に、ぜひ議論してもらえたらと思います」
 竹野内 「本当に嬉しい限りです。エンターテインメントというのは、人それぞれだと思います。このゴジラの存在を世界中の人に観てもらって、観終わった時に、みんなに議論してもらいたいです。そこに一番の意味があるのかなと感じます」

前半はゴジラが街を破壊してゆくパニックものとして、後半はもし日本で世界に累を及ぼしかねない事態が起きたら、という人間ドラマとして描かれてゆく本作。前半は子どもたちや特撮ファンに、後半は映画ファンの大人たちにと、幅広い層に向けて熱心に作り込まれている。個人的には後半のパートで、各国の反応、それに対して日本がどうするか、という状況を描いていくところに引きつけられた。最後に、完成会見で長谷川博己が語ったメッセージをお伝えする。「先ほど庵野監督がおっしゃったように、現場では苦労しかないという状況を僕は見ていました。命をすり減らしながらものづくりに挑む姿を見て、スタッフ全員、キャスト328名も含めて、この映画のセリフにある『日本はまだまだやれる』、それを証明できたんじゃないかなと思います。日本のチームワークの良さが大事なメッセージになっていますし、幅広く観てもらえる作品になっています。ぜひ皆さん、劇場で観てもらえたらと思います」

作品データ

シン・ゴジラ
公開 2016年7月29日より、全国東宝系にて全国ロードショー
制作年/制作国 2016年 日本
上映時間 2:04
配給 東宝
英題 SHIN GODZILLA
脚本・総監督 庵野秀明
監督・特技監督 樋口真嗣
准監督・特技統括 尾上克郎
音楽 鷺巣詩郎
出演 長谷川博己
竹野内豊
石原さとみ
高良健吾
松尾諭
市川実日子
余 貴美子
國村隼
平泉成
柄本明
:あつた美希
ライター:あつた美希/Miki Atsuta フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。
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