eHills Club 試写会日記

毎週、映画ファンの皆さんへ熱いメッセージ! 傑作でもB級でも映画ってやっぱり素敵!!

リスペクト

波乱と苦悩のなかシンガーとして大成した
“ソウルの女王”アレサの半生をJ・ハドソン主演で映画化
人種差別や女性への偏見に抗い、数々の名曲を贈る

リスペクト©2020 Metro-Goldwyn-Mayer Pictures Inc. All Rights Reserved

“ソウルの女王”アレサ・フランクリンの半生をもとに、生前にアレサ本人から指名された『ドリームガールズ』のジェニファー・ハドソン主演で描く注目作。共演は、『ラストキング・オブ・スコットランド』のフォレスト・ウィテカー、『G.I.ジョー』のマーロン・ウェイアンズ、R&Bシンガーのメアリー・J. ブライジほか。監督は演劇の世界で活躍し、本作が長編映画監督デビューとなる南アフリカ出身のリーズル・トミーが手がける。幼い頃から天才少女として歌の実力を認められていたアレサは、厳格な父の仕切りでプロのシンガーとして活動をスタートするが……。実母の早すぎる死、10代での出産、支配的な父親や夫との軋轢、歌手としてのオリジナリティの追求と成功、過密スケジュールでのなかアルコール中毒が悪化してゆく――という波乱万丈の半生を映してゆく。タイトルソングである「Respect」、さらに「(You Make Me Feel Like A) Natural Woman」「Think」など世界的なヒット曲の数々と共に、アフリカ系アメリカ人として女性としてパートナーや社会からの敬意を求め、自分らしく生きることを高らかに歌い上げるさまをパワフルに描く作品である。

1952年、アメリカのデトロイト。10歳のアレサは、説教師として有名な牧師の父が夜ごと自宅で開くパーティーや教会の礼拝で歌い、天才少女と呼ばれている。父と別居中の母とたまに会えることが楽しみだったが、母は心臓発作で急死してしまう。その後、アレサは父に言われるまま教会をまわるツアーで歌い、1961年に父が決めたコロンビア・レコードから念願の歌手デビューを果たす。しかしレコードを数枚だしてもまったくヒットしない状態が続く。ある日、アレサは以前に惹かれ合っていたが父の猛反対で疎遠になったテッドとニューヨークで再会。父の束縛から逃れたいこと、歌手として自分らしさを追求したいことから、父に「テッドをマネージャーにしたい」と訴えると、父は激怒して絶縁状態となる。1966年、アレサはテッドの尽力でアトランティック・レコードに移籍。しかしテッドは仕事関係者たちを相手に次々とトラブルを起こし、アレサにも暴力をふるうように。アレサはテッドとの間に生まれた息子と共に実家に戻り、父や姉妹、家族と再会し和解する。そんななか、アレサがゴスペル色を前面に押し出して歌った「I Never Loved A Man (The Way I Loved You)」、そして姉妹と一緒にカヴァーしたオーティス・レディングの「Respect」が大ヒットし、一躍スターダムに駆け上がってゆく。

ジェニファー・ハドソン,ほか© 2021 Metro-Goldwyn-Mayer Pictures Inc. All Rights Reserved.

ローリング・ストーン誌が選ぶ「史上最も偉大な100人のシンガー」の第1位に選出された伝説的なシンガー、アレサ・フランクリンの半生を、アカデミー賞とグラミー賞を受賞経験のあるミュージシャン、ジェニファーが演じる話題作。若い世代や音楽にそれほど興味のない人はアレサ本人のことを知らなくとも、アレサの歌はたくさんのアーティストたちがカヴァーしていたり映画やドラマやCMなどで使われてきたりした有名な楽曲が多いため、本作で流れる曲の半分くらいは聴いたことがあるはずだ。映画ではアレサの幼少期〜デビュー後の不遇の時代〜大スター〜アル中に苦しむ、という1950〜’70年代の時期の実話をもとに、彼女の生い立ちとスターとしての栄光と影を描いている。アレサ本人から彼女を演じることをオファーされたジェニファーは、アレサとの出会いのこと、アレサがジェニファーの実力をいち早く認めていたことについて、このように語っている。「2004年4月に『アメリカン・アイドル』から7位で脱落した後、アレサがインディアナ州のメリービルでショーを行っていると知って、彼女の前座を務めたいと思ったの。アレサは歌手の前座を許さず、コメディアンと回っていることは周知の事実だったけれど、彼女は私の前座を認めてくれた。それは彼女と共有した多くの瞬間と同様に、夢のようなことだった」

マーロン・ウェイアンズ,ジェニファー・ハドソン,ほか© 2020 Metro-Goldwyn-Mayer Pictures Inc. All Rights Reserved

アレサ・フランクリン役はジェニファー・ハドソンが、父や夫、姉妹との関係や、歌手としての個性を追求してゆく姿を熱演。牧師であり説教師として有名なアレサの父親C.L.フランクリン役はフォレスト・ウィテカーが、アレサの夫となるテッド・ホワイト役はマーロン・ウェイアンズが、アレサの母親バーバラ・フランクリン役はオードラ・マクドナルドが、アレサの父と交流のあった人気歌手ダイナ・ワシントン役はメアリー・J. ブライジが、プロデューサーのジェリー・ウェクスラー役はマーク・マロンが、父やアレサと交流のある牧師ジェームズ・クリーヴランド師役はタイタス・バージェスが、アレサの妹キャロリン役はヘイリー・キルゴアが、アレサの姉アーマ役はセイコン・セングローが、ゴスペル歌手のクララ・ウォード役はヘザー・ヘッドリーが、幼少期のアレサ役はスカイ・ダコタ・ターナーが、それぞれに演じている。
 ジェニファーはアレサを演じることは自身の夢だったとコメント。そして、『ドリームガールズ』で第79回アカデミー賞にて助演女優賞を受賞後、アレサ本人と会って話をした時のことについて、ジェニファーはこのように語っている。「私がオスカーを受賞した直後、アレサは私に会いたがっていた。ニューヨークにいた時、15年以上も前のことね。私たちは本当に長い間、じっくりと私が彼女を演じることについて話したの。彼女は私がとても控えめだと言い、『あなたは恥ずかしがり屋なの?』と聞いてきた。『私の目の前の話し相手は、アレサ・フランクリンさんなんですよ!』と答えたのを覚えているわ。『ドリームガールズ』を観て、私が若き日のアレサを彷彿とさせると言う人がいた。今となっては、運命的なものだったのかもしれない」
 ジェニファーの起用を心から喜んだというアレサの姪サブリナ・ギャレット・オーウェンズは、アレサとジェニファーに共通する声の特性について語る。「アレサがジェニファーを選んだのは、自分と共通点があったからよ。2人とも教会で育ったから、声にゴスペルのサウンドがあり、広い声域を持っている」

映画で描く時期を、製作スタッフがアレサの幼少期と’60〜’70年代を中心にしたことについて、アレサの姪のオーウェンズは、「本当に良い時期」として、このように語っている。「アレサは(歌手として)素晴らしい人生を送り、約50年も歌い続けた。彼女の物語を2時間で語るのが不可能なことは誰もがわかっている。だからこそ、ある特定の時代に焦点を当て、その瞬間を捉える必要がある。彼女が最高の状態にあった’60年代と’70年代は、彼女の人生の中で最もドラマティックで非常に重要な時期だと思う」
 全米で公民権運動が展開していたこの時期、アレサはその指導者マーティン・ルーサー・キング・ジュニアと交流があった。劇中では、公民権運動に関わり、暗殺されたキング牧師の葬儀で「Precious Memories」を歌ったシーンも。そして弾圧や暗殺の危険があると知りながらも、ブラックパワーの活動家アンジェラ・デイヴィスを支持するアレサの姿も映している。トミー監督はアレサの思想や行動力を映画で描いた理由について語る。「自分自身と次の世代のために戦うことの重要さを、今の時代だからこそ示したかった。これらのエピソードは不可欠だったの」

ジェニファー・ハドソン,メアリー・J.ブライジ© 2020 Metro-Goldwyn-Mayer Pictures Inc. All Rights Reserved

映画ではアレサのヒット曲の数々をジェニファーが熱唱。なかでも、売れない新人歌手から人気シンガーへの転換となった「I Never Loved A Man (The Way I Loved You)」、アフリカ系の人々への、女性への敬意を高らかに歌う「Respect」、近年ではホイットニー・ヒューストンや本作に出演しているメアリー・J.ブライジがカヴァーした「(You Make Me Feel Like A) Natural Woman」、DV夫への痛烈なメッセージのみならず、アフリカ系への差別や弾圧に対する強い抗議をも感じさせる「Think」、1972年に収録された映像をライヴ・ドキュメンタリーとして2021年5月に日本で公開した『アメイジング・グレイス/アレサ・フランクリン』のタイトル曲にもなった讃美歌「Amazing Grace」などが印象的だ。1950〜’70年代の時代背景のなか、アレサの歌が当時の公民権運動や女性解放運動へのサポートソングとなり、現代のフェミニズムやLGBTQ、#MeToo運動につながってゆく流れの源流にあったことが示されている。また本作のサウンドトラックには、アレサのカヴァーに加え、ジェニファーのソウルフルなオリジナル曲「Here I Am (Singing My Way Home)」も収録されている。
 アレサ・フランクリンは、グラミー賞を合計20回受賞、2005年にはアメリカで民間人に贈られる最高賞のひとつである大統領自由勲章を受賞、ライヴ活動などを積極的に行い、2018年に膵臓がんにより76歳で死去した。

アレサの歌声には不思議な魅力がある。特に1960〜’70年代の絶頂期の頃、『アメイジング・グレイス/アレサ・フランクリン』を観た時にも改めて思ったのは、ソウルフルであっても強烈なメッセージ性がある曲でも、どこか大きく包み込むような懐の深さや優しさを感じさせるのだ。「Respect」「Think」を歌っていた頃、アレサは20代半ばだったことを考えると、改めて彼女のスケールの大きさに驚く。この映画で圧倒的な歌唱力と迫力あるライヴパフォーマンスで引きつける、ジェニファー演じるアレサをみて興味をもったら、動画サイトで上がっている’60〜’70年代頃のアレサの映像や(ライヴがおすすめ!)、本作の公開日である2021年11月5日にDVDリリースとなる前述のライヴ・ドキュメンタリーを観てみるのも楽しいだろう。最後に、アレサ本人が生前に語ったメッセージをご紹介する。
 「自分自身のアーティストであれ。そして自分のやっていることに常に自信を持て」

2021年10月22日更新

作品データ

公開 2021年11月5日よりTOHO シネマズ 日比谷ほかにて全国ロードショー
制作年/制作国 2021年 アメリカ
上映時間 2:26
配給 ギャガ
原題 RESPECT
監督 リーズル・トミー
出演 ジェニファー・ハドソン
フォレスト・ウィテカー
マーロン・ウェイアンズ
メアリー・J.ブライジ
:あつた美希
ライター:あつた美希/Miki Atsuta フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。