陰陽師0

夢枕獏の全面協力で佐藤嗣麻子監督が映画化
若き日の安倍晴明と源博雅の出会いを描く
呪術の怪異、友情や恋を描くエンタメ作

  • 2024/04/03
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陰陽師0© 2024映画「陰陽師0」製作委員会

原作者・夢枕獏の全面協力のもと、『アンフェア』シリーズの佐藤嗣麻子が脚本・監督を手がけて映画化。出演は、『ゴールデンカムイ』の山﨑賢人、『空海-KU-KAI- 美しき王妃の謎』の染谷将太、『スイート・マイホーム』の奈緒、『ザ・ファブル 殺さない殺し屋』の安藤政信、『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 運命-/-決戦-』の村上虹郎、『劇場版 世界が終わる日に FINAL』の板垣李光人、『騙し絵の牙』の國村隼、『カラオケ行こ!』の北村一輝、『Dr.コトー診療所』シリーズの小林薫ほか豪華な俳優陣が顔を揃える。平安時代、呪術の才に長けた学生・安倍晴明は、貴族の源博雅から「ある怪異を鎮めてほしい」と頼まれるが……。世界遺産の仁和寺をはじめ日本各地で大規模な撮影を行い、呪術や念をめぐる怪異の顛末を最新のVFXで表現。安倍晴明が陰陽師になる前の知られざる学生時代を描く完全オリジナルストーリーであり、アクションやスペクタクル、ラブストーリーなどが展開する鮮やかなエンターテインメント大作である。

平安時代の京都。呪いや祟りから都を守る陰陽師の学校であり省庁である陰陽寮の学生・安倍晴明は、呪術の天才ながらも陰陽師に興味を示さず、友人ももたず、周囲と距離をおいて過ごしている。ある日晴明は、貴族の源博雅から皇族の徽子女王(よしこじょおう)を襲う怪奇現象の解決を頼まれる。衝突しながらも真相を追う晴明と博雅だったが、ある学生の変死をきっかけに、平安京をも巻き込む凶悪な陰謀と呪いに巻き込まれてゆく。

山#64017;賢人,染谷将太

“安倍晴明生誕1100年”を記念し、原作者・夢枕獏の協力のもとで佐藤嗣麻子監督が映画化。平安時代に実在した“最強の呪術師”安倍晴明の活躍を描く原作の小説『陰陽師』(1~18巻)はシリーズ累計発行部数680万部を超えるアジアやヨーロッパなど世界的に人気の高い作品であり、1988年の刊行から現在まで定期的に新刊が発表されている。佐藤嗣麻子監督は「40年以上夢枕獏さんのファンで、35年以上陰陽師のファン」と話し、実際に19歳の頃から夢枕氏のファンの集いに参加していたという。夢枕氏は佐藤監督との長年の親交と今回の映画化について語る。「佐藤嗣麻子監督とは、彼女がまだ十代の頃からの知りあいで、まだアマチュアの頃から、『いつかオレの『陰陽師』を映画にしてよ』と言っていたのだが、様々な事情で、実現まで四〇年近くかかってしまったことになる。今思えば、この四〇年は、必要な時間であったと、完成映画を観て心の底から思っている」
 この映画は夢枕氏の『陰陽師』の世界観をベースにした佐藤監督の脚本によるオリジナルストーリーであり、原作の安倍晴明は40歳前後だが、この映画では27歳で原作にはない晴明と博雅の出会いを描いている。その理由について監督は、自分が2人の出会いを見てみたいという思いがあったとコメント。そして原作と原作者や読者への思いについて、『陰陽師0』を撮影した京都の仁和寺での2024年2月のイベントにてこのように語った。「まずは獏さん、そして獏さんのファンを喜ばせたいという気持ちでした。原作から外れないように意識しました。作品を見て、獏さんが泣いてくださったので、すごく嬉しかったです」
 そして夢枕氏は監督との対談でこのように語っている。「『陰陽師0』を観ながらずっと、『新しい安倍晴明ができあがっていくんだな』と感じていました。これまでの晴明とはかなり違う晴明が生まれたと思いますね。<中略>博雅と晴明の関係性がここから生まれたという意味でもよくできていると思いました。事前に脚本を読んだ時は小説のように読んだので、佐藤監督には『青春物語としていい出来だと思います』という感想を送りましたが、書いた本人の頭の中には映像がすでにできていたんでしょうね」

“呪術の天才”と呼ばれ、陰陽師になるために学ぶ陰陽寮の学生でありながら、陰陽師に興味を示さない変わり者・安倍晴明役は山﨑賢人が、風変わりな天才肌の人物として。醍醐天皇の孫で中務大輔であり、雅楽家としても高名な源博雅役は染谷将太が、純朴な心根に晴明も徐々に信頼を寄せるようになる存在として。山﨑と染谷は“最高のバディ”を表現するため、本読みやリハーサルや乗馬練習など長い時間行動を共にし、関係性を深めていったという。そして夢枕氏は2人のバディぶりに感動したと語る。「山﨑さんの晴明、染谷さんの博雅、ともにぼくが想定していたよりも、ステージが遥かに上の仕あがりで、脚本も読んでいるのに、ストーリーもわかっているのに、数度落涙。晴明よし、博雅よし。素晴らしい映画になったと思う」
 怪異に惑わされる皇族の徽子女王役は奈緒が、農家に生まれてひたすらに出世を目指す陰陽寮の学生・平郡貞文役は安藤政信が、陰陽師たちを束ねる陰陽頭・藤原義輔役は小林薫が、陰陽寮で学生たちを指導する天文博士・惟宗是邦役は北村一輝が、幼い頃に両親を失った晴明を育て、学生たちに陰陽道を説く陰陽博士・賀茂忠行役は國村隼が、陰陽寮の学生であり成績優秀な得業生として学生たちの上に立つ橘泰家役は村上虹郎が、醍醐天皇の第14皇子であり博雅の従兄弟である帝・村上天皇役は板垣李光人が、それぞれに演じている。また1988年に公開された映画『帝都物語』にて陰陽道に精通し呪術をあやつる加藤保憲役を演じた嶋田久作が暦博士役で出演していることについて、佐藤監督は「嶋田さんの陰陽師をまた見たかったファンとして、監督特権でお願いしました」とコメントしている。
 また主題歌としてBUMP OF CHICKENが新曲「邂逅」を提供している。

奈緒

撮影は安倍晴明と縁のある京都の仁和寺や大覚寺をはじめ、奈良の平城宮跡や浮見堂、琵琶湖、えさし藤原の郷・清衡館など京都、奈良、岩手、静岡、千葉など各地で大規模なロケを実施。世界遺産である仁和寺では国宝阿弥陀三尊のある金堂での撮影が許可され、劇中に登場している。仁和寺での撮影について佐藤監督は、「天皇家に代々縁のあるお寺で、晴明が教えを請いに行った人物が実際にいた場所とされている場所だったので採用しました」と語っている。
 また呪術によって顕現する、火龍と水龍の激突など“呪術エンターテイメント”としてVFXによる映像も迫力だ。こうしたVFXは佐藤監督の夫・山崎貴監督の『ゴジラ-1.0』で第96回米アカデミー賞の視覚効果賞を受賞した白組が担当。劇中では、晴明が繰り返し見る夢や博雅と徹子の花が咲く空間、そして金や火や水の龍など異世界さながらのファンタジックな映像や風景がダイナミックに展開。そうした映像のなかでも、雲中菩薩が現れるシーンや口から呪文がでてくるところは、夢枕氏のリクエストにより決まったとも。
 そしてこの映画では、陰陽師の基本である陰陽五行の解説が、陰陽寮における学生への指導としてとてもわかりやすくなされているのが面白い。こうしたことに興味のある海外の映画ファンにも伝わりやすいのではないだろうか。筆者はもともと風水や奇門遁甲に興味があり五行をなんとなく知っているなか、劇中の説明の明快さにちょっと感動した。この映画を観る際に、木火土金水の五行の関係性や、その成長を促す「相生」と勢いを減じる「相剋」などのあたりがなんとなくでもわかると、ストーリーをより楽しめる感覚が深まるかもしれない。
 劇中で陰陽師たちが放つ呪術の監修は、『呪術廻戦』に登場するキャラクターや呪術について、実在した呪術の歴史から独自に考察した『呪術の日本史』監修の加門七海が担当。呪文や呪符、手印などもこだわりのもとでしかと作り込まれ、「(実際に呪いが発動するなど)万が一のことが起こらないよう、あえてフェイクを加えている(加門氏)」というのも興味深い。映画のパンフレットには呪術と関連することについて加門氏の解説があるので、気になるなら読んでみるのも楽しいだろう。夢枕氏もこうして作り込まれた内容について喜び、「呪(しゅ)、呪術について、ここまで作り込まれた映画は、他にないのではないか。生きていてよかった。感謝、感謝、感謝である」とコメントしている。
 そして劇中の晴明の衣装である青い狩衣には、晴明と縁のある高野山・奥之院の霊木から作った生地を用いている、という細部までのこだわりも (自然災害で倒れた霊木を使用)。

國村隼,北村一輝,小林薫,嶋田久作,ほか

30年以上に渡り刊行されている夢枕氏の陰陽師・安倍晴明の原作をもとに、並々ならぬ思い入れのある佐藤監督が、豪華なキャストを迎えて長年の夢を実現させた作品。山﨑賢人主演というと派手なアクションがメインかと予想する向きもあるだろうが、実際にはそれよりも陰陽道にまつわる怪異、友情や恋などがしっかりと描かれ、原作の世界観が尊重されていることがよくわかる。野村萬斎主演による2001年の映画『陰陽師』などこれまでにも安倍晴明を描く魅力ある作品はさまざまにあるなか、この映画では物語と呪術にまつわるさまざまなことを作り込み、これまでの原作ファンも予備知識なしの若い世代や海外の映画ファンも大勢が楽しめるような新たな『陰陽師』を打ち出すことに成功している。山﨑と染谷が若いため、彼らによる晴明&博雅のバディによる『陰陽師』はこれからシリーズとして長く続いていくことになりそうだ。最後に、山﨑、佐藤監督、夢枕氏からのメッセージをご紹介する。
 山﨑「原作者である夢枕獏さんが描いた晴明と博雅の関係性を染谷くんと作り上げられて嬉しかったです。2人の関係は客観的に見て本当に愛おしい! 新しい陰陽師、安倍晴明を嗣麻子監督と話しあいながら作り上げられて最高でした! 陰陽師を最高のエンターテイメントとして表現することができて良かったです。1000年以上前の日本が舞台ですが現代にも通ずるものが沢山あります。情報で溢れかえっていて、何を信じたら良いか分からない今だからこそ観て欲しい作品です!」
 佐藤監督「『映像化するなら是非脚本・監督を』という願いを、長い年月を経てやっと叶えることが出来ました。この映画の為に乗馬、装束の着付け、ナチュラルガーデニングなどを習って準備をしてきました。呪術監修に呪術界の第一人者・加門七海さんをお迎えするのも念頭でした。ようやく『陰陽師』として、完成させて皆さんにお見せできることをとても光栄に思っています。夢枕獏さんの『陰陽師』の呪と呪術の世界を楽しんでいただけたら幸いです」
 夢枕獏「原作者として、実にありがたい映像化となりました。『陰陽師0』は心の底から、本当に感動したと言える作品でした。佐藤嗣麻子監督とスタッフの皆さんが心血を注ぐ姿を見て感じていたのは、新しい安倍晴明が誕生するんだなということでした。晴明が晴明たる世界観、“呪”の表現、呪術の演出、すべてが素晴らしくきちんとしていながら、珠玉の青春物語でもあり、晴明と博雅の関係性には本当に涙してしまいました。ご覧いただければ二人の関係はここから出来上がったのかとわかると思います。陰陽師ファンの皆様も、どれだけ楽しみにしていただいても大丈夫です。ぜひご期待ください」

作品データ

公開 2024年4月19日より全国ロードショー
制作年/制作国 2024年 日本
上映時間 1:53
配給 ワーナー・ブラザース映画
原作 夢枕獏「陰陽師」シリーズ(文藝春秋)
脚本・監督 佐藤嗣麻子
音楽 佐藤直紀
出演 山﨑賢人
染谷将太
奈緒
安藤政信
村上虹郎
板垣李光人
國村隼
北村一輝
小林薫
:あつた美希
ライター:あつた美希/Miki Atsuta フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。
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