東北へのまなざし1930-1945

タウト、柳宗悦、ぺリアン、今和次郎らが見つめた豊かな文化の揺籃
東北の魅力を再発見する巡回展

  • 2022/07/01
  • イベント
  • アート

日本が戦争の道を歩んでいった1930年代から1945年にかけ、東北を訪れ、この地の文化や人々の暮らしに注目したブルーノ・タウトや柳宗悦らの「眼」を通じて、東北文化の魅力を改めて検証する展覧会が岩手、福島を巡回し、東京ステーションギャラリーで開催中。

1930年代以降の日本は、太平洋戦争へと傾斜を深める一方で、写真などのグラフィカルな視覚文化が到来し、建築や生活文化が変貌するなど、モダンとクラシック、都会と地方の両極で揺れ動いた時期でもあった。そしてこの頃、先端的な意識をもった人々が相次ぎ東北地方を訪れ、この地の建築や生活用品に注目する。
 1933年に来日し、仙台で工芸指導をおこなったドイツ人建築家で都市計画の権威、ブルーノ・タウト、「民藝」の提唱者で、東北を「民藝の宝庫」と呼んだ柳宗悦、1940年、商工省に招聘されたフランス人デザイナーで山形の自然素材を調査したシャルロット・ペリアンらがその一例である。昭和に入るとさらに、青森で「考現学」を実践した今和次郎と今純三や、農村漁村の情景を記録した福島の画家・吉井忠といった東北出身者たちも、故郷の人々と暮らしを見つめ直し、戦中期の貴重な記録を残している。

本展は5つの章立てで展開される。1章では、ブルーノ・タウトの秋田の旅を年表形式で追うとともに、仙台や高崎でデザインした工芸品や遺品となった日記、アルバム、原稿などを展示し、東北での足跡を辿る。2章においては、柳宗悦が東北各地で収集した蓑(みの)、刺子、陶芸などの品々と併せて同人、芹沢_介や棟方志功の作品を展観。
 続いて、東北各地のこけしを系統別に展示し、郷土玩具の世界を紹介する3章、農林省が設置した積雪地方農村経済調査所(雪調)の活動を追う4章も本展のみどころの一つである。
 また、5章では、知的でユーモラスな今和次郎・純三兄弟のスケッチで浮かび上がる、東北の暮らしの風景を紹介。6章では、東北の生活文化を丹念に描いた吉井忠のスケッチ類を展示する。
 駅舎の構造を露わにしたレンガ壁の展示室などの雰囲気が、これら展示品の魅力をより深めるものとなっている。

東北に向けられた複層的な「眼」を通して、当時、後進的な周縁とみなされてきた東北地方が、じつは豊かな文化の揺籃であり、そこに生きる人々の営為が、現在と地続きであることを改めて検証できる貴重な機会となるだろう。

  1. 芹沢_介 《日本民藝地図(現在之日本民藝)》 部分 1941 年、日本民藝館
  2. ブルーノ・タウト(原型指導)《椅子(規範原型 タイプC)》 1933 年原型指導、仙台市博物館
  3. 《こけし(木地山系)》 1925-41年頃、原郷のこけし群 西田記念館
  4. 今純三《今和次郎宛考現学調査ハガキ 自宅アトリエノ窓外風景》 1931年、工学院大学図書館
  1. 芹沢_介 《日本民藝地図(現在之日本民藝)》 部分 1941年、日本民藝館
  2. ブルーノ・タウト(原型指導)《椅子(規範原型 タイプC)》 1933年原型指導、仙台市博物館
  3. 《こけし(木地山系)》 1925-41年頃、原郷のこけし群 西田記念館
  4. 今純三《今和次郎宛考現学調査ハガキ 自宅アトリエノ窓外風景》 1931年、工学院大学図書館

開催概要

展覧会名 東北へのまなざし1930-1945
会期 2022年7月23日(土)〜9月25日(日)
※会期中、一部展示替えあり
前期:7月23日(土)〜8月21日(日)
後期:8月23日(火)〜9月25日(日)
休館日 月曜日(ただし8月15日、9月19日は開館)
時間 10:00〜18:00
※金曜日は20:00まで
※入館は閉館時間の30分前まで
会場 東京ステーションギャラリー
千代田区丸の内1-9-1
入館料 一般 1,400円、高大生 1,200円、中学生以下無料
※詳細はこちらをご確認ください
公式サイト https://www.ejrcf.or.jp/gallery/
問合せ 03-3212-2485

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