腐敗と再生産の網目に生きる
建築設計や論考執筆に加え、国内外の大学を拠点に、建築・都市・生態系のリサーチを続ける建築家、能作文徳と常山未央の展覧会が開催。
現代都市と生態系をテーマに、批評的な建築実践を行う能作と常山。主な作品に「西大井のあな」(東京都)、「不動前ハウス」(東京都)、「明野の高床」(山梨県)、「杭とトンガリ」(東京都)、「氷見移住ヴィレッジ」(富山県)などがある。主な受賞に、2016年ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展日本館展示 特別表彰など。
彼らは都市を、「人間の手が入った多様な生物が暮らす居住域」だという。課題を抱える現代の都市の一部を分解し、その養分を吸収し、菌(きのこ)のように成長する。そんな腐敗と再生の網目の結節点として建築を捉え、野生や伝統知を手に、網目に切り込みを入れつなぎ直すことにより、複数種のネットワークを構築しようとしている。
1階から4階を貫く採光の「あな」が特徴的な「西大井のあな」は、1階を事務所、2階を民泊、3〜4階を自宅として使う彼らの拠点でもある。鉄骨造の中古住宅に光と熱が循環する孔を開け、コンクリートで覆われた外構を自分達の手ではつり、土中改善を行うなど、エコロジカルな視点で改修している。そこは他で得た学びを実験し、次のプロジェクトへと展開させる実践の場ともなっている。彼らが「URBAN WILD ECOLOGY」と呼ぶ、こうした都市の中に野生を取り戻す取り組みに加え、近年では石場建てや木組などの伝統知、藁や土壁といった土に還る素材を積極的に設計に取り入れている。
本展3FのGALLERY1では、「西大井のあな」の記録やさらなる改修案を紹介。中庭では、学生たちと制作した「伝統構法のタイニーハウス」を展示。土の生産力を示すため、土とそこに植えた野菜、そして太陽の力を示すため、ソーラーパネルで蓄電したエネルギーを使用するシステムを併せて紹介する。
4FのGALLERY2では、ヴェネチア・ビエンナーレで展示した「高岡のゲストハウス」(富山県)や最新作「秋谷スマートハウス」(神奈川県)をはじめとする、全プロジェクトの図面や写真、模型などを展観する。
本展で示されるのは、都市の腐敗と再生産の網目をつなぎ直すために誰もが真似できる小さな試行錯誤を共有する試みだ。その先に、人新世と呼ばれる時代における建築の可能性やビジョンを感じ取ることができるかもしれない。
展覧会名 | 能作文徳+常山未央展:都市菌(としきのこ)──複数種の網目としての建築 |
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会期 | 2024年1月18日(木)〜3月24日(日) |
休館日 | 月曜日、祝日(ただし2月11日は開館) |
時間 | 11:00〜18:00 |
会場 | TOTOギャラリー・間 港区南青山1-24-3 TOTO乃木坂ビル3F |
入館料 | 無料 |
公式サイト | https://jp.toto.com/gallerma |
問合せ | 03-3402-1010 |
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