日本人画家が描いた日本の山と海の絵を志賀重昴の流麗な文章とともに紹介
古くから信仰の対象とされてきた山や海は、身近で特別な存在である。また芸術家たちにとって、自然の造形は恰好の題材であり、多種多様な作品が生み出されてきた。本展では日本人画家が描いた日本の山と海の絵を地理学者・志賀重昂の流麗な文章とともに紹介する。
近代化が進んだ明治時代には現代の登山スタイル、いわゆる西洋式登山が輸入され、信仰や生活のためではなく、調査研究やレジャーとして山に登る人が出てきた。そのような時代背景のなか、1894年には地理学者の志賀重昂(1863〜1927年)による『日本風景論』が出版される。本書はベストセラーとなり、日本人の景観意識に変革が起こり、芸術家にも影響を与えた。
志賀が『日本風景論』で「『名山』中の最『名山』を富士山となす」と表し、日本のシンボルとして規定したのが富士山だった。
富士山は近代において、宗教的な崇敬対象に加え、大日本帝国の国威発揚のシンボルとしさまざまなものに表されてきたが、第二次世界大戦後には、神国日本の象徴から離れ、平和の象徴や日本人の心の拠りどころへと変化する。戦後の画家たちにとっては、既成概念を崩し独自の芸術を立脚させるために登攀せねばならぬ日本一の山として、今も山岳絵画の中心にそびえ立っている。
本展では、狩野常信(1636〜1713年)、橋本雅邦(1835〜1908年)、下村観山(1873〜1930年)、横山操(1920〜1973年)、小松均(1902〜1989年)などによる、江戸時代から昭和時代にかけて描かれた9点の富士の絵を展観する。
また、近代日本画の双璧とされる横山大観(1868〜1958年)と竹内栖鳳(1864〜1942年)だが、寺崎廣業(1866〜1919年)も日本画壇を牽引し日本画の近代化に貢献したひとり。本展では、淡彩により際立つ青空のような群青の海と、象徴的に配された松林や苫屋が日本人の郷愁を誘う栖鳳の海景画《晴海》、廣業の写生と装飾性が調和した風景画の優品《春海雪中松図》なども紹介する。
日本人が描く日本の自然美をあらためて、ゆっくり堪能したい。
展覧会名 | 日本の山海 |
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会期 | 2024年2月27日(火)〜6月2日(日) ※会期中、一部展示替えあり 前期:2月27日(火)〜4月14日(日) 後期:4月16日(火)〜6月2日(日) |
休館日 | 月曜日(ただし祝日の場合は開館、翌平日休館) |
時間 | 10:00〜17:00(第1金曜日は19:00まで) ※入館は各閉館時間の30分前まで |
会場 | 松岡美術館 港区白金台 5-12-6 |
観覧料 | 一般 1,200円、25歳以下 500円、高校生以下無料 |
公式サイト | https://www.matsuoka-museum.jp/ |
問合せ | 03-5449-0251 |
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