走泥社再考 前衛陶芸が生まれた時代

前衛性が特に認められる活動期を中心に32名の制作を展観

  • 2024/03/29
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前衛陶芸家集団として戦後日本の陶芸を牽引した走泥社そうでいしゃの活動を検証する展覧会。

中国の均窯の釉にみられ、ミミズが泥を這ったような文様が特徴の「蚯蚓走泥文きゅういんそうでいもん」が名前の由来という「走泥社」は1948年に京都の陶芸家、八木一夫、叶哲夫、山田光、松井美介、鈴木治の5人で結成された。同人は入れ替わりながらも陶芸家に限らない多様な人材が集まり、1998年に解散するまで50年にわたり活動を続けてきた。いわゆる実用的な器ではなく、立体造形として芸術性を追求した「オブジェ焼」と呼ばれる陶芸作品を創り出し、その視点を日本の陶芸に根付かせたことは走泥社の功績といえる。

走泥社の前衛性は特に活動期間の前半に認められることから、本展では結成25周年となる1973年までに焦点をあて、25年の間に同人であった42名のうち作品が残る32名の制作を通し、走泥社の活動を展観する。

3章から成る本展では、1章と2章を前期、3章を後期として会期中に展示替えが行われる。
 前期1章では、器の形態を立体造形として自立させようと模索する走泥社最初期の作品を紹介。中国や朝鮮半島の陶磁器にもとづく様式や技術を基盤にしつつ、陶芸界の伝統的な規範から離れ、絵画的な文様表現で自身の抱くイメージを現し、または、陶磁器が持つ造形上の要素を現代の造形に昇華させようとした点に走泥社の前衛意識が窺える。
 2章では、走泥社以外の有力な陶芸家たちが同人として合流し、前衛陶芸家たちが作者の内面性を表現する陶芸の在り方に創作の可能性を見出していった時期の作品を紹介する。多様性ある前衛陶芸家集団として走泥社の骨格が定まっていった時期の作品である。

後期3章では、1964年に開催された「現代国際陶芸展」など、海外の制作が盛んに紹介される中、草創期からのメンバーと次世代の若手作家とが併存し、多様な造形表現が為されるようになった充実期の作品を紹介。自己の創作を検証することで、心象風景の表象として始まった陶のオブジェが、前衛性を求めるだけでなく個々人の造形表現としての成熟へと向かっていくまでの過程を鑑賞できる。

その他の作品や資料等により同時期に展開された他の前衛陶芸活動や日本の陶芸に影響を与えた海外の制作を、その比較も交えて紹介する本展は、前衛陶芸が生まれた時代を総覧できる貴重な機会となるだろう。

  1. 八木一夫 《白い箱OPEN OPEN》 1971年 京都国立近代美術館
    八木一夫 《白い箱OPEN OPEN》
    1971年 京都国立近代美術館
  2. 鈴木治 《ロンド》 1950年 華道家元池坊総務所
    鈴木治 《ロンド》
    1950年 華道家元池坊総務所
  3. 山田光 《二つの塔》 1959年 和歌山県立近代美術館
    山田光 《二つの塔》
    1959年 和歌山県立近代美術館
  4. 山田光 《1の周辺》 1976年 岐阜県現代陶芸美術館
    山田光 《1の周辺》
    1976年 岐阜県現代陶芸美術館
  5. 宮永理吉 《パイプ》 1972年 広島県立美術館
    宮永理吉 《パイプ》
    1972年 広島県立美術館
  6. 三輪龍作(龍氣生/十二代休雪) 《愛の為に》 1968年 国立工芸館
    三輪龍作(龍氣生/十二代休雪) 《愛の為に》
    1968年 国立工芸館

開催概要

展覧会名 走泥社再考 前衛陶芸が生まれた時代
会期 2024年4月20日(土)〜9月1日(日)
※前後期、各期内で展示替えあり
前期:4月20日(土)〜6月23日(日)
後期:7月5日(金)〜9月1日(日)
休館日 月曜日(ただし4月29日、5月6日、7月15日、8月12日は開館)、4月30日(火)、5月7日(火)、5月27日(月)〜5月30日(木)、6月24日(月)〜7月4日(木)、7月16日(火)、7月29日(月)〜8月1日(木)、8月13日(火)
時間 11:00〜18:00
※入館は閉館時間の30分前まで
会場 菊池寛実記念 智美術館
港区虎ノ門4-1-35 西久保ビル
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入館料 一般 1,100円、大学生 800円、小中高生 500円
公式サイト https://www.musee-tomo.or.jp/
問合せ 03-5733-5131

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