陶芸と彫刻の間の表現で、新風を吹き込んだ二人の陶芸家
戦後まもなく、京都の東山で用途を持たない彫刻的な陶芸を生み出した八木一夫。名古屋出身ながら江戸時代から続く清水六兵衞家の養嗣子となって、デザインの要素をもった造形作品を手掛けた清水九兵衞。2人の前衛陶芸家の作品を展観し、現代陶芸へのつながりを辿る企画展です。
戦後の復興期に当たる1950年代、戦前の体制や美意識を排して新しい時代に合うものが求められ、多様な分野で新しい表現が試みられました。陶芸におけるオブジェを牽引した走泥社は1948年に発足、中心的役割を果たしたのが八木一夫です。ろくろで成形して内側の空洞を創り上げることで形作られる作品は、新しいものと古典との融合を目指したもの。自身のリアリティを追求するうちに、立体造形が作り出され、膨らみや凹み、ヒダなどの土の表情が、心情や思想などを暗示するようになります。
一方、名古屋高等工業学校で建築を学んだ清水九兵衞は、東京藝術大学工芸科鋳金部に在籍していた1951年、ガラスや家具デザイン、染織などの分野で活躍する作家らと新工芸協会を結成。モダンリビングに会うインテリアや器物の展覧会を銀座で開催するなど、デザイン的な思考で作品に取り組みました。土の塊、量、質感、曲線美など、材料とフォルムの関係が実験的に追及され、文様とフォルムの関係もデザインの側面から捉えています。しかし、土とデザインの相性に疑問を持つようになり、1960年代後半には、金属の彫刻でフォルムを追求し、1980年に六代六兵衞の逝去で七代目を襲名するまで、陶芸から離れました。
本展では、現代陶芸の多様化に対してルーツを再訪する意味を含め、展覧会名を「陶芸と彫刻のあいだで」という身近な言葉で表現。2人それぞれの背景の違いから、実用と表現、土とフォルムへの取り組み方が異なるものの、新しい表現領域を見出した作品として比較や共通点を展観します。八木の作品からは陶芸の伝統を、清水の作品からはデザインへの関心が現代の作家に受け継がれている流れが感じられるのも見所です。急激に社会が発展していった時代、自由さと斬新さで創作を重ねた2人の作品を通して、現代にも通じる創造性を再認識できます。
展覧会名 | 八木一夫と清水九兵衞 ―陶芸と彫刻のあいだで |
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会期 | 2017年9月16日(土) 〜 12月3日(日) |
休館日 | 月曜日(ただし9月18日、10月9日は開館)、9月19日(火)、10月10日(火) |
時間 | 11:00〜18:00 ※入館は閉館時間の30分前まで |
会場 | 菊池寛実記念 智美術館 港区虎ノ門4-1-35 西久保ビルB1F >> 会場の紹介記事はこちら |
入館料 | 一般 1,000円、大学生 800円、小中高生 500円 |
公式サイト | http://www.musee-tomo.or.jp/ |
問合せ | 03-5733-5131 |
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