猫好きの画家が描いた猫の魅力と画力に潜む奥深い世界
戦前にマティスと交流、戦後は20年間ニューヨークを拠点にし、その後ハワイでも活動した画家 猪熊弦一郎。無類の猫好きとして、スケッチから油彩画まで多く描いた猫の作品を足掛かりに、作風、技法、モチーフの組み合わせなど画力に潜む奥深い世界を覗く企画展です。
1902(明治35)年、香川県の高松市に生まれた猪熊は、1922(大正11)年に東京美術学校(後の東京藝術大学)に入学し、藤島武二に師事。1938〜40(昭和13〜15)年にフランスに滞在し、アンリ・マティスに学びます。1950(昭和25)年、三越の包装紙「華ひらく」をデザインし、翌年には国鉄上野駅(現JR上野駅)に大壁画《自由》を完成させました。1955(昭和30)年、再びパリへ向かう途中で立ち寄ったニューヨークに魅かれ、そのまま同地を拠点に約20年間活動。画風もそれまでの具象から抽象へと変化しました。1975(昭和50)年に帰国してからは、東京とハワイを行き来しながら制作を続け、1993(平成5)年、90歳で亡くなりました。
本展では、香川県丸亀市にある丸亀市猪熊弦一郎現代美術館所蔵の猫を描いた油彩、水彩、素描を中心に、猫以外を主題にした作品も若干加えた百数十点で構成。「いちどに1ダースの猫を飼っていた」と言われるほどたくさんの猫に囲まれた暮らしの中で、写実的であったり、デフォルメされていたり、輪郭だけを描いたシンプルなものであったりと、猫の魅力を享受して創作に挑戦したことをうかがわせる多様な描写が楽しめる点が特徴です。1949年10月4日の報知新聞で猪熊は、「今まで色々と沢山描かれている猫は、どうも自分には気に入らない。それで猫の形と色を今までの人のやらないやり方で描いてみたいと思った」と語っています。油彩画の《猫と食卓》、水彩とクレパスで描かれた《自転車と娘》、1950年代に版画で制作された作品など、作風、技法、モチーフの組み合わせ方といった異なる視点のユニークな猫たちが並びます。
猫好きには猫の画家として、アート好きには百花繚乱の昭和画壇で独自の境地を維持し、個性的な作品群を残した画家として、作品を深く展観できる企画展です。
展覧会名 | 「猪熊弦一郎展 猫たち」 |
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会期 | 2018年3月20日(火) 〜 4月18日(水) |
休館日 | 会期中無休 |
時間 | 10:00〜18:00(毎週金・土は21:00まで) ※入館は各閉館時間の30分前まで |
会場 | Bunkamura ザ・ミュージアム 渋谷区道玄坂2-24-1 |
入館料 | 一般 1,300円、高大生 900円、小中生 600円 |
公式サイト | https://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/18_inokuma/ |
問合せ | 03-5777-8600 (ハローダイヤル) |
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