イギリスが世界に誇る印象派・ポスト印象派の殿堂、コートールド美術館。マネ、ルノワール、セザンヌ、ゴーガンなど巨匠たちの代表作がズラリと並び、それらが貸し出されることは滅多にないが、今回は美術館の改修工事にあわせ多くの名作が来日する。

美術館の創設者サミュエル・コートールド（1876〜1947）はイギリスの実業家で、卓越した審美眼を持つコレクターでもあった。フランス近代絵画の魅力を母国に伝えたいと、1920年代を中心に精力的な収集を行い、1932年、ロンドン大学に美術研究所が創設されることが決まると、コレクションを寄贈。研究所はコートールド美術研究所と名付けられ、その展示施設としてコートールド美術館が誕生した。本展では、その研究機関という側面にも注目し、美術史研究や科学的調査の成果を取り入れながら、選りすぐりの絵画・彫刻約60点を読み解いていく。

大きな見どころの一つは、印象派の父エドゥアール・マネの人生最後の大作《フォリー=ベルジェールのバー》の約20年ぶりの来日。主人公の女性の謎めいた表情、鏡に映る人物の不思議、卓上のガラスの蠱惑（こわく）的なきらめき…人々を魅了してやまない傑作中の傑作をぜひ間近で堪能したい。
 また、ルノワール、セザンヌ、ゴーガンら巨匠たちの有名作品も勢ぞろい。ルノワールが第一回印象派展に出品した記念碑的作品《桟敷席》、セザンヌの《カード遊びをする人々》、ゴーガンの《ネヴァーモア》をはじめ、ドガ、トゥールーズ=ロートレックら画集に欠かせない作品が目白押し。中でも英国一のセザンヌの油彩10点は必見だ。

また本展では、“名画を読み解く”鑑賞法を提案。画家の語った言葉、時代背景、そして科学的な研究の成果から作品を深掘りし、より深い対話を生み出そうと試みる。画家たちはどのような思いで風景を見つめ、何を考えながら筆をとったのか。また、どのような素材・技法で作品を生み出したのか。美術研究所ならではの視点とアプローチが活きた、見応えのある名画展となりそうだ。

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1. エドゥアール・マネ《フォリー=ベルジェールのバー》1882年　油彩、カンヴァス　96×130cm
2. ピエール=オーギュスト・ルノワール《桟敷席》1874年　油彩、カンヴァス　80×63.5cm
3. エドガー・ドガ《舞台上の二人の踊り子》1874年　油彩、カンヴァス　61.5×46cm
   
4. クロード・モネ《アンティーブ》1888年　油彩、カンヴァス　65.5×92.4cm
   
5. ポール・セザンヌ《カード遊びをする人々》1892-96年頃　油彩、カンヴァス　60×73cm
6. アメデオ・モディリアーニ《裸婦》1916年頃　油彩、カンヴァス　92.4×59.8cm
7. ポール・ゴーガン《ネヴァーモア》1897年　油彩、カンヴァス　60.5×116cm
※すべて、コートールド美術館 © Courtauld Gallery (The Samuel Courtauld Trust)