翡翠原石が生み出す静謐な世界に浸る

翡翠原石館(北品川)

  • 2014/04/01
  • カルチャー
  • 博物館
翡翠原石館

縄文時代から勾玉として珍重され、元祖パワーアイテムとも呼べそうな翡翠。その原石を常時100個以上展示している個性的な博物館が北品川にある翡翠原石館だ。
 館長の鶴見信行氏は自動車部品製造会社を経営する傍ら、約30年かけて翡翠を収集。世界有数の産地である新潟県糸魚川の翡翠を後世に残すべく、2004年に博物館をオープンさせた。

2階建ての展示フロアは巨大原石、翡翠風呂、モザイク画、ショップ、加工品といくつかのゾーンに分かれている。
 入るとまず目に飛び込むモザイク画は高さが5mもあり、2Fまで届く大作。『古事記』に登場する古代の新潟地方を治めていた女王「奴奈川姫」と、翡翠と同じ字を用いるカワセミが描かれている。翡翠や大理石などを加工した10万個以上のモザイクを使って6年かけて作り上げた。慈愛に満ちたまなざしが印象的だ。

右側には4tもの巨大な原石を配した中庭。窓越しに庭の木々が見え、外から通された水路には魚だけでなく、糸魚川の翡翠峡から来たカジカガエルやモリアオガエルも住む。透き通った鳴き声と白い原石が生み出す空間は、心を和ませる癒しの世界だ。
 奥は原石の展示ゾーン。壁には翡翠の成り立ちや化学式、産出地域などを説明したパネルが並ぶ。翡翠は高圧ながら低温の地質でないと生まれない鉱物で、ダイヤよりも産出しないと知って驚く。
 最奥の部屋はなんと壁も床も浴槽もすべて翡翠製の浴室。10tの糸魚川産原石をくり貫いて造ったという。なぜお風呂?との問いに、「翡翠の器に入れた冷酒が非常にまろやかになることから、その水に包まれたらどうなるか知りたくなったんです。実際に入ったら宇宙空間にいるような浮遊感がありました」と鶴見館長。今でも年に1回程度は実際に湯をはるという。

2階はサロンになっており、来館者にスリランカ紅茶をサービス中。壁際にミャンマーや糸魚川の原石、世界各地の仏像などが陳列されているので、じっくり鑑賞も良し、館長に勾玉作りのコツを聞くもよし。中には、自前のコレクションを持ち込み、鑑定を依頼する人もいるとか。贋作だけでなく軟玉ネフライトと間違える人も多いからかもしれない。

翡翠の原石は全部違っていて、形、色、風合いのどこにポイントを置くかは人それぞれ。評価基準が明確なダイヤモンドやルビーのような単結晶鉱物と違い、そこが翡翠ならではの魅力といえるだろう。まさに“皆違って皆いい”。原石の静かな、でも見紛うことなきパワーに満ちた静謐な空間。あなたも癒されに来ませんか?

翡翠原石館 玄関前の桜大きな桜の木に挟まれるようにして立つ翡翠原石館。周辺は緑が多い住宅街で、御殿山ヒルズや原美術館からも近い。週末のお散歩がてら立ち寄るのもおすすめ。
新潟県糸魚川から運ばれた巨大原石玉砂利の中に割れ目がインパクトのある巨大な原石がたたずむ中庭。重さ4tのこの石は新潟県糸魚川の翡翠峡からはるばる運ばれたものだ。水路が流れ、ガラス張りの窓を通して庭の緑が広がる様は不思議な落ち着きと癒しを感じる。
カジカガエル中庭の水路には魚のほか、清流でしか育たないカジカガエルも飼育。その大きさに比べ存在感のある鳴き声は涼やかで、聞くとストレスが抜けるよう。
モザイク壁画「奴奈川姫」巨大な奴奈川姫の壁画は展示の目玉。「朝霧の中にかすかに見える新緑の様に」をテーマに、宗教的や性的にならぬよう注意したという。『古事記』に登場する高志の国(現在の新潟付近)を治めていたこの姫は賢いことで名高く、はるばる出雲の国から八千矛神(大国主)が求婚しにやってきたとの伝承がある。
壁画のモザイク見本壁画の下に置いてある使用したモザイクの見本。翡翠だけでなく大理石やピンクオパールなども用い、一つが角砂糖くらいの大きさ。壁画全体で10万個以上使用しているという。翡翠は滑らかな切り口にならないため、見る位置や角度によって微妙に表情が変わる。
翡翠風呂翡翠原石をくり抜いて制作した風呂は旅館に出てきそうな本格的な造り。浴槽、床、壁と360°翡翠で囲まれると壮観。石が冷たいので実際にお湯を入れる際はかけ流し状態なのだとか。
勾玉(館長作)三種の神器の一つにもなっている勾玉はお守りとして人気が高い。館長は勾玉制作も行っており、作品は一部ショップにて販売もしている。粗削りしたものをサンドペーパーで一週間にわたり整えていく。
ショップ1Fのショップには、世界各地から集めた原石や宝飾品、勾玉、茶器、酒器が並ぶ。全面黒で統一された室内は煌びやかな別世界。宝石好きな人は魅入ってしまい、なかなか出てこないという。
館内イタリア人デザイナーが手掛けた建物はモダンな造り。2Fのサロンには翡翠や鉱物の書籍、DVDなどもある。スリランカ紅茶を飲みながら、腰を落ち着けて静謐さを楽しみたい。

基本情報

名称 翡翠原石館
所在地 品川区北品川4-5-12
電話番号 03-6408-0313
料金(税込) 大人700円(スリランカ紅茶付き)、小人350円
営業時間 10:00〜17:00
休館日 月曜(祝日の場合は翌火曜)、祝日の翌日、お盆、年末年始
アクセス 京浜急行線「北品川駅」徒歩5分
JR「品川駅」徒歩15分
公式サイト https://www.hi-su-i.com/index.html

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