高い敷居を低く! 未来を考える先端科学の殿堂

日本科学未来館(お台場)

  • 2016/08/23
  • カルチャー
  • 博物館
日本科学未来館

ニュートリノ、ロケット、iPS細胞、アンドロイドなど、最先端の科学が身近に感じられる「日本科学未来館」は、学生から家族連れ、訪日観光客に至るまで年間約100万人が訪れる先端科学の殿堂だ。

館内は1Fシンボルゾーン・企画展示ゾーン、3・5F常設展示ゾーン、6Fドームシアター、7Fレストランと未来館ホールなどから成る。どこから見始めても違和感はない。
 5Fは「世界をさぐる」のテーマ展示。まず目に入るのは、実物のH-IIAロケットのメインエンジン。中ほどには、科学コミュニケーターやボランティアによるサイエンス・ミニトークや超電導の実演などが行われるコ・スタジオ、幹細胞研究をテーマにした「細胞たち研究開発中」のシアターと展示が広がる。実際の幹細胞が見られる顕微鏡や、受精卵から56日目の胎児までを順に追った実寸大の模型などがあり、リアルさは衝撃的。等身大の絵本のような「ぼくとみんなとそしてきみ」は、可愛らしく幼児に人気。感情、記憶、判断で働きが変わる脳内回路の構造、触感などの体験コーナーなどがあり、分かりやすい。

5Fから3Fへは、吹き抜けの回廊「オーバルブリッジ」で。シンボル展示「Geo-Cosmos(ジオ・コスモス)」が浮かぶように展示され、独特な雰囲気が漂う。有機ELパネルを使った世界初の地球ディスプレイは、1Fのカウチビークルで寝ながら見上げることもでき、癒しスポットにもなっているのだとか。ブリッジの両出入り口付近にあるインタラクティブボードGeo-Scope(ジオ・スコープ)では、世界の地震や森林火災など地球観測データを呼び出せる。
 3Fは「未来をつくる」がテーマ。石黒浩氏が手掛けたオトナロイドは、遠隔操作により人と会話でき、操作する側にも話す側にもチャレンジできる(自由体験は平日15:00以降)。人間そっくりの外見、仕草に驚き。奥のメディアラボは、情報技術と創造性が結びついた研究を紹介する期間限定の展示。取材時は、3体のロボットたちの会話に1人で参加して、介護や仕事などの議題を語り合う「ロボット談話室」が公開されていた。話をしている時の表情や会話の内容はデータとして蓄積され、今後の研究に活かされる。先端技術に自らが役立てる意義も感じられて斬新だ。

館内には科学などの専門家で構成される白ベストの科学コミュニケーターと、青のベストを着たボランティアスタッフが多数巡回し、展示の説明だけでなく、疑問などにも真摯に対応してくれる。モデルコースや音声ガイド、記念写真が撮れる公式スマホアプリ「Miraikanノート」もユニーク。館外では、問い→考え→アクションをノートに書き留めて、興味や疑問を掘り下げ、科学的思考を促すツールにもなる。
 ?が!になるたびに科学の敷居が一段ずつ下がってくる。子どもも大人もまずは楽しむことから科学に取り掛かってみては?

「スーパーカミオカンデ」の1/10模型岐阜県神岡鉱山跡の地下1000mに造られたニュートリノ観測装置「スーパーカミオカンデ」の1/10模型。巨大な電球のような光電子増倍管が隙間なく並んだ壁は、まるでナイター設備のよう。模型内では青い光がランダムに瞬き、水中を走ったニュートリノが発するチェレンコフ光を疑似体験できる。
100億人でサバイバル地球エネルギーと人類の活動が絡み合い、ハザード(危険の種)が生まれて災害が発生する仕組みを模型で表現した「100億人でサバイバル」。 ハザードを表す赤い玉が集まって災害になり、建物や人を倒す仕組みが一目瞭然。模型の周りには、危険の種に気づくこと、原因究明、災害への備え、災害時の対応、経験を生かすことを各項目ごとに、実際に起きた災害で解説。パネル展示だけでなく、パッドも用意されており、ソファーに座って文字通り“腰を据えて”読み込める。
国際宇宙ステーション(ISS)宇宙居住棟模型人気展示、国際宇宙ステーション(ISS)宇宙居住棟の模型。床がわざと斜めになっており、中に入るとやや平衡感覚が狂う。手放すと凶器となる工具を仮置きするためのマジックテープが室内全体に柄のように広がっているのが印象的。宇宙食の一覧のほか、各自の個室、トイレなども再現。机で本を読むのも、いちいち全身を固定しないといけないとか。
ヒューマノイドロボット「ASIMO」の実演ヒューマノイドロボット「ASIMO」の実演は、3Fの専用ゾーンで、毎日4回実施。多数の観覧者が集う人気イベントだ。歩くだけでなく、バランス制御の難しい片足飛び、リズムに合わせて体を揺らしながら手話で歌う、カニ歩きやボール蹴りなど、多様な動きが楽しめる。
Honda「ASIMO」の実演仮想世界で空間情報科学を体験できる「アナグラのうた」。中に入ると「ミー」と呼ばれる自分の情報を具現化した分身(アバター)が足元に出現。5か所ある装置で操作するたびに変化していく。生み出した情報を誰かと共有し活用していく学問の趣旨を表すため、装置の足元から手の映像が表れて手招きしたり、別の人の「ミー」と自分の「ミー」が握手することもある。体験した装置や順番によって自分の情報を歌にして流すこともできる。
未来逆算思考ゲーム形式の「未来逆算思考」。エネルギーで豊かな暮らしができる、温暖化がストップするといった8つの理想の地球から1つを選んで、障害を避けたルートを選び、50年後に送る。未来から現代へ向けて逆に考えていく思考方法が、資源の保存などに必要になってくるという。何度もチャレンジしているうちに、自然と今の地球が抱えている問題点が把握できてしまう所がミソ。
インターネット物理モデル通信の仕組みをボールで分かりやすく表現した「インターネット物理モデル」。パソコンを例にした場合、工場並みに張りめぐらされた橋がLANケーブル。白と黒のボールがコンピュータの最小情報処理単位bit。らせんはネットワークをつなぐルーター。5カ所の台がパソコンを表している。記載されている組み合わせ表に従いボールを並べて送ると、送り先の台にボールが流れついて文字が表される。1日数回ワークショップも開催。
Honda「UNI-CUB(ユニカブ)」「UNI-CUB(ユニカブ)」は、Hondaが開発したパーソナルモビリティ(次世代型移動機器)。ASIMOと同じバランス制御技術を用いている。有料だが、建物の構造などを見る未来館入門ツアー(毎日実施)と、科学コミュニケーターによる常設展ツアー(土曜日実施)の2種類が用意されている。体を傾けるだけで動くので、最初は戸惑うものの、慣れてくると感覚で動かせて楽しい。
地球まん館内には、7Fにレストラン「Miraikan Kitchen」、5Fに「Miraikan Cafe」がある。東京タワーまで見渡せる展望レストランには、真っ青な「地球まん(税込280円)」といった同館らしいメニューも。カフェは、幼児サイズから巨体サイズまでそろった座席が特徴。

基本情報

名称 日本科学未来館
所在地 江東区青海2-3-6
電話番号 03-3570-9151(代表)
料金(税込) 大人 620円、6〜18歳 210円
営業時間 10:00〜17:00(最終入館は閉館30分前まで)
休館日 火曜(祝日の場合は開館)、年末年始、施設点検期間
アクセス ゆりかもめ「船の科学館駅」徒歩5分
りんかい線「東京テレポート駅」徒歩15分
公式サイト https://www.miraikan.jst.go.jp/

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