楽しみながら火の用心! ヘリにも乗れる防火・防災の学舎

消防博物館(四谷三丁目)

  • 2016/01/28
  • カルチャー
  • 博物館
消防博物館

四谷消防署に併設して、1992年に開館した「東京消防庁防災資料センター 消防博物館」。子連れ家族や年配者を中心に多い時で約1,000人が訪れる人気スポット。

10F建てのビルの、B1、1、3〜7、10Fが博物館。見学は5Fから順に下がるのがオススメだ。
 5Fは江戸時代。武家の火消、町火消に分かれて装束、道具、古文書、錦絵などが展示されている。戦乱のない江戸時代は、火事場での活躍が出世の近道とされたこと、装束は比較的燃えにくいラシャ布で作られたことなど豆知識も随所に。手押しポンプの龍吐水(りゅうどすい)、玩具を巨大化させたような水鉄砲と、人力の消火道具に当時の苦労が偲ばれる。圧巻は、いろは48組、本所深川16組すべてのまとい1/2サイズ模型。町火消は定職ではなく、普段は鳶職など自分の仕事を持ち、火事の時だけ番所に集まっていたのだとか。

4Fは明治から昭和にかけての近代化にフォーカス。明治になると、延焼を防ぐために周辺を壊すだけの破壊消火から、欧米に倣い水をかけて消す方法へ移り、輸入蒸気ポンプが登場。手引きや馬引きながらも機器が現れると一気に発展した感じがしてしまう。はしご車もはしご部分が木製だったのが、金属製に代わり、さらに長くなっていくのが、明治、大正、昭和初期の消火風景の模型によって説明されていて分かりやすい。ラッパだった通報手段も、街頭の火災報知発信機からの受信で火災を把握できるようになるなど、少しずつ現代に近づいていく様は、子どもが大人になるようなイメージだ。また、戦時中に使われた火元に投げつけて消火する手榴弾消火器などもじっくり見入ってしまう。

現代の消防設備が集まる3F。制服が着られる記念撮影スポットは幼児に大人気。ポンプ隊、特別消火中隊、特別救助隊、救急隊の4種類がそろう。隣には、事故車のドアの隙間を開く際などに使う油圧式スプレッダー、建材などを切断するエンジンカッターなど機器が展示され、レスキューの生々しさもさり気なく。消防ヘリ「ちどり」の機体部分も設置してあり、コックピット体験はここでも可能だ。
 地下は大正から平成までの消防自動車がズラリ。関東大震災の経験から輸入されたアーレンス‐フォックス消防ポンプ自動車やスタッツ消防ポンプ自動車は、まさにクラシックカーといった趣。木製のはしご車なども見ごたえがある。

消防の出場の仕組みや最新器具などの知識をここで学び、具体的な防災体験を行う各地の防災館で実践力を養うのもアリ。首都直下地震も予測されるこの頃、楽しみながら身を守る術を学んでみては?

江戸消火ジオラマ1770年代の江戸の街並みを再現したジオラマ。半鐘がなって町民たちが逃げる様子や、町火消たちの消火活動が見られる。当時は、火を食い止める家の上にまといを立て、その周辺の家を町火消が壊すことで延焼を防ぐ“破壊消火”が主流だった。
消防ヘリ3号機「初代かもめ」1972年(昭和47)年に導入された消防ヘリ3号機「初代かもめ」。5Fの屋上に常設展示されており、中にも自由に入れるため、一番人気を誇る。雨天、強風時は閉鎖されるので気を付けたい。
消防ヘリ「初代かもめ」の内部消防ヘリ「初代かもめ」の内部。天井にも細かな計器類があり、操縦は難しそうだ。足元までガラスの正面からは、ビルの連なる様が見られ、飛行しているような気分になれる。
馬引き蒸気ポンプ明治初期の消火活動で活躍した馬引き蒸気ポンプ。1870(明治3)年にイギリスから購入したのが最初で、その後国産品も加わり全15台が配備された。写真のポンプ車は石炭で火を起こしてから、放水に必要な蒸気圧力が得られるまで約20分もかかったという。
模型と映像のアニメーション幼児だけでなく大人にも人気がある現代の消防システムを解説したアニメーション。正面の映像と連動して模型が動き、出火、119番への通報、消防隊の出場、消火、取り残された人の救助活動などが順を追って分かるほか、消防隊の本部との連携なども把握できる。
最新消防装備の展示、ノズル一覧現代の消防設備の解説もしっかり。ホースの先に付けるノズルは10種類以上。室内の冷却などに使う噴霧型、接地して無人放水できるもの、水圧が自動制御されるものなどを、火災の状況や規模によって使い分ける。
スタッツ&マキシムポンプ車手前が1929(昭和4)年にアメリカから輸入されたマキシム消防ポンプ自動車、奥は1924(大正13)年に輸入されたスタッツ消防ポンプ自動車。どちらも1953(昭和28)年までと、20年以上も第一線で活躍していた。
アーレンス‐フォックスアメリカの蒸気ポンプ製造者と市消防局の副所長の名前を組み合わせたアーレンス‐フォックス消防ポンプ自動車。エンジンの前にポンプがくる珍しい車で、舗装の悪い当時の道路事情を踏まえてノーパンクタイヤやフロントガラスがない仕様に。
展望休憩室全景10Fにある多目的休憩室。都心を一望できるだけでなく、天気の良い日は富士山も見えるとか。自販機もあり、お弁当などを広げて寛ぐ家族連れの姿も多い。

基本情報

名称 消防博物館
所在地 新宿区四谷3-10
電話番号 03-3353-9119
料金(税込) 入館無料
営業時間 9:30〜17:00(最終入館は閉館30分前まで)
休館日 月曜(祝日、1/17、9/1、10/1は開館)、12/28〜1/4
アクセス 丸ノ内線「四谷三丁目駅」直結
公式サイト https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/ts/museum.html

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