実物で美術・考古史がたどれる、日本の博物館の総本山

東京国立博物館(上野)

  • 2017/03/21
  • カルチャー
  • 博物館
東京国立博物館

上野公園で一際存在感のある瓦屋根をのせた巨大な建物。1872(明治5)年に開館した東京国立博物館だ。日本と東洋の美術、考古などを中心に所蔵数は、なんと約11万6000件。国宝88件、重要文化財634件を抱え、常時約3000件を展示する、まさに日本を代表する博物館。
 広大な敷地には、本館、東洋館、平成館、表慶館、法隆寺宝物館、資料館と6棟が建ち、加えて庭園や、大名屋敷の正門だった黒門などの文化財も点在。敷地外には洋画家 黒田清輝の作品を紹介する黒田記念館も建つ。

どこから見学するか迷うが、オススメは本館2Fから。「日本美術の流れ」と題され、縄文時代の土器から江戸時代の浮世絵まで、実物でたどれるのだ。作品保護のため1カ月〜半年で展示替えするものの、その分季節感を楽しめ、常に目新しさがある。展示室は広く、高さ数mの仏像や横に長い絵巻も圧迫感がない。取材時は、藤原定実による古今和歌集切、一休宗純の書、円山応挙の山水画などが展示されており、見知った名前があちこちに登場。全収蔵品の中で、長谷川等伯《松林図屏風》、尾形光琳《風神雷神図屏風》、菱川師宣《見返り美人図》などが人気という。
 1Fは、日本美術のジャンル別展示。彫刻では木彫仏の表情や躍動感ある動きを楽しみ、漆工では華やかな意匠に見入り、刀剣では刃文をじっくりと眺める。各ジャンルとも工程や種類、名称などの解説パネルがあり、基本知識もバッチリ。異なる時代で作りの違いを見比べるのも興味深い。アイヌや琉球の文物、写真などの歴史資料の部屋もある。

アジアの美術を展示する東洋館。5Fまでの吹き抜けに立つ中国の石仏を見上げると、上層階のスポットライトが星空のようで幻想的。ガンダーラの菩薩像、クメールやタイの仏像と、本館にある日本の仏像との表情の違いが顕著で、同じ仏像でも地域や時代による変化が楽しめる。ユニークなのは、エジプトの考古品があること。なんと、ミイラまで登場。食器や衣服など、当時の暮らしぶりが分かる展示品も興味深い。
 考古展示室のある平成館へは、本館から連絡通路を通って向かう。旧石器時代から江戸時代までと、こちらも幅広い。石器、土器、鏡など、どの種類もギュッと密集した展示なのも特徴だ。江戸時代の瓦の展示など、古代以降も意外と見所が多く要チェックだ。
 表慶館の奥に建つ法隆寺宝物館は、国宝の竜首水瓶はもちろん、金銅仏、荘厳具などが並んで厳かな雰囲気。ル・コルビュジエがデザインしたソファなど、ファブリックにもこだわりが感じられ、印象的に鑑賞できる。
 全体的に工芸、陶磁器、掛軸、着物など、多様なジャンルの作品が1部屋に混在し、包括的に見られる。圧倒的なスケールを誇る日本最古の博物館は、“生きた教科書”として、今日もまた新たな歴史を刻み続けている。

※展示作品は取材時のもので、展示替えがあります

本館展示風景本館の展示室風景。古代の土器から明治の近代工芸まで、国宝や重要文化財が頻出で、実物の美術年表といった趣。広い部屋は端から端まで100mくらいあり、作品と作品の間隔もあるため、1つの作品とじっくり向き合える。
国宝室国宝を1件だけ展示する国宝室。取材時は、日本南画を大成させた池大雅《楼閣山水図屏風》が展示。約1カ月単位の展示スケジュールが室内に掲示されている。
根付コレクション本館2Fには現代根付を紹介する高円宮コレクション室がある。帝室博物館時代の展示ケースに約50点が展示されており、寿司や仏像の頭、ユニークな表情をした動物など見ていて楽しい。細かな技巧にも驚く。
東洋館東アジアからエジプトまで幅広いアジア地域の文物を集めた東洋館。人気はガンダーラ仏像で、鼻が高く、彫りの深い顔立ちはギリシャ的で“イケメン仏像”と呼ばれることもあるとか。
考古学室平成館1Fの考古展示室。20mほどに数十体の埴輪が露出展示されているエリアは、迫力があって見応えバツグン。青森県亀ヶ岡出土の遮光器土偶(〜2017年12月15日まで展示)など、教科書クラスの作品とじっくり向き合うのもオススメ。
ハンズオン考古展示室には、レプリカによるハンズオンがある。重さや質感が分かる土偶、実際に鳴らせる銅鐸、組み立て方が分かる埴輪の立体パズル、小判や銭など、一歩踏み込んだ実体験が可能。
法隆寺仏像群1878(明治11)年、法隆寺から皇室に献納された宝物を展示する法隆寺宝物館。東洋館を設計した谷口吉郎の息子、谷口吉生が設計した現代的なデザインに、7世紀頃の宝物が収まる静謐な空間が魅力的。高さ30cm程度の仏像が、ズラリと並ぶ第2室は背筋がスッとのびる荘厳さ。
表慶館1900(明治33)年、当時皇太子だった大正天皇のご成婚を記念して建てられた表慶館は、東宮御所(現在の迎賓館)などを手掛けた宮廷建築家の片山東熊が設計。現在は休館中で、特別展やイベント開催時のみ開館する。
庭園本館北側に広がる庭園は、春秋のみ開放。園内には、珍しい桜の品種などもあり、隠れたお花見スポットに。5代将軍徳川綱吉が法隆寺に献納した五重塔や5棟の茶室も点在。本館1Fの15室と16室の間にあるテラスからも、池周辺の景色を楽しめる。

基本情報

名称 東京国立博物館
所在地 台東区上野公園13-9
電話番号 03-5777-8600(ハローダイヤル)
料金(税込) 大人620円、大学生410円
※黒田記念館・資料館は無料、特別展は別途
営業時間 9:30〜17:00(最終入館は閉館の30分前まで)
※特定日、時間延長あり(黒田記念館・資料館を除く)
休館日 月曜(休日の場合は翌平日)、年末年始
※GW、お盆は原則無休
※資料館は土日祝、毎月末日、年末年始
アクセス JR「上野駅」徒歩10分、
銀座線・日比谷線「上野駅」、京成線「京成上野駅」徒歩15分
公式サイト http://www.tnm.jp/

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