柏屋せんべい(神田)
秋葉原駅から昭和通りを越えて徒歩数分、神田川の手前の路地にある「柏屋せんべい」。1919(大正8)年創業の老舗で、現在は、2代目の中村育稔(いくとし)氏が店を切り盛りする。今では希少な昔ながらの民家にガラスの引戸が味わい深く、外観も一見の価値あり。
客層は年配者中心だが、ワーカーや外国人観光客がふらりと立ち寄り、1〜2種類を買っていくことも多い。目当ての品を求めて遠方から通う常連もいるとか。ガラス越しに通りからも店内がよく見え、入りやすい雰囲気。
ガラスのショーケースには、オーソドックスな丸い煎餅、棒状のおかき、コロコロしたあられなど、約35種類が並ぶ。ショーケースの上には昔ながらの計りも置かれている。どの商品も一定量で袋詰めされており、ほとんどの商品が300円、品川巻など一部が500円と明朗会計。贈答用の箱入りは、1,700〜5,000円まで用意。詰め合わせる煎餅やおかきの種類は日によって変わるが、好みの商品に箱代(200円〜)を追加すれば、オリジナルの詰め合わせも用意できる。個包装のものを中心に選んで詰めれば、大きなオフィスへの手土産にも良さそうだ。ビジネス利用では、2,000〜3,000円の詰め合わせがよく出るという。
初代が長野県から上京し、7年修業した後に開業したのが1919(大正8)年。以来、戦時中に一時中断するものの、中村氏に代が変わっても煎餅を作り続けてきた。
煎餅はうるち米、あられとおかきは餅米と原料が違い、作り方も当然異なる。うるち米を粉にして、水で練って、蒸し、丸く型抜きして、干した後、焼くのが煎餅。餅米をついて餅にしてから、型に入れて冷蔵庫で固め、サイズに合わせてカットし、干してから焼く、または揚げるのが、あられとおかき。「昔は今みたいな機器がそろっていないから、カンナや包丁を使ってカットしたんだけど、当然冷えた餅は固いから手が豆だらけになったよ。干すのも天日干しだから、おかきの厚さと大きさで干す日数も変えたりしてね…」と、中村氏は当時の様子を振り返る。焼いた煎餅やおかきにつけるタレが肝で、店ごとに試行錯誤をしてオリジナルの味を作っていくのだという。同店では、初代が考案した味を受け継ぎ、継ぎ足して使っている。
人気は、げんこつ、揚げおかき、のり巻、品川巻、柿の種、梅ザラメなど。焼いたソフト煎餅にサラダ油を塗り、エビやワサビなどのパウダーをまぶして味のバリエーションをつけたサラダ煎餅の中では、メンタイ七味、エビ、カレー、チーズなどがよく出る。特に、若い人や外国人に好評だとか。
袋は圧着しておらず、リボンで結ばれていて、見た目が可愛らしい。その理由を中村氏は、「袋の開け閉めが楽にできて、いくつか食べて残りをしまえるように、リボン掛けにしているんだ。一つひとつリボン掛けていくのは手間だけど、この方がお客さんは便利だからね」と話す。
実際にあれこれ食べてみる。げんこつは名前から想像できる厚い堅焼き。しかし、力を入れて割った後は、ふわっとしたもち米の旨味がしっかり感じられる。ほんのり甘めの醤油タレともマッチしていて美味しい。揚げおかきは油を使ったコク、ザクザクの食感、口どけの軽さがいい。胡麻丸は、ゴマの風味が口中に広がって香ばしい。梅ザラメは、ザラメ煎餅に乾燥梅を砕いたものがかかっているので、濃厚な甘味の中に酸味がきらりと光る。柿の種は、これを目当てに買いに来る人も納得の後を引く辛さ。最初は醤油タレの味しかしないのに、嚥下後にじわじわと辛さが登ってくる。厚みがある分、固くて歯ごたえが楽しめるのもいい。品川巻はしっかりした海苔とのコンビネーションが見事。これよりも大きいおかきに海苔を巻いた「のり巻」という種類では、品川巻で使っている海苔とは別のものを使い、おかきの味わいに合わせて使い分けている。
関東の煎餅は得てして醤油味が濃いものが多いが、同店のものはどれもほどほどで食べやすい。軽い食感なので、気が付くといくつも食べ進めてしまっている。しっかり乾燥させてから焼いているためか、夏場でも袋のリボンをしっかり締めれば、湿気ることは少ないのも嬉しい。日常のお茶菓子にも、詰め合わせて贈り物にもどちらにも活躍しそうな万能選手。秋葉原へ出かける際にはぜひ立ち寄ってみたい。
名称 | 柏屋せんべい |
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所在地 | 千代田区神田平河町1 |
電話番号 | 03-3866-7482 |
営業時間 | 8:30〜19:30 |
定休日 | 土日祝、年末年始 |
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