代表的モチーフ「  」を通して感じる、自然と人間の関係性 平子雄一個展「FOOTPRINTS」

KOTARO NUKAGA(六本木6-6-9 ピラミデ2F)

  • 2022/6/7(火)
  • イベント
  • フォトニュース
代表的モチーフ「  」を通して感じる、自然と人間の関係性 平子雄一個展「FOOTPRINTS」

 植物や自然と人間の共存について、また、その関係性の中に浮上する曖昧さや疑問をテーマに制作を行う平子雄一の個展が開催。

 ロンドン留学時に感じた、街路樹、公園に植えられた植物など、人によってコントロールされた植物を「自然」と定義することへの違和感。それをきっかけに、現代社会における自然と人間との境界線を、作品制作を通して探求している。ペインティングを中心に、ドローイングや彫刻、インスタレーション、サウンドパフォーマンスなど、表現手法は多岐にわたり、国外でも精力的に作品を発表しているが、今回は初めて自身の代表的なモチーフが集団を作るインスタレーション群のみを提示する。

 会場には色鮮やかなモチーフとその周りにラジカセや自動車、植木鉢、品種改良された果物、書物など人工物が配置され、それぞれ群をなして展示されている。人間の頭の部分が樹木、その上に枝のような角がある特徴的なモチーフは「樹人間」と表現されることもあれば、練馬区立美術館副館長・毛利義嗣氏いわく、特定の名称を与えない「  」のように表現されることもある。自然と人間の境界線をあいまいにしたような存在であるが、少し大きめの靴が、人間らしさや主張を表している。
 平面の作品にも登場するこのモチーフを、今回、立体作品のみで表現したことについて平子氏は「平面と世界観は同じだが、よりリアルに生々しさを表現し、その前から逃げることができない、感じざるを得ない状況を作りたかった」という。しかしながら、自然保護を訴えるものでもない。人の進化の中で積み重ねられた知識や文明を表す人工物も、発展にも破壊にもつながる身勝手な物ながら、自然と同じ存在感を持つ同等のものとして、否定も肯定もするものではない。淡々と今の現象を具現化している。

 昨今のメディアなどを通して、「自然は綺麗なもの、癒やされるもの、良いものである」と感じることを要求する風潮にも作家は疑問をなげかける。時に森の大木が怖く見えることもあるように、モチーフに向き合ったとき、「怖い」と感じてもいい。それぞれの感じ方も平子氏は否定しない。「先入観なくありのままに感じた気持ちから、自然と人間の関係性について考えるきっかけになれば」と語る。
 かつては畏敬の念をもって向き合っていた自然と人間の関係は大きく変わり、「手つかずの自然」などと呼んで、絶景と称える風景にさえ、人類の及ぼす影響は確実に迫っている現代。平子氏が産み出したモチーフたちは、ありのままに向き合うきっかけとして静かに私たちを迎えている。

【会期】5月21日(土)〜6月25日(土)
【休廊日】日月祝
【時間】11:00〜18:00

記事を探す

記載内容は取材もしくは更新時の情報によるものです。商品の価格や取扱い・営業時間の変更等がございます。