合縁奇縁〜大倉集古館の多彩な工芸品〜

大倉集古館(虎ノ門2-10-3)

  • 2022/8/18(木)
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合縁奇縁〜大倉集古館の多彩な工芸品〜

 現存する日本最古の私立美術館である大倉集古館が、美術館公開120周年、財団法人設立105周年の節目を記念し、明治から昭和にかけての美術品収集の軌跡をたどる企画展「合縁奇縁(あいえんきえん)〜大倉集古館の多彩な工芸品〜」を開催している。

 本展は明治から大正時代にかけて活躍した実業家・大倉喜八郎(1837〜1928)と跡を継いだ嫡子喜七郎(1882〜1963)が蒐集した大倉財閥ゆかりの刀剣と中国の陶俑を中心とし、中国の染織品、タイの美術品など、「他人の集め得ない物を大たばに、大づかみに集めた」大倉コレクションのうち、関東大震災の爪痕を残す作品も含め、長く公開されなかった貴重な工芸品を、東京国立博物館の優品とともに展観するものである。

 展示は1階の同館の歴史から始まる。「大倉邸美術館内之図」明治35年(1902年)や当時の展示風景の写真から、明治の粋を集めた開館当初の豪華絢爛なようすが伺える。しかしながら、大正12年(1923年)の関東大震災で表門と倉庫を除き、ほとんどが灰燼に帰してしまうのである。本展ではその後、再建された姿の写真や、世界一と謳われた漆工品コレクション約200点のうち、被災を免れた8点の作品のひとつ、重要美術品「唐草文螺細手箱」などが鑑賞できる。
 1階ではそのほか、有栖川宮家との親交により寄贈された刀剣や、大倉財閥が製作した実用だけでなく、鑑賞性の高い軍刀なども展示されている。
 2階の展示室では、中国の古代墳墓に副葬品として入れられた陶器製の人形、陶俑が出迎える。
 「本展で陶俑は、唐の時代(7〜8世紀頃)を中心に展観しています。一つひとつ丁寧に見ていくと、微妙に体をひねり立ち姿に動きを見せたり、手を前で組んで(拱手)敬意を表し首を垂れる人々が表現されています。また、渋い表情を見せているのは宦官(去勢を施された官吏)で、ちょっとひねくれた表情をしています。」と解説するのは同館副主任学芸員の四宮美帆子氏。
 2階ではそのほか、喜八郎が中国に対して多くの投資や借款を行い、宣統帝(愛新覚羅溥儀)などと関わっていた縁により収集した清朝の美しい藍の装束「蟒袍(マンパオ)」や「蒙古の鎧」、喜七郎の英国留学の縁でタイ王室から贈られた精緻な細工が施された工芸品も展示されている。

 「喜八郎や喜七郎が紡いだ様々な人とのつながりや縁によって収集され、そして被災を免れた貴重な工芸品が一堂に会するという意味が本展のタイトルにも込められています。ぜひ、多くの方にご覧頂きたいと思います。」と話す四宮氏は、会期中に実施されるギャラリートークも担当する。

【会期】2022年8月16日(火)〜2022年10月23日(日)
【休館日】月曜日(祝日の場合は翌火曜日)
【時間】10:00〜17:00(入場16:30まで)

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