日本を代表する写真家・植田正治のオリジナルプリントを初公開

フジフィルム スクエア 写真歴史博物館(赤坂9-7-3 東京ミッドタウン1F)

  • 2022/8/30(火)
  • イベント
  • フォトニュース
日本を代表する写真家・植田正治のオリジナルプリントを初公開

 植田正治の写真集『白い風』(1981年日本カメラ刊行)から、精選された40点を展示する植田正治写真展「べス単写真帖 白い風」が開催中。
 展示作品は、当時写真集を印刷するための入稿原稿として使用されたもので、2021年に解散した(株)日本カメラ社内に保管されていた貴重なオリジナルプリント。写真展として公開されるのは今回が初めてとなる。

 生涯、生まれ故郷の山陰地方にとどまり、アマチュア精神に貫かれた遊び心と旺盛な実験精神で、写真の新しい地平を築いた植田正治(1913-2000)。独特の感性で創り出された作品は、時代や国境を超えて高い評価を受けるとともに、今なお多くの人々に愛され続けている。鳥取砂丘での独創的な群像演出作品で知られるが、晩年は福山雅治のCDジャケット『Hello』を手がけたことから親交を深め、写真の指導したことでも知られている。
 植田正治が写真にのめり込んでいった大正時代は、日本の芸術写真が隆盛を極めた時代。当時、アマチュア写真家たちの間で流行したのが、「ベスト・ポケット・コダック」という単玉レンズ付きカメラ、通称「ベス単」の、レンズフィルターのフードを外して撮影することで得られる独特のソフトフォーカス効果を使った写真である。これは数多くの芸術写真の傑作を生みだすとともに、青年期の植田氏もこの手法を黒白撮影に取り入れた。
 〈白い風〉は、それから半世紀後、植田氏がその「べス単」の撮影手法を改めてカラー写真で蘇らせた、日本の風景シリーズである。

 会場の作品は、まさに白い風がふわっと吹いているような、優しくて懐かしいようなそして、どことなく儚い表情をしている。幼い頃の記憶を呼び起こしてくれるようなノスタルジックな心象風景が広がる。
 同館コンシェルジュの小川剛さん(写真右)は、「現在ではデジタルカメラでもソフトフォーカス画像が比較的容易に撮影できるようになりましたが、ベス単が考案された当初は、光が散乱してハレーションを起こしやすかったため、ピント調整などが難しく、高度な技術が必要でした。たゆまない実験精神と技術に長けた植田さんの作品には、ベス単独特の雰囲気を残しつつも、しっかりとした芯があり、子供たちの目線などがよく表現されています」と解説する。同館では富士フイルムで写真製品の研究・開発・技術サポートに長年携わったOB 10名がコンシェルジュとして在籍し、展示作品がどのような技術で撮影されたのかを分かりやすく解説してくれる。
 「今回の作品はすべて植田さんがディレクションした貴重なオリジナルプリントです。会期中無休、無料で開催していますので、ぜひ気軽に足を運んで実物をご覧ください。特に愛らしい子供たちやアヒルの表情は必見です。」と話すのは同館広報担当、シニアエキスパートの砂屋敷真衣さん(写真左)。開催は9月28日(水)10:00〜19:00(最終日は16:00)まで。

記事を探す

記載内容は取材もしくは更新時の情報によるものです。商品の価格や取扱い・営業時間の変更等がございます。