上田義彦「Māter」

小山登美夫ギャラリー(六本木6-5-24 complex665 2F)

  • 2022/9/6(火)
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上田義彦「Māter」

 小山登美夫ギャラリーでは2017-2018年の「林檎の木」以来、2度目の個展となる、上田義彦「Māter」が開催されている。

 アート写真、広告写真というカテゴリーやジャンルにとらわれず、40年もの間写真家として第一線で活躍をし続けている上田義彦。日本写真協会作家賞、東京ADC賞、ニューヨークADC賞など様々な受賞歴があり、国内外で高い評価を受けている。
 ポートレート、森、家族、河、建物、縄文時代の人骨、「紙」の肖像、林檎の木、、、「この世の成り立ちを見つけたい」「私たちは無常を生きている。そのうつろいを肯定したい」と語る上田は、長い年月丁寧に構想を紡ぎ、様々なモチーフを見出し、撮影に臨んでいる。

 作家としての代表作には、1990年に撮影したアメリカインディアンの聖なる森「Quinault」に始まり、2011年屋久島の森を撮った「Materia」、そして2017年の「林檎の木」に続く、命の大元を探る一連のシリーズなどがあり、本展はその延長線上にある。
 タイトル「Māter」(マーター)はラテン語で「母・源」という意味。出展作は、満月のみの光で撮影された屋久島の滝、渓谷と、女性の身体が1対の作品として展示されている。線をたどれるか、たどれないかほどの危ういほど朧げに写し出された水流と女性の体の肌のなめらかさからは、外形だけでなく、艶かしさや、気配、自然の呼吸まで感じるような不思議な共通するものがある。水も滝も人の体も地球において、生命として全て繋がっており、一つの大きな織り物のように編み込まれた存在である。自然と人をすべて対等に捉え、根源的な生命としての存在を作品に表す、上田氏独自の深い眼差しがその真実を教えてくれる。

 静謐で、淡く優しいけれど、鋭くエネルギー溢れる上田作品。私たちは日々気づかない自分たちのすぐ周りにある「生」としての幸せの本質や、世界は変化し、繋がり、果てしない可能性が広がっていることを改めて感じることができる、その豊潤な世界観を堪能してほしい。

【会期】8月27日(土)〜9月24日(土)
【休廊日】日月祝
【時間】11:00〜19:00
【画像】撮影:上田義彦写真事務所

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