ダニエル・アーシャム個展「31st Century Still Lifes (31世紀の静物)」

ペロタン(六本木6-6-9 ピラミデ1F)

  • 2022/9/22(木)
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ダニエル・アーシャム個展「31st Century Still Lifes (31世紀の静物)」

 ニューヨークを拠点として美術、建築、デザイン、映画といったさまざまな分野において表現を追求しているダニエル・アーシャムの個展「31st Century Still Lifes (31世紀の静物)」が10月15日(土)まで開催されている。

 ダニエル・アーシャムといえば、今年(2022年)の2月に展覧会プロジェクト「A Ripple in Time」の一環として六本木ヒルズ 66プラザに並んだブロンズ製の巨大なポケモン像が記憶に新しい。近年は、地質学的素材を用いて古代のアイコニックなモチーフを再構築することに力を注ぐアーシャムの3つの新しい作品シリーズが本展で発表されている。

 メインギャラリーにはインパスト(厚塗り)技法を駆使し、複雑な場面をみずみずしく描いた新作の静物画5点が並ぶ。「Still Life with Bust of Apollo(アポロンの胸像のある静物)」では、多様な関心を象徴する小説やカタログが積まれ、その上にアポロン像が鎮座。さらに、エアジョーダンのスニーカーやバスケットボールなどが配置され、それぞれの題材のあいだには一種の調和が保たれている。
 その向かいにある窓の近くには、「アマルガメイテッド・シリーズ」から、ブロンズと光沢のあるステンレスを組み合わせた新作の彫刻2点が展示されている。ギリシャ神話のヘルメス、もう一方はイタリアの貴族ジュリアーノ・デ・メディチをモチーフとした、古代からルネサンス期までのアイコニックな彫刻へのオマージュであるが、まったく新しい作品につくりかえられたこの2つの彫刻は、腐敗と再生のあいだを漂っているような印象を与える。
 そして隣のギャラリーでは、「fictional archaeology(フィクションとしての考古学)」シリーズの映画ポスター3点「E.T.」、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」、「2001年宇宙の旅」が鑑賞できる。白いハイドロストーンで表現された作品はあたかも混沌とした状態で掘り起こされた地質鉱物結晶かのように再構築されている。

 アーシャム作品の特徴は、均整のとれた表現の一部に時の流れで浸食され結晶化したようなつくり込みがあり、それが過去と現在と未来を融合させ、ノスタルジアの可鍛性と力を示している点である。
 なかでも、20世紀後半の特定の瞬間を切り取ってテーマにしたものが多くあり、彼の作品を鑑賞した人は、その時代をふり返ると同時に時代の歩みについて考えることができる。
 アーシャムの作品の大部分は「コラボレーション」と「変容する世界」が軸になっている。両者が別々に現れ、やがてひとつに溶け合っていくその世界観をぜひ体感してほしい。

【休廊日】日月祝
【時間】12:00〜18:00
【画像】Exhibition views of Daniel Arsham "31st Century Still Lifes" at Perrotin Tokyo. Photo by Keizo Kioku. Courtesy of the artist and Perrotin.

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