中井波花「浮かぶ」

TARO NASU(六本木6-6-9 ピラミデ4F)

  • 2023/1/19(木)
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中井波花「浮かぶ」

 手びねりで薄く伸ばされた土をリボン状に巻いて成型する独特の手法で知られる中井波花(なかいなみか)。TARO NASU では2月10 日(金)まで、中井波花個展「浮かぶ」が開催されている。

 中井波花は1993年北海道生まれ。2016年北海道教育大学卒業。在学中に訪れたオーストラリアやデンマークでの体験に触発され、2016年に多治見市陶磁器意匠研究所入所し、2019年修了。2022年金沢卯辰山工芸工房を修了し、現在も金沢で制作を続けている。

 一見すると青銅のように見え、力強さと危うさが同居しているような不思議な浮遊感のある作品が並ぶ。陶芸では蔑ろにされてしまう歪みやヒビ割れ、色ムラもそのまま表現された中井の作品は、釉薬の融点が陶土にくらべて低いことを利用し、焼成の過程で溶けていく釉薬をも作品を構成する層の一つとして取り込むことで、まるで地層のように成型時の環境や過程も痕跡としてとどめながら形作られるという。

 そして今回、中井が新しく試みたのは釉薬の化学変化により生み出される色彩を作品に取り込むこと。金属を思わせるその色彩はコバルトや銅に由来し、荒々しくも繊細な表情をたたえて、有機的な造形とあいまって凛とした美しい緊張を空間に作り出している。作品の深部へと誘うような萬代基介建築設計事務所による会場設計がまた、その魅力を惹き立てている。

 歪みやヒビ割れといった、荒々しい表情も、やきものらしく、力強く繊細な美しさと考える中井。従来の陶芸の枠にとらわれない造形を目指す彼女の陶芸作品は既成概念を軽やかに越えていく。新しい造形を模索するその若い感性に、新世代日本の現代美術のパワーを感じてほしい。

【会期】1月13日(金)〜2月10日(金)
【休廊日】日月祝
【時間】11:00〜19:00

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