2019年から東京をはじめ全国9会場を巡回した初の大規模個展「ヒグチユウコ展 CIRCUS」。その際に紹介しきれなかった作品約500点を含む展示総数約1500 点とともに、その画業を余すところなく紹介する「ヒグチユウコ展 CIRCUS FINAL END」が開催されている。

 一般公開に先立ち2月2日に開催されたプレス内覧会には、開催時間前より長蛇の列ができ、入り口の時点で本展の注目度と期待度の高さが充分に伺えた。
 会場に入るとまず、作品の多さとその緻密さに驚く。大小様々な約1500点もの作品がありながら全く飽きるところがないのは、一つとして同じ表情がないくらいの豊かな表現力の賜物にほかならない。どんなに小さないきものたちも、ヒグチ氏の愛情が伝わってくるほど表情豊かだ。下書きや小さい文字で書かれたメモ、修正の跡もそのまま見られる貴重な作品まで、今回は結界が設置されていない作品が多いため、その繊細な筆致を存分に楽しむことができる。

 本展では、ぬいぐるみ作家・今井昌代氏との才能の競演が見られる『カカオカー・レーシング』（2017年、グラフィック社、今井昌代著）立体展示の空間から、掛軸やこけし型の作品が並ぶ和室のような空間、華やかなアンティークのトルソーが並ぶ空間、そして映画の世界観が見事に表現されたポスターの空間、グッチとのクリエイションが展開される空間など、様々な異空間へ違和感なくシフトしていく。隅々まで仕掛けが溢れる会場構成もまた圧巻である。
 ヒグチ氏の貴重な制作過程やドワーフスタジオによるコマドリのアニメーションが見られる映像展示エリアも、ずっと浸っていたい空間だ。

 様々な展覧会オリジナルグッズにカフェの限定メニューもあわせて、大きな話題を呼んでいる本展。全国巡回の締めくくりにふさわしい見ごたえある世界が広がっている。

【会期】2月3日（金）〜4月10日（月）※会期中無休
【時間】10:00〜18:00（金・土曜は20:00まで）※入場は閉館の30分前まで