没後190年 木米

サントリー美術館

  • 2023/2/22(水)
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没後190年 木米

 江戸時代後期の京都を代表する陶工にして画家である文人・木米(もくべい・1767〜1833年)。その稀有な生涯と芸術の全貌に触れる展覧会が開催中。

 木米が生きた時代の日本における「文人」とは、中国の文人の詩書画三絶の世界に憧れをもち、中国の学問や芸術の素養を身に付けた人々のこと。なかでも文人中の文人とも言われ、多くの文人たちが憧れた木米とは一体どんな人物だったのか。本展では、やきもの、煎茶器、交友、絵画の4テーマから、その全貌に迫っていく。

 まず会場で驚くのが、「これが同時代の同一人物が制作したものか!?」と思わせるほど、バラエティ豊かで超絶技巧輝く、やきものと煎茶器の数々だ。それらは、中国、朝鮮、日本の古陶磁に着想を得ているが、その外見を忠実に写し取っただけのものではない。研究熱心な木米が、中国の陶磁専門書『陶説』をはじめとする書籍や古器の鑑賞から得た膨大で豊富な知識を基に、さまざまな古陶磁から形や文様の一部分を抜き出し、それらを「木米ブレンド」と言われる独自の視点で大胆かつ繊細に再構成しているものだ。

 なかでも、代表作である 重要文化財《染付龍濤文提重》(19世紀)東京国立博物館に注目したい。日本の茶人が見どころとした「虫喰い」(土と釉薬の収縮率の違いからできる小さな傷)をわざと付けている。そんな遊び心ある木米の作品の中でも目を惹くのが精巧に作られた蟹のやきもの《飴釉蟹香合(附属 下田休甫宛書状)》(19世紀)個人像だ。甲羅の蓋の部分を傾けると眼が飛び出す仕組みになっている。
 そして、煎茶を沸かす道具《白泥蘭亭曲水四十三賢図一文字炉》(19世紀)布施美術館には、窓から満面の笑みを浮かべて外の鳥を眺める書聖・王羲之が塑像で作られている。

 今回、作品保護のため展示室内すべての撮影が禁止されているが、上記《白泥蘭亭曲水四十三賢図一文字炉》を再現したフォトスポットのみ撮影することができる。王羲之の表情や繊細な装飾も良く見えるので、見逃さないでほしい。

 3月1日(水)より後期展示が始まる。少しゆっくりとお茶でもたしなみたいと思わせるような、優雅な気持ちにさせてくれる世界に浸ってみては。

【会期】2月8日(水)〜3月26日(日)
【休館日】火曜 ※3月21日は18:00まで開館
【時間】10:00〜18:00 ※金・土曜および3月20日(月)は20時まで。※入場は閉館の30分前まで

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